2019春季総合特集Ⅱ(9)/トップインタビュー  ユニチカ/キーワードはグローバル/代表取締役 社長執行役員 注連 浩行 氏/サステイナブル貢献に意欲

2019年04月23日 (火曜日)

 「平成というのは繊維事業の構造改善に追われた時代だった」と注連浩行代表取締役兼社長執行役員は平成の30年間を振り返る。2014年5月、取引銀行に金融支援を要請。同時に繊維事業の構造改善、高分子事業などへの経営資源の集中などを骨子とする中期計画を発表し、このタイミングで就任した注連社長。17年度からの現・中期計画の前半戦で事業ポートフォリオの改革に「めどをつけた」としており、創業130周年、ユニチカ発足50周年を迎える19年度を前に社長交代を明らかにした。今後は会長として、大所高所から新経営陣をサポートしながら、中計に掲げる反転攻勢の実現を目指すことになる。

  ――平成の30年間は繊維産業にとってどのような時代だったと位置付けていますか。

 結論から言えば、あまりいい時代だったとは言えないと思います。平成に入り、合繊業界では一時期、新合繊ブームが業界を席巻しました。

 しかし、バブル崩壊以降、長く景気が低迷し、その後もリーマン・ショックに見舞われたりと、基本的には苦労させられた時代でした。

 この間、どれほどの事業撤退や関連会社の撤収を進めたことか。平成6年にはレーヨン長繊維の生産から撤退しました。平成9年には綿紡績の貝塚工場を閉鎖しました。平成11年にはフランスの合弁会社・イノセタを閉めました。一方で平成11年に繊維事業を分社化し、ユニチカファイバーやユニチカテキスタイルを設立したり……。当社の場合は総じて繊維事業の構造改善に終始した30年間だったと言えます。

  ――今後の景況をどう見通していますか。

 少しずつ陰りが感じられるようになってきました。米中貿易摩擦によって電気、電子、自動車関連のような中国関連ビジネスに影響が出始め、当社の場合は高分子や樹脂、機能材といったセグメントに間接的な影響が出始めています。

 先行きがどうなるのかは正直、分かりません。が、あれだけ貿易額の大きな国がやりあっているわけですから、影響が拡大することを想定せざるを得ません。

 ――18年度の業績はどうなりそうですか。

 決算発表前ですから、あまり細かいことは言えません。18年度は前半戦がよかったんですが、ご存じのとおり、原料高騰に見舞われた後半戦で苦戦を強いられました。高分子事業も繊維事業も頑張っている方ですが、18年度はコストアップに苦しめられた、というのが実態です。

  ――繊維事業では18年度上半期、営業損失を計上しました。

 原料高騰に加えて、岡崎工場で多発したトラブルによりコストアップを強いられたことが営業損失に転落した要因です。しかし、岡崎でのトラブルは一過性の事案で、既に収束させています。繊維では売り上げを大きく落としていませんし、通期では営業黒字に浮上する見通しです。

  ――19年度は中期3カ年計画の最終年度になります。

 この中期計画のコンセプトは元々、反転攻勢でした。初年度の17年度はまずまず計画に沿った業績を確保できました。さまざまな要因が重なり2年目の18年度で苦戦を強いられましたが、やるべきことはやってきました。

 昨年のユニチカブラジルにおける生産停止で構造改善にもめどをつけました。成果の刈り取りに多少の遅れが出ていることは否めませんが、19年度で再び成長路線に戻すべく、取り組みを強化していきます。

  ――19年度の最重要課題は。

 繊維の収益改善に尽きると考えています。営業利益率が低迷しており、これをいかにして引き上げていくか。高付加価値素材を作り続け、これらの販売量を伸ばしていくしか道はないと考えています。幸い、前中計で汎用素材の生産を大きく縮小させたため、当社の繊維には強みを発揮できる素材しか残っていません。

  ――ケミカルリサイクルによるポリエステル「エコフレンドリー」の量産が始まります。

 当社が展開するエコ関連の繊維や樹脂があちこちから注目され始めています。ユニチカとしていかにサステイナブル(持続可能な)に貢献していくのか、当社の総力を挙げて環境関連素材の開発・販売と取り組んでいきます。

 先にバイオプラスチック「テラマック」でストロー向けの樹脂グレードを開発しました。4月から全社の商品開発に横串を通す新しい組織を導入し、この中にサステイナブル推進室を設けます。

  ――インドネシアのエンブレムアジアでナイロンフィルムを増設しています。

 ナイロンフィルムはグローバルにタイトな状況が続いています。新興国での生活レベルの向上に伴い、今後も食品包装向けの需要が順調に伸びていくでしょう。エンブレムアジアでは1万トンの増設で年産2万6500トン体制を構築し、来年11月から新設備を稼働させます。アジアで拡販するとともに、日本への持ち帰り、欧米輸出も強化し、数年でフル操業までもっていきます。

  ――まもなく元号が令和に変わります。

 平成の30年間は繊維でいろいろと取り組みながら高分子や樹脂の拡大を目指してきました。今後は高分子、樹脂を中心に事業体を大きくしていきたい。

 現在、当社の売上比率は国内が77%、海外が23%です。国内の状況は今のところ順調ですが、大きく増えることはないでしょう。当社にとっての新時代のキーワードはグローバル。今後は海外比率を高めていきます。

〈平成の思い出/繊維構改に終始〉

 平成の30年間を「当社にとっては決していい時代ではなかった」と語る。新合繊の時代に「シルミー5」を大ヒットさせたことなどを除くと、「総じて繊維事業の構造改善に終始させられた」ためだ。バブル崩壊やリーマン・ショックなどで強いられたリストラで、97年度のピーク時に3525億円あったユニチカの連結売上高は18年度末、1300億円強まで縮小する見通しとなった。しかし、ユニチカブラジルでの生産停止で後ろ向きの対策を完了。創業130周年の節目の年から新体制による巻き返しが始まる。

〔略歴〕

しめ・ひろゆき 1975年4月ユニチカ入社、2003年4月執行役員、05年4月常務執行役員、06年6月上席執行役員(役位呼称の変更による)、08年6月取締役兼上席執行役員、12年7月取締役兼常務執行役員、14年6月代表取締役兼社長執行役員、19年6月代表取締役会長就任予定。