PTJ2020春夏/閉塞感打破へ商談熱気/「垣根」取り払う提案
2019年05月23日 (木曜日)
22日に閉幕したテキスタイル商談会「プレミアム・テキスタイル・ジャパン2020春夏」は、晴天に恵まれた2日目で客足が大きく伸びたもようだ。国内衣料品消費の閉塞(へいそく)感を打破するよう、各ブースで熱心な商談が繰り広げられた。出展者の打ち出しで目立ったのは、サステイナビリティー(持続可能性)、快適な着心地、ウオッシャブル性、即納体制など。天然と合繊、スポーツとファッション、肉厚と軽量など、相反する要素の垣根を取り払うような提案が各所で見られた。
〈染色・加工/技術で顧客引き付ける〉
技術力で顧客の目を向けさせる――染色・加工企業の各ブースからはそのような意欲が伝わってきた。新加工を含め、各社が自信の商材を披露したが、出展者からは「待っていても仕事は増えない。自ら仕掛ける必要がある」との声が聞こえてきた。
久山染工(京都市)は、レーヨンを使った織物に和紙をボンディングした「3WL」を見せたが、加工の提案ではなく、生地として訴求した。「染色・加工は短納期や価格抑制の要求がきつくなっている。それを打破するには生地での販売を増やすしかない」と強調する。
山陽染工(広島県福山市)は、インディゴ染めや硫化染めなどを打ち出し、新加工では奇麗なゴールドが表現できる「メタリックプリント」を並べた。同社の加工はイタリアの国際見本市「ミラノ・ウニカ」(今年2月展に初出展)でも人気を獲得しており、「国内外で顧客開拓を強化」する。
来場者の目に留まったのは独自性の高い染色や加工だった。野崎染色(京都府亀岡市)は、蒸し工程の工夫で、プリントが難しいウール・ナイロン生地に対しても深い色の表現を可能にしたことが好評。東海染工のテキスタイル事業部は実績のある加工などを含めて幅広く提案した。
独自性と同時に「重視する必要がある」と各社が口をそろえたのがサステイナビリティー(持続可能性)やSDGs(持続可能な開発目標)などへの対応。ある染色メーカーは「欧州の顧客を中心に工場見学のほか、工場の写真を送ってほしいといった要望が増えてきた。積極的に応じている」と話す。
〈服飾資材/最新技術で新作紹介〉
リリーレースインターナショナルは立体的なプリーツブームを意識して、プリーツ企画を提案した。ポリエステルにトリアセテートを組み合わせ、光沢感に優れる。刺しゅうや箔(はく)加工を施したものも。「ツバキレースコレクション」は、天然由来の椿オイルとシルクプロテインを配合し、シルキータッチでソフト、保湿性があり、肌にも優しい。そのほか、オーガニックコットンやデニムに合わせられるレースなどを出品した。
溝呂木は新しい技術として「柄合わせプリント」を紹介。レースの柄に合わせてカメラがスキャニングして、柄にだけインクジェットプリントを施す。リニアモーターカーの原理がインクヘッドの駆動で応用されており、中国製の機械。日本ではまだ2台しかない。ドレス生地などに向ける。
シャルマン工芸はトレンドに合わせた刺しゅう・レースに加え、別注の刺しゅうアクセサリーも提案した。「アパレルだけでなく、靴やショールのバイヤーも訪れる」と話す。トーションレースの二渡レースは、2回目の出展。「短納期の要請に対応するため、工場の設備も整備。フリンジも長さや柄は要望に」応じる。
タナベ刺繍はスパンコールと立体刺しゅうの組み合わせを得意とする。これまでJFW―JCに出展していたが、春夏商品を提案するため、PTJに初出展した。社員に若い女性が多い。「若い人の感覚を、管理者がどう評価して取り入れるかが重要」と、新しい感性を生かす。
〈長繊維/天然調合繊が“主役”〉
長繊維ゾーンでは商品の多彩さや、天然調合繊の打ち出し、サステイナブル(持続可能な)提案が注目された。
福井産地の産元、明林繊維は今回の展示商品を全て環境配慮型にした。リサイクルナイロン、同ポリエステル、オーガニックコットン、同ラミーなど22点を展示。これらの組み合わせも多彩で、全て原料、糸で認証を持つ“本物”をそろえた。中でも注目されるのは、グアテマラ産のアップサイクルコットン。廃棄するゴミを再生してデニムを作った。
同社は輸出比率が7割を占め、海外顧客からは環境配慮が必須条件として求められる。日本ではまださほどニーズが高まっていないが「いずれ必ず(エコの)波が来る」として先行提案に力を入れた。
生地商社の松原は綿タッチのポリエステル100%織物を前面に訴求した。「ケアフリー」という糸を用いてストレッチ、膨らみ、ソフト――などの特性を付与。「かなり大きな反響」を得た。同社は近年、ストレッチ性を軸に着心地を追求した生地開発に力を入れており、備蓄機能による即納、小口対応も強み。今回展ではブースを大きくしてオープン形式にしたこともあり、出展10回目にして過去最高の来客数と言う。天然調合繊は同社に限らず同ゾーンの“主役”の一つだった。
