日本のものづくり/PV・MUにおける日本製生地の実力/揺るぎない存在感を放つ

2019年04月19日 (金曜日)

 「日本製生地の真価や実力を知らないのは実は日本のアパレルだけ」と関係者は言う。それほど、日本製テキスタイルの国際的評価は確たるものがある。「シャネル」「エルメス」など世界一流メゾンのパリ・コレクション出展作品に使われる生地は「7割以上が日本製のシーズンもある」ともいわれる。世界最高峰の服地見本市としてトレンド発信に絶大な影響力を持つフランス・パリの「プルミエール・ヴィジョン」(PV)、それに次ぐ地位のイタリア・ミラノの「ミラノ・ウニカ」(MU)など海外展示会での日本企業、日本製生地の揺るぎない存在感がこれを裏付ける。この活躍は国内消費者、アパレルにもっと届けられてもよい。

〈PVでの日本勢の存在感〉

 PVは現在、PVヤーンやPVレザーなど複数展の集合体となったが、母体は服地展のPVファブリック。今では規模こそ中国の「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス」に譲るが、PVのファッショントレンドへの影響力は隔絶している。毎シーズン同展が提示するトレンドが世界中のアパレル、ファッションブランドのコレクション制作の起点となる。その圧倒的権威は出展者に独自のモノ作りを課す厳格な出展審査が支えてきた。

 直近2月のPVファブリック20春夏展には日本から44社が出展(PVパリ全体では55社)。本別冊号の収録企業では宇仁繊維、クロキ、日本綿布がPV継続出展中で、これ以外にも過去に出展経験のある企業は多い。ショーワ、鈴木晒整理、ソトー、第一織物、妙中パイル織物、松文産業、丸井織物が出展歴を持つ。出展自体がステイタスで、出展者は日本国内での生地販売でも、来場するトップメゾンとの商談経験・取引経験をPR材料にも活用してきた。

 このPVファブリックへの日本からの出展者数は、世界をけん引する生地メーカーが集積する著名産地を多数抱えるイタリア、新興繊維大国トルコ、お膝元のフランスに次ぐ第4位。長くこの地位にある事実だけでも日本製生地の実力の証しとなる。出展者数だけでなく、合繊からデニム、ジャージーからレースまでメーカーの多彩さも特筆すべき要素。中国や韓国などアジアからの出展者数も増えたが、日本の出展者数、多様性は他のアジア諸国の追随を許さず、質量両面で世界の服地市場での高い地位を確立している。

〈アワード受賞、過去10回の軌跡〉

 PVファブリックでは、出展者がトレンドコーナー展示用に提出する生地から優秀作品を選ぶPVアワードが年1回、9月の秋冬展に開かれる。世界的著名デザイナーなど毎回顔触れの異なる8人前後の識者が、作品提出者を伏せて審査に当たり、グランプリ以下の4賞が選定される。第10回の節目となった昨年9月の秋冬展では、スタイレム、東レ ウルトラスエードがダブル受賞。日本勢が2年連続ダブル受賞の快挙を果たした。

 スタイレムは織り・編み技術や意匠、加工の大胆な独創性を評価するイマジネーション賞、東レはエコで持続可能な「責任ある生産」を評価するスマートクリエーション賞を受賞した。ダブル受賞もさることながら、産地をまたぐ開発姿勢や、リサイクルポリエステル由来のエコ原料の開発などの評価ポイントを見ても、日本企業の素材開発力の在りかを象徴的に示した形となった。

 その前年の第9回も、エイガールズ、V&A japanがダブル受賞しており、エイガールズが日本勢として4年ぶりにグランプリに、V&A japanが優れた感触と驚きの性質を兼備した作品に与えられるハンドル賞を受賞した。この連続ダブル受賞で日本勢は直近2回のアワードで全種類の賞を手にしたことになる。過去10回の受賞歴からも、2回のグランプリを含む11の受賞作を輩出しており、プロ中のプロの眼鏡にかなう生地を継続的に生み出してきたことが分かる。

〈MUのJOB設置も10回の節目〉

 PVに次ぐ権威を誇る服地展MUだが、欧州以外の門戸開放は2014年9月展からと古くない。MUが初めて欧州外から迎えた初の出展者が日本ファッションウィーク推進機構(JFW)の組織する日本パビリオン「ザ・ジャパン・オブザーバトリー」(JOB)。以来、19年2月展でJOBは設置10回の節目を迎え、盛大な記念セレモニーが行われた。門戸開放の背景には「品質でMUと十分一貫性が取れるとして、イタリアの多数のハイエンドブランドの推薦・要望があった」(JFWの三宅正彦会長)。

 PVとの最大の違いはグループ出展による一体感。日本発とMU発の両トレンド発信が連携して、日本ならではの生地がコンパクトな区画にそろう。回遊性も高いJOBに来場者を誘導する仕掛けは出展者、来場者双方から評価が高い。職人的なモノ作りへの評価が高いイタリアという土地柄も手伝って、毎回顔を出す律儀なリピート来訪者も多い。出展を重ねるごとにコーナー主催者の開発・実務両面での支援を強化しており、産地企業にも敷居は低い。近年はコラボ出展や来訪者相互紹介の機運も高まり、プラットフォームとしての充実が目覚ましい。

〈日本製生地の強みと課題〉

 PV・MUともこの数回で新規出展は落ち着きを見せ、常連出展者が輸出拡大を狙う成熟期にある。日本製生地の強みは、キュプラなど独自の繊維、織り・編み双方の多様な産地背景、職人的と形容される独自改良を重ねた整理加工を幾重にも掛け合わせた開発力が支える。さらに生地商社の備蓄販売という販売形態も他国企業には類を見ない大きな特徴。欧米ブランドでも発注の引き付け傾向が強まる一方で、この機能の重要性が高まる。

 他方、克服すべき課題もある。指摘が最も多いのは、欧州からの遠さに加え産地の分業体制のほころびから来る全般的なスピード感のなさ、現地ニーズを的確に微調整し「半別注」に落とし込むコミュニケーション力の不足。これらが克服されれば、日EU経済連携協定発効も追い風に、エコ潮流とも親和性のある日本製生地の評価はさらに高まる。

〈日本企業のPVアワード受賞歴〉

第1回(2009年)

ハンドル賞:ショーワ

イマジネーション賞:いわなか(現ソトージェイテック)

第2回(2010年)

イマジネーション賞:ケイライン

ウールマーク特別賞:ニッケ

第3回(2011年)

ハンドル賞:東レ

第4回(2012年)

イマジネーション賞:ニッケ

第5回(2013年)

グランプリ:小松精練(現小松マテーレ)

第9回(2017年)

グランプリ:エイガールズ

ハンドル賞:V&A japan

第10回(2018年)

イマジネーション賞:スタイレム ZEN KIWAMIコレクション

スマートクリエーション賞:東レ