特集 快適素材・加工(3)/快適性をサポートする検査機関

2019年05月28日 (火曜日)

 快適性にはさまざまな分野がある。ストレッチ性は婦人服分野で標準装備化しつつあり、撥水(はっすい)機能はスポーツだけでなくカジュアル分野でも増えている。検査機関の快適性に対する動向を見る。

〈カケン/新規試験を積極導入〉

 カケンテストセンター(カケン)は快適や清潔に焦点を当てた機能素材に欠かせない多彩な機能性試験を実施している。特に日本工業規格(JIS)にも採用された新規試験を積極的に開発・導入する。

 カケンは生物分野の試験で抗菌性、抗ウイルス性、抗かび性などに加えて1月から防蚊性試験の受け付けを開始した。2018年12月に防蚊性試験がJIS化されたが、JISに規定された誘引吸血装置法と強制接触法のうち、前者はカケンが開発したもので、いち早く防蚊性試験を開始した。

 今年1月には「繊維製品の紫外線遮蔽評価方法」もJIS化された。UVカット性試験は化繊協会法やオーストラリア・ニュージーランド規格で評価するのが一般的だったが、JISでは紫外線遮蔽(しゃへい)率と紫外線防護係数(UPF)での評価が規定された。この試験にもカケンはいち早く対応している。

 3月には遮熱性と光吸収発熱性の試験方法もJIS化された。いずれもベースとなる試験方法や使用する人工太陽光源はカケンが開発したものが採用されている。両試験とも受付をカケンで受付を開始している。

 今後は試験の認知度向上のために学会発表やセミナーも実施する。

〈QTEC/開発支援や共同研究も重点〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、抗ウイルス性や抗菌性、抗かび性など微生物試験を得意とする神戸試験センター(神戸市)を中心に、機能性試験だけでなく企業の商品開発支援や大学との共同研究にも力を入れている。学術的基礎研究も担うことで試験方法の開発や精度向上にも貢献することを目指す。

 QTECは現在、微生物関連の試験を神戸試験センターに集約している。射本康夫社長はISO(国際標準規格)にもなった抗ウイルス性試験方法の開発で中心的役割を果たすなど豊富な実績を持つことが強み。このため抗ウイルス性試験や抗菌性試験の依頼も堅調に獲得している。

 最近では樹脂やフィルムへの抗ウイルス性試験など繊維分野以外からの依頼も増えた。このため規格化された試験だけでなく対象菌種を広げた試験などにも対応している。これらの取り組みで単純な機能性評価だけでなく、企業の商品開発支援や大学との共同研究でも大きな役割を果たすことを目指す。

 こうした取り組みを可能にする人材育成も重視。このため日常の試験業務だけでなく学会発表や論文発表にも取り組む。QTECの微生物試験分野での学術的基礎研究も担うことで試験精度の向上や新たな試験方法の開発にも取り組む。

〈ニッセンケン/食品検査も行う立石ラボ〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の東京事業所立石ラボは、靴、バッグ、傘などの試験を行うほか、新たに食品安全品質サービスを開始した。ライフスタイル提案の拡大に合わせ「快適性の数値化の依頼が増えている」と言う。

 靴はスリップテスターで耐滑試験を行うほか、ウイリアムス式の摩耗試験を行うため、新たな設備も導入した。耐屈曲性、ヒールの疲労耐久性試験も実施。安全靴の製品試験にも対応する。キャリーバッグは落下、走行性、強度試験を、スーツケースではローラーの摩耗性試験が増えている。

 傘はJUPA(日本洋傘振興協議会)の基準に対応。耐漏水試験は100ミリ/1時間で、60分間の豪雨試験も可能になった。製品試験だけでなく、素材段階の試験への取り組みも開始する。

 立石ラボでは4月から食品安全品質サービス(FSQS)もスタート。食品表示法の施行、原料原産地表示制度の改正、HACCP(危害分析重要管理点)に沿った衛生管理の制度化が進められており、食品取扱事業者からの需要が増加する。

 FSQSは、これまで培った衛生関連試験のノウハウを生かし、食中毒防止の細菌検査、厨房などの拭き取り検査、厨房点検・工場点検、店頭販売状況点検などを実施。栄養成分表示が来年4月から義務付けられるが、その表示サポートも行う。

〈ボーケン/科学的分析で客観評価を〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は4月に事業本部制を導入した。未来研究所と機能性事業本部を立ち上げ、機能性試験の強化を進める。「快適機能は多種多様だが、機能性試験依頼は年々増加している」と言う。

 スポンジなど軟質発泡材料の抗菌性試験が昨年、JIS規格に制定された。ボーケンは繊維評価技術協議会の抗菌性などSEKマークの指定検査機関だが、この新JIS規格を技術面でサポートした。今年度からプラスチック製品などの抗ウイルス試験のISO化への協力も進めている。日本ゴム工業会とは、ゴム・プラスチック引布の吸水性試験のJIS化でも、委員を派遣し、技術的にサポートする。

 2017年には「形態安定加工ワイシャツ試験方法及び評価基準」もJIS化された。ボーケンはこの制定に、分科会長として関与。洗濯後のシワ判定は目視で行われているが、未来研究所は、東京家政大学家政学部の森俊夫教授との共同研究で、機器測定(画像解析)によるシワの評価試験を開始した。

 機器測定で、より客観的に評価でき、従来の級数判定ではなく、「シワカット指数」という新しい評価指数で防シワ性能をイメージしやすくした。ボーケンは金沢工大との共同研究でペプチド分析による獣毛素材鑑別も行うなど、科学的な分析手法を提供する。