ITMA2019レビュー(2)/革新紡機への流れ加速

2019年07月17日 (水曜日)

 精紡機ではリング紡で「さらなる生産性向上が難しい領域に近づいている」とされる中、革新紡機への流れが加速した。エアジェット紡績機への参入企業が増えたほか、豊田自動織機が新コンセプト機の提案を行った。

 豊田自動織機が打ち出したのはポット精紡の技術を応用して開発した「ヘリックス」。基の技術となるポット精紡は、容器(ポット)を高速回転させ、遠心力で撚りを与えて内壁に巻き取っていく手法だが、まだ事業化に成功した機械メーカーはないという。同社が開発したコンセプト機では、リング精紡と同等以上の糸品質で生産性は2倍以上。ITMA会場では限られたユーザーにだけ披露したが、市場のニーズに合致しているとの感触を得たようだ。

 エアジェット型は村田機械、リーター(スイス)のほか、サウラー(ドイツ)やラクシュミ・マシン・ワークス(インド、以下LMW)が新たに参入するなど流れが加速した。

 先頭を走る村田機械の渦流精紡機「ボルテックス」は最高速度を10%引き上げ、毎分550メートルでの安定稼働を実現した「ボルテックス870EX」を発表した。可紡範囲も広がっているほか、ツルッツラーと協業で前紡工程での効率化も実現。レーヨンで従来の連条3回を1回で紡績可能としたもので、ポリエステル・レーヨン混などでもテストを進めているという。

 ボルテックスは人手不足や電力費上昇などに対応する機械として注目度を高めるが、今後は「サステイナビリティー(持続可能性)」を視点にした訴求も強める。例えば海洋プラスチック問題に対しては、リデュースの視点から、毛羽がリング紡の半分以下で洗濯時の脱落繊維を大幅に抑えるほか、長繊維を芯にしたコアヤーンの幅を広げるなどで貢献する。衣料品の大量生産・大量廃棄問題についても、切り替え能力が高く、無駄なモノ作りを省ける機械としての訴求できる。

 欧州勢ではリーターがエアