技術の眼

2019年06月04日 (火曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKK/シャボン玉の虹色のように〉

 シャボン玉の表面に浮かんだ虹色。見る角度や光の当たり方によってさまざまな色彩が浮かび上がる。ファスナーにそういった干渉色を表現できないか、と開発したのが、YKKの「オーロライト」。

 コイルファスナーのエレメント(務歯)表面に干渉色の薄い皮膜を処理することで、見る角度により色調の変化を楽しむことができる。特殊な前処理を行うことで、塗膜に強固な密着性を施す。同社の金属調コイルファスナー「メタリオン」の色味とは異なり、高級感や落ち着いた印象の色展開が可能となった。

 黒のエレメントにゴールドの皮膜などカラーバリエーションは10種類に増えた。サイズは№5だったが、新たに№3が加わった。カジュアルやスポーツなどの衣料分野のほか、かばん、小物用途などに展開する。

〈ミツフジ×ワコール/ブラ型ウエアラブル開発〉

 ミツフジ(京都府精華町)はこのほど、心拍などの生体情報を集められるブラジャー型ウエアラブル「アイブラ(iBRA)」をワコールと共同で開発した。ミツフジが7月から販売する。

 取得したデータを活用し、働く女性の体調や健康状態の管理に役立つインナーとして法人向けに提案する。ミツフジがアプリや着脱式トランスミッター(情報をアプリに転送する送信機)を手掛ける。ワコールがブラジャー部分を設計・製造する。

 航空会社のピーチアビエーション(大阪府田尻町)が、アイブラの着用実験で協力した。客室乗務員や接客対応する社員十数人がアイブラを1週間程度業務中に着用し、心拍などのバイタルデータを取得しミツフジに提供した。解析したところ、ストレスと仕事のやりがい、睡眠時間、業務の習熟度、それぞれとの関連性が明らかになったという。

〈アイトス/布製ヒーターで暖かく〉

 ユニフォーム総合メーカーのアイトス(大阪市中央区)は、ファブリック(布製)ヒーター型のウエアラブルユニット「ホットピア」を採用したベスト、ポータブルシート、腰ベルトの販売を19秋冬から本格化する。生地に電熱線を入れ込み保温する仕組みが多い中、生地全体が均一に発熱し、少ない電力で高い保温性を確保できるのが特長。スマートフォンのアプリによって温度調節も可能で、取り扱いやすい。

 ホットピアは2011年に三機コンシス(東京都江戸川区)が開発したもので、銀の糸をニット状に編み込み、編み方で特許技術を持つ。これまでは電熱線を入れ込んだ生地や面状発熱体を部分的に使い、バッテリーで発熱するような仕組みが多かった。

 バッテリーを使うのは従来と変わらないが、ホットピアは生地全体が発熱するという点に大きな特徴がある。生地そのものなので伸縮性に優れ、通気性も高く蒸れにくい。

〈帝人フロンティア/新フィブリル調生地開発〉

 帝人フロンティアは、新フィブリル調ポリエステル織・編み物「フィブリット」を開発した。易フィブリルポリマーをベースに多様な技術を組み合わせて、シルクの中で最も柔らかいとされる天蚕(てんさん)のようなタッチと外観を付与した。

 フィブリットは、最高級シルクである天蚕の再現を目指して商品化した生地で、開発には過去のシルク調ポリエステル素材の高次加工技術を見直しながら新技術要素を取り入れた。易フィブリルポリマーをベースに分子配向制御と高次加工の技術を駆使することで、優しい手触りと上質な外観を実現した。

 従来のフィブリル生地の弱点だった洗濯耐久性や防シワ性を克服するイージーケア性を兼ね備え、洗濯50回後もドレープ性とフィブリルを維持する(同社調べ)。織物は薄地から中肉地まで幅広いバリエーションをそろえ、薄いタイプの目付(1平方メートル当たり)は90グラム。36ゲージの丸編み地なども提案する。

〈三星毛糸/国産の快適Tシャツ発売〉

 服地製造の三星毛糸(岐阜県羽島市)は自社ブランド「ミツボシ1887」から“ウールの機能性と日本の技術を生かしたTシャツ”を販売するプロジェクト「23時間を快適に! 隠れ不満を解消する、寝ても起きても気持ちいい日本製Tシャツ」を、クラウドファンディングサイト「マクアケ」で開始した。4月19日にプロジェクトを立ち上げた。6月17日まで支援を募る。

 このTシャツは「23時間(1日24時間から入浴の1時間を差し引いた)を快適に過ごすのがコンセプトで、高級スーツに使うエクストラスーパーファインメリノウールを使用する。余分な湿気を蒸発させ、適度な水蒸気をウール内部に閉じ込めるため、夏は涼しくサラッと、冬は暖かくしっとりとした着心地が特徴。ウールが持つ撥水(はっすい)性、防汚性、抗菌防臭性はもちろん、酵素加工を加えて抗菌防臭性能も高めた。家庭洗濯機で洗えるウオッシャブル仕様でもある。

〈ナストーコーポレーション/高消臭タオルを投入〉

 タオル製造卸のナストーコーポレーション(大阪府箕面市)は、高い消臭機能が半永久的に持続する綿素材「デオネクスト」使いのタオルを投入した。綿を改質しているのが特徴で、一般的な後加工品に比べて機能性、耐久性が高く、19春夏向けで広がりを見せている。

 デオネクストは、国内で改質したわたを中国で紡績。綿の繊維に結合した消臭基がアンモニア、酢酸、イソ吉草酸の臭気をキャッチし、化学的に中和して消臭する。アンモニアの試験では、10分後に96%の臭気を中和した。消臭機能は洗濯や天日干しで復元する。さらに加齢臭の原因となるノネナールも吸着する。

 薬剤を使った一般的な後加工品では、20回程度の洗濯で消臭機能が薄まるが、デオネクストは繊維に消臭機能を組み込んでいるため、洗濯や摩擦で機能が低下せず、半永久的に効果が持続する。綿本来の風合いも保持できる。