変わる日中関係 AFF・大阪レビュー 後/ASEANシフトに危機感

2019年04月17日 (水曜日)

 今回の「AFF・大阪」はいつにも増して盛況だった。来場者は多く、各ブースでは熱心な商談風景が見られた。流ちょうな日本語を話せるスタッフを各ブースが備えていたことも印象的で、通路を歩く来場者に積極的に声を掛け、商談に持ち込もうとする貪欲な出展者も多かった。

 青州市南陽製衣はAFF・大阪7回目の出展。AFF・東京にも過去に一回だけ出展したが、「大阪のほうが当社のターゲットが多い」と判断して大阪展に集中することを決めた。対日比率80%で、20年にわたって日本向けにインナーを供給してきた。

 メインは婦人インナーだが、近年は子供向けのインナーを増強している。「大口(婦人インナー)はASEANにシフトして行っている」ためと言う。

 同展を訪れていたある日本の商社トップも「ASEANのブースを視察に来た」と話す。同社は各部署がさまざまな中国企業と取引しており、AFF・大阪出展者の中にも複数の取引企業がある。中には同社との取引実績を看板に掲げるブースもあった。「ASEANのブース数が少なかった」と今回の視察は期待通りではなかったが、同氏の思惑は日本の商社に共通するものと言える。それはチャイナ・プラス・ワン。

 中国企業も敏感にこの流れを察知し、対応を進めている。今回展の出展者の提案にこれまで以上の熱量が込められていたのは、その証しだろう。最終日の閉場前にブースを片付ける出展者が目立ち、その理由を聞くと、「今から日本の取引企業に商談に行く」と答えた。他にも、展示会の前後に既存取引先にアポイントを入れているとするブースは幾つもあった。中国企業の貪欲さと、ASEANシフトや米中貿易摩擦に対する危機感がここに見て取れる。

 日中繊維貿易は確実に曲がり角を迎えている。量から質への転換が進むとともに、複数の出展者が「最も重要なのは信頼関係」と強調したように、日中間のパイプは令和の時代を迎えて一層太くなっていきそうだ。

(おわり)