商品の多彩さが強みの宇仁繊維のブースは今回展も盛況。PTJでは初披露となるデニム、人気継続の割繊糸使いのバリエーションなどが注目された。
〈短繊維/質感と風合い打ち出す〉
短繊維のブースでは、質感や風合いを打ち出す展示が目立った。
ササキセルムは、ミニマル・ファッション向けに綿などを取り入れ、天然素材ならではの質感を打ち出す。展示テーマをジェンダーレスやボーダーレスの「レス」に設定し、ユニセックス向けも多く出品しているが、それらの商材でもハリ・コシ感を強調する。
織物染色加工の鈴木晒整理は、天然繊維の風合いを生かしながら合繊の滑らかな手触りをもたらす「モダンニュ加工」を提案する。適度な反発感と軽度の撥水(はっすい)性を兼ね備えた機能性を発揮させる。上品な光沢感も加える。サステイナブル(持続可能な)のニーズに対応する加工法として訴求する。
デニムのジャパンブルーは、デニム中心から布帛全般に展示内容を切り替えた。手触りに特徴を持たせた綿などのパイル生地といった新商材もアピールする。クロスジャパンは、カットジャカードに絞った出品で、来場者の視線を引き付けた。独特の凹凸感を強調し、差別化を図る。
綿、麻、化合繊織物を販売する浅記は、風合いにこだわり、綿などの天然素材を中心に出品。同社は小ロット対応に優れ、伝統的な「スペック斑(まだら)染め」のカジュアル素材などを提案した。
〈海外出展者/エコ関連素材も提案/洗えるリネンなども開発〉
韓国のSFTは化合繊のプリント生地を主体に提案する。トリコットのシャツ地「ドリッチ」、アウター向けには織物調のトリコットが、薄く、軽く、シワになりにくいと好評。エコ関連ではリサイクルポリエステルのほか、ポリエステルの重合段階で植物(レンギョウ)オイルを入れてスポンジ状にし、抗菌、UVケア、吸水速乾機能を持たせた「ジュラシール」も打ち出す。「プリントデザインはオリジナル。ASEANではインドネシア、ベトナムの協力工場でも生産」する。
GBテキスタイル(韓国)は初出展。韓国で化合繊の製織から染色まで行う。欧米輸出が中心でエコ関連ではリサイクルポリエステル生地も販売する。
中国の華仁亜麻集団も初出展。リネン中心に紡織、先染めを行い、後染めは協力工場が担う。バングラデシュに縫製工場を持つ。麻100%で防シワ性の生地は、紡績、製織、加工で実現。WW性は3級。「トラベラーリネン」は、麻55%・ポリエステル45%で、麻紡績のため、麻の風合いが残り、洗えて、シワになりにくい。
愉悦家紡(中国)はエコテックススタンダード100の認証を取得、繊維製品の安全性を示すホワイトリストにも登録する。ホームテキスタイルが中心だったが、5年前からイタリアのデザイナーを採用してアパレル向け生地に取り組む。
〈ワークショップ2日目/古橋織布が遠州産地紹介/歴史を学ぶ機会提供〉
PTJ2日目(22日)の関連プログラム「テキスタイル ワークショップ~日本の素材を学ぼう!」は、古橋織布で営業を担当する西井香織理氏が「コットン/遠州産地」を講演した。
遠州産地は江戸時代に泉州、三河と並ぶ三大綿織物産地として始まり、明治にはトヨタ、スズキといった自動車メーカーの創始者が織機を開発した話題にも触れた。その後、10社以上の大手紡績が産地に進出したが、1972年をピークにして輸入圧力で縮小。浜松市の工業出荷額のうち、35年に7割近くを占めていた繊維製品は、3%を切っている。「浜松では繊維を知らない若い世代も増えた。技術力の継承問題もある。このため、“産地の学校”を昨年から開講。今年は遠州産地振興協議会を設立して、遠州織物の魅力を知ってもらう冊子も作った」と語った。
参加者は「産地の歴史はネットでも分からない。大変勉強になり、興味も湧いた。今後もいろいろな産地の歴史をシリーズ化してほしい」とコメントした。
〈世界の潮流は日本企業に好機もたらす/繊産連鎌原会長〉
日本繊維産業連盟の鎌原正直会長は22日、PTJの会場を訪れ、各社のブースを視察した。「日本企業のレベルの高さを改めて感じた。日本素材をベースに、デザインと加工が三位一体になれば世界でも戦える」と感想を述べた。
今回のPTJではサステイナビリティー(持続可能性)やSDGs(持続可能な開発目標)に目を向ける出展者が目立ったが、「そのような取り組みは日本の企業が得意とするところ」であり、「チャンスが到来している」との認識を示した。
〈奇麗で素晴らしい/経産省・大内大臣官房審議官〉
経済産業省の大内聡大臣官房審議官が22日、PTJを視察した。トレンドコーナーのほか、宇仁繊維、第一織物、東レ、渡辺パイル織物などを回った。大内審議官は雇用・人材担当だが、PTJについて「会場は思っていた以上に奇麗で、素晴らしい生地に満ちていた」とコメントした。




