カケンCSRセミナー/「作り場を守る」日本的監査/10~20年遅れる日本

2019年06月24日 (月曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は20日、東京都台東区の浅草橋ヒューリックホール&カンファレンスで、「カケンCSR(企業の社会的責任)セミナー」を開いた。同セミナーではCSR監査に携わる日本アパレルクオリティセンターの山下隆理事長が「低賃金を追い求める工場探しはもう限界。CSR面の管理が優秀な工場との取り組み強化が必須」と、縫製工場のCSR監査手法や実例を紹介。参加者は100人を超え、CSR対応への関心の高さをうかがわせた。

 日本アパレルクオリティセンターは2008年からCSR監査業務を始めた。これまでに250件ほどの実績がある。その経験から「労働環境の悪い工場は退職者が多く、人員が安定しない。監査不合格の工場は廃業するケースも多い」と語った。

 監査には第三者監査、第二者監査(オーダーする側の監査)、書面監査、通達・宣言書があり、後者ほどリスクレベルは高い。「主力工場は第三者監査、年間生産数が少ない工場は書面監査など重要度によって運用の仕方がある」

 中国・東南アジアでの実際の監査では、営業許可がない(未登記)、無許可の建築、労働契約を締結していない、残業加算の不足、年休がない、社会保険未加入といった例があった。衣料に比べ、服飾雑貨の工場の方がリスクは高いようだ。

 日本のアパレルの現状は、社内にノウハウがない、工場を切り捨てられず指導的監査が必要、欧米ブランドに比べ10~20年の遅れのほかに、外国人技能実習生の問題などがある。個々のアパレルが監査を実施することは、「アパレル(商社)、工場にとっても大きな負担となる。監査結果をアパレル全体で共有し、共通の尺度で工場評価ができる体制が必要」と指摘した。

 欧米的監査は、改善指導を行わず、評価基準もまちまちで、「ブランドを守る監査」になっている。一方、日本的監査は、国、工場の実情を踏まえ、なぜ不適合かの指導も行うのが特徴。「作り場を守るための監査」といった違いがある。