「ミラノ・ウニカ20秋冬」/初日の客足はまだら模様/注目はサステイナビリティー
2019年07月11日 (木曜日)
【ミラノ=桃井直人】欧州で最大規模を誇る服地見本市「ミラノ・ウニカ(MU)20秋冬」が9日、開幕した。30社・団体が名を連ねた日本コーナー「ザ・ジャパン・オブザーバトリー」(JOB)では、「例年に比べ客足が鈍い」という声が上がった一方で、「例年通り」と話す企業も見られるなど、ブースごとに印象の分かれる初日となった。会期は11日まで。
MU全体のキーワードの一つであり、日本の企業・団体も力を入れるのがサステイナビリティー(持続可能性)への対応。多くの企業が「欧州では既に不可欠になっている」との認識を示し、サステイナビリティーの広い概念を象徴するかのように多様な角度でのアプローチが目を引いた。
今回が初出展のテキスタイル製造卸、ショーワ(岡山県倉敷市)は国内紡績と連携し、未利用綿を使った糸でデニムを作るほか、廃棄されたジーンズを反毛・紡績してデニムに再生する取り組みも推進。そのほか、オーガニックコットンと草木染めを組み合わせたデニムも打ち出した。
同じく初参加の豊島は「サステイナビリティーは、欧州では標準」とし、廃棄予定の野菜などから抽出した染料を使用する「フードテキスタイル」を紹介。単独でブースを構えたセーレン(前回は合同ブース)は「サステイナビリティーで注視されているのは素材」と話し、キュプラ繊維を使った生地などをそろえた。
生地商社の前田源商店(山梨県富士吉田市)は、オーガニックコットンなどの輸入を行うパノコトレーディング(東京都千代田区)のシステムを活用。生地に添付されたQRコードを読み取るだけで、使用した原綿の生産地やどこの工場で紡績や製織したかなどの情報を知ることができる。
サステイナビリティーと並んで注目されたのが、生地の備蓄販売だった。「備蓄を当てにする欧州ブランドが増えてきた」とされ、ロットを聞かれることが多くなったと言う生地商社もあった。高密度織物を販売するスタイルテックス(東京都中央区)は4品番で海外向けの生地備蓄販売を始める。
2月に発効した日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)については、欧州市場開拓には追い風になるという意見が大半だった。他方、紳士服地製造の中外国島(愛知県一宮市)は影響の大きさは未知数と前置きした上で、「インポート生地が拡大する可能性がある」と指摘した。
〈富士吉田市の繊維企業/新ジャカード織物を展開/県産業技術センターなどと連携〉
山梨県富士吉田市の繊維企業が“こもれび”企画(仮称)の欧州展開を本格化する。山梨県産業技術センターなどとの連携で進めているもので、多様なデザインをジャカードで表現する。織布企業と商社の3社が「ミラノ・ウニカ(MU)20秋冬」で独自に作った生地を紹介している。
山梨県産業技術センター富士技術支援センターと山梨大学がさまざまなデザインの織物への応用を可能にする技術(ソフト)を共同で開発した。富士吉田市や西桂町の織布企業や商社がこの技術を使ってジャカード生地を作る。最初に生産した柄が木漏れ日だったことから、“こもれび”企画と呼ぶ。
保有している設備などが違うことから、企業ごとに味わいの異なる柄が表現できる。宮下織物は、織り組織によるグラデーションで、独特の立体感のある柄を表した。今春に国内の展示会で参考出品したが、MUが正式デビューの場となった。十数点展示し、「婦人と紳士の両分野で訴求する」と強調した。
前田源商店は「これまではできなかった柄が作れた。表現の多様化は武器になる」と話す。初披露となったMUでは、富士吉田市側から見た南アルプスをモチーフにしたものなど、三つの柄を打ち出した。「トップブランドの買い付け担当者らがどのような反応を示すのか、非常に楽しみ」と言う。
8柄を見せたのが渡縫織物。「“こもれび”企画の前から、水玉が流れているようなデザインをジャカードで再現していた。それをベースにした柄を製造した」と出展した生地を説明する。前回展(20春夏展)で初めて提案したところ数社からスワッチ依頼が入り、一層の拡大へ期待感を強めている。
MU20秋冬には参加していないが、西桂町の織布企業2社もこの取り組みに参加している。“こもれび”企画が郡内産地の織物の新たな武器になる可能性がある。
〈織工房風美舎/カラミ織り欧州市場に提案/ファッションの需要探る〉
織物製造の織工房風美舎(福井市)は、カラミ織りで欧州市場を攻める。通気性やシャリ感などの特徴を持つカラミ織りは、僧衣(けさなど)に使われることが多いが、ファッション用途の開拓は可能と捉える。「ミラノ・ウニカ(MU)20秋冬」で提案し、欧州トップブランドの反応を確かめる。
カラミ織りは、2本の糸を絡ませながら織り上げる、目の粗い(メッシュ調)生地。通気性や斜め方向の伸縮性に優れるほか、メッシュ調でありながら目折れがしにくく、独特の風合いを表現できる。僧衣や夏用シャツなどで使用され、生産には熟練の技術者が必要とされる。
同社は6台の織機を保有し、僧衣向け生地の生産が全体の9割を占める。僧衣は、比較的安定した需要が見込める分野であり、ファッション用途や海外販路の獲得が急務というわけではないが、「困難なことに取り組んでみたい」(澤田真介代表取締役)との思いから、参入を検討する。
経糸にシルクを使い、緯糸にはシルクとカシミヤを交互に打ち込む。生地値は1㍍当たり(115センチ幅)1万円以上と高い。澤田代表取締役は「持っている織機の台数は限られ、超高級ゾーンで戦える生地を提案しないと意味がない。使用している糸は厳選しており、自信はある」と強調する。
生地幅は95センチが主体で、115センチまで。用途はストールやドレスなどを想定する。同社では通常ポリエステル100%の生地を作り、夏物で提案しているが、糸を替えることで秋冬での活用を可能にした。既にファッション用途での採用も一部あるが、MU20秋冬への初出展で顧客の反応を探り、今後の戦略に生かす。
〈MUのボット・ポアーラ会長/デジタルと持続可能性がテーマ/アフリカにも注目〉
「ミラノ・ウニカ」(MU)のエルコレ・ボット・ポアーラ会長は開幕のあいさつで、デジタル革新とサステイナビリティー(持続可能性)がテーマになると述べた。
今年2月に始動した電子市場、MUマーケットプレイスのパイロット版には当初60社が参加していたが、半年後には153社に増え、デジタル技術への関心の高さを示した。
トレンドエリアに併設された「サステイナビリティー・プロジェクト」への参加企業は、昨年7月展比22%増の150社となり、その展示製品数は40%増の1004点に達した。
講演やパネルディスカッションでも、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考えが加速していることが認識できた。多くの国や企業が一緒に取り組むべきものであり、文化的な意識の変革が必要。未来を担う若い人たちの中にはリサイクル品を使う文化が芽生えてきている。将来の消費者はそのような若者たちだ。
ディスカッションの中でボット・ポアーラ会長は、アフリカ生産とその市場が重要になってくると話し、アフリカプロジェクトを進めているとも明かした。最もサステイナビリティーなのは、市場に近い国・地域での生産であるとの考えに基づくもので、今後はアフリカが欧州の新たな注目となりそうだ。
(ミラノでインプレス代表川上淑子)




