環境特集(4)/欧州生地展の動向/PV・MUにもエコ潮流/エコ原料から企業姿勢まで発信幅広く
2019年06月17日 (月曜日)
欧州生地見本市で最大規模、発信力を誇る「プルミエール・ヴィジョン(PV)パリ」、それに次ぐ地位にある「ミラノ・ウニカ」(MU)とも、2月の20春夏展の来場者の印象について、その注目点がエコ、エシカル素材に大きく傾いてきたことに触れない日本の出展者は皆無だった。
昨年から展示会全体の方針としてエコ素材比率向上を打ち出したMUだけでなく、欧米に限らずアジア圏からも多数の来場者があるPVでも、「エコ素材だけを目当てに来訪する客が前回展に比べて格段に増えている」という声は多い。
ただ、MUの開会基調講演では「エコ推進の方針に賛同するメーカーが数倍に増えている一方、消費者教育など世論醸成との連動が不可欠」と留保も付けられた。実際にバイヤーの要望も一様ではない。どこまで潮流に応えるかは、現状ではメーカー側の姿勢に委ねられている。
厳格な原料認証、環境性能を要望する声も確かにあるが、綿やウールなどの原料の一部をオーガニック化できればという程度の要望も多く、さらには、漠然とナチュラル感があり、モノ作りにストーリーと共感性があれば十分という要望もまだまだ少なくない。
それでも「エコ・サステイナブル(持続可能な)」の切り口が避けて通れなくなったという印象を各出展者は持つ。瀧定名古屋のように「ウェルネス」をテーマに、エコ意識が生む精神的豊かさを重視するライフスタイル自体の発信も加速する。この間、同社は国際認証を取得した責任あるウール原料の調達・生地生産体制を訴求する一方、リサイクル合繊原料との複合でシワ防止やウオッシャブルなど機能性も付与した「テクノウール」生地使いの製品でロングライフ化など価値観の発信にもつなげている。
東レウルトラスエードや小松マテーレが部分バイオ比率を高めた人工皮革・合繊生地を披露して大きく注目されるなど、ハイテク素材は日本の得意とするところ。逆に、これまで合繊特殊糸で機能性を付与したスポーティーなジャージーで日本らしさを訴求してきたが、オーガニック品やナチュラル感ある商品で統一し、展示する生地色もあえて生成り・白系に絞って、商談件数増につなげた東光商事のような例もある。デニムメーカーもリサイクルポリエステル品や天然藍染色品への関心が断然高いと話した。
強みとする「トレンドに多彩な素材軸で対応できる全方位性」を維持するには、全面的エコ素材化にはまだ無理があると言うスタイレムも、トリアセテートやキュプラ交織・交編品など日本独自のエコ原料使いの生地を意識的に増やしている。
エコも含めて広義の社会的責任というとき、特に欧州では「責任=レスポンシビリティー」は言外に「応答」の意味も伴う。素材の機能性や認証での裏打ちも必要だが、社会的文脈への意識を高め、誰の何に応答するか、その姿勢を鮮明にすることもそれに劣らず重要な要素だと言える。




