トンボ/瀧本子会社化の根底に“モノ作り”/ユニフォーム業界最大手へ

2019年06月19日 (水曜日)

 「学生服業界が先細り、市場縮小が目に見えている」――トンボは5月31日に日鉄物産から瀧本の株式の51%を取得し、子会社化した。その狙いとしてトンボの近藤知之社長は「根底の大きな要因にモノ作りが背景にある」と話す。生産面でキャパシティー共有を見据えるとともに、販売の前線では競合相手として「切磋琢磨(せっさたくま)しながら市場でシェアを広げる」構想を描く。2022年6月期に売上高400億円を計画。ユニフォーム業界最大手としての一歩を踏み出す。(於保佑輔)

 トンボは瀧本子会社化によって、グループの19年6月期の連結売上高が383億円弱になる見通し。菅公学生服(18年7月期の売上高348億円)を抜き、学生服業界でメーカーのトップに躍り出る。

 学生服のみの売上高も300億円超と菅公学生服の228億円を抜く。ユニフォーム製造卸全体ではトップの売上高となり、関連会社28社でグループ従業員総数は2千人を超える規模になる。

 昨年春から瀧本の子会社化を構想し、日鉄物産と交渉を進めてきた。その背景には少子化の影響を受け学生服市場が縮小してきたことがある。既に出生人口は100万人を切り、今後10年で中高生の新入生は15%減少すると予測される。

 近藤社長は「売り上げに影響するだけならいいが、生産現場でワーカーの人手不足が深刻になってきた」と説明。特に4月に施行された働き方改革関連法と、改正出入国管理法の影響を懸念する。

 繁忙期の3~5月は、働き方改革関連法で240時間までの残業が上限となる。アルバイトや派遣社員の人員確保が必要となり「人件費や生産性の低下が考えられ、利益確保が厳しくなる」。

 海外の実習制度について改正出入国管理法でさらに特定技能の制度が創設されたが、縫製業での在留資格は対象外となり、「今後は海外実習生の労働力の確保が難しい」と危機感を募らせる。

 トンボにとっても協力工場を活用する機会が少なくない中、瀧本と「プラットホームで生産キャパシティーを共有し、効率的な生産を考える」。瀧本の従来の親会社である日鉄物産が持つ海外生産のキャパシティーの連携も将来的に見据える。

 販売面では「瀧本は『スクールタイガー』といった有力なブランドを持ち、伝統もある。そのブランド力を生かしたい」。販路とブランド、商品については従来を継続し、前線で両社が競合相手となることも想定。「トンボと瀧本の2社で獲得する図式を作る」ことで市場でのシェア拡大を目指す。

 トンボから瀧本へ常勤2人、非常勤2人合わせて4人の取締役を派遣。他の3人の取締役とともに経営に臨む。

 7月から新中期経営計画をスタートし、最終年度の22年6月期に売上高400億円を目標に掲げる。「売り上げよりも利益を重視する」姿勢は瀧本子会社化の発表以前から変わらない。

 国内でのモノ作りを確保しながら、近藤社長は「高品質、高機能で確立された“美しい日本の制服姿”を次世代にも引き継ぐという使命感を持つ」と力を込めて話す。学生服だけでなくユニフォーム業界のメーカートップとしての力量がこれから試される。