繊維は新材料 テクテキスタイル19(1)/中小企業も産資強化/合繊大手だけじゃない

2019年05月28日 (火曜日)

 世界最大の産業用繊維と不織布の国際見本市「テクテキスタイル2019」が14~17日、ドイツ・フランクフルト国際見本市会場で開催された。同展には54カ国・地域から約千社が出展した。日本の出展者には、合繊メーカーなど大手企業だけでなく、中小企業も名を連ねた。繊維は衣料用だけではない。その裾野は広く、さまざまな分野で活躍する。そして、それを担うのは大手企業ばかりではなく、中小企業の存在も欠かせない。

(西田貴夫)

 主催者のメッセフランクフルトによると、テクテキスタイル2019には併催する縫製機器と関連技術の国際見本市「テックスプロセス2019」を含めて約4万7千人が来場した。日本からは海外子会社も含めて20社を超える企業がブースを構えた。カネカ、クラレ、帝人、東洋紡、東レ、ユニチカトレーディングなどの合繊メーカーに交じって中小企業も数多く出展した。

 その1社が縫製・溶着関連機器製造のクインライト電子精工(和歌山市)。2011年のテックスプロセスには出展したものの、テクテキスタイルは初めて。産業資材用は全体の約3分の1を占めるが、今回展で提案したテントやシートなど広幅生地の中継ぎ用ミシンが面白い。このミシンは従来機の6本針ミシンとカートを組み合わせたもので、ミシンが自走する。4メートル幅で長さ30メートルの生地をつなげることもあるそうだ。

 これまでは、6~7人で生地送りをしていた。その生地を送らず、ミシンを自走させるという逆転の発想で開発した。「特注機でもあり、需要家の仕様に合わせて改造する」。既に、日本、中国、イタリア、オランダで販売実績がある。

 同じく初出展したのが丸編み地製造のミツカワ(福井県越前市)。国内外の展示会に単独ブースを構えるのは初めて。清水敬互社長は「安定化のために産業資材向けも伸ばしたい。それには情報が必要」として出展を決めた。資材比率は現在、生産量の約40%。さまざまな生地を提案したが、特に目付8グラムというナイロン66使いの薄地軽量丸編み地が目を引いた。

 合成皮革製造の加平(大阪府泉佐野市)は4回目の出展。今回はカーシート地向け新合成皮革「DECO(デコ)」に絞って提案した。デコは軽量で耐久性があるほか、デジタル作成した3Dデータをエンボスロールにじかに描き、合成皮革表面に意匠性を付与できる。「需要家はオリジナルな柄デザインを持った合成皮革を簡単に作れる」(田所茂和社長)のが特徴。

 ベルベット製造の妙中パイル織物(和歌山県橋本市)は2回目の出展となる。同社も資材比率は60~70%と高いが、「われわれが知らない用途は数多くある。今ある生地を提案、販売するのではなく、新商品、用途開拓に結び付けるのが出展の狙い」と妙中清剛社長は話す。

 日本の繊維産業で、産業用繊維や不織布の重要性は年々高まっている。恐らく、それは海外も同様。テクテキスタイルを通して、さまざまな用途で材料としての可能性を秘める産業用繊維・不織布の世界を探る。