エイガールズ/欧州の縫製企業と連携へ/生地輸出の新しい形

2019年07月16日 (火曜日)

 【ミラノ=桃井直人】ニットメーカーのエイガールズ(和歌山市)は、欧州の縫製メーカーとの連携を強める。縫製メーカーがトップメゾン向けの製品を作る際、同社の生地を使って付加価値を高めるという形で協業する。山下智広社長は「双方に利点がある。生地輸出の新たな在り方」と強調し、イタリアなどの2社と取り組む。

 トップメゾンの仕事を受ける縫製メーカーに高付加価値生地を提供し、縫製メーカーはその生地で製品を作り、顧客であるトップメゾンに提案する。今年2月に発効した日EU・EPA(経済連携協定)を活用すれば、価格面で生地供給のハードルは下がる。

 2年ぶりに出展した「ミラノ・ウニカ(MU)20秋冬」の同社ブースに縫製メーカーが訪問し、話が進んだ。これまでつながりが希薄だった縫製メーカーがパートナーになり、MUでピックアップが多かった、超ストレッチ裏毛、カシミヤのボア、ポリエステル使いのビッグワッフルなどを提供する。

 イタリアとポルトガルのメーカー2社との取り組みからスタートする。7月中に生地を送るとし、製品サンプルは9月に提案される予定。順調に推移すれば連携する縫製メーカーの数を増やす。トップメゾンへ直接の生地訴求はこれからも継続するが、生地輸出の新しい形として期待する。

 イタリアの大手セレクトショップが2018年12月に廃業するなど、欧州のファッション市場は勢いを欠いた状況が続いている。そのような状況下で生地を拡販するには「これまでとは違う発想が不可欠」と判断し、「欧州に多く存在する縫製メーカーとの連携が突破口になる」と考える。

〈セーレン/欧州市場の開拓を加速/意匠性高いニットなど軸に〉

 【ミラノ=桃井直人】セーレンのビスコテックス・ファッション事業部は、欧州市場の開拓を加速する。経編み地の「プリモーディアル」がドイツのファッションブランドに採用されたほか、高密度のアウター用生地にも注目される。これらの高付加価値品を基軸に幅広い生地をそろえ、顧客への訴求を強める。

 プリモーディアルは、コンピュータージャカードで複雑なデザインを可能にした経編み地。自由度の高い意匠性が評価を得るほか、通気コントロールやツーウエーパワーコントロールなども特徴だ。イタリアの服地見本市「ミラノ・ウニカ」(MU)などへの出展を通じて認知度が高まり、採用も増えてきた。

 MUには継続出展しているが、4回目の参加となった今回展(20秋冬展)は単独でブースを構えた。「グローバル販売に力を入れるという意志の表れ」と強調し、提案商材も充実。プリモーディアルはカレンダー加工との組み合わせや糸の工夫で光沢感を付与するなど進化させた。

 高付加価値品では、ナイロン・ポリエステルの割繊糸を使った高密度織物「テクノアート」、フリーカッタブルニット素材「フレックスムーヴ」などを打ち出した。インナーやスポーツ用途で人気のフレックスムーヴは生地厚などを工夫し、ジャケットやボトム用途への浸透を目指す。

 そのほか、生地値が1メートル当たり6~15ユーロで比較的手に取りやすい生地もそろえた。グループのKBセーレンの糸や加工技術で風合いに変化を与えた生地を広くラインアップし、ブースでは異収縮混線糸を使って独特の表情を付与した生地やキュプラ繊維を用いた生地を並べた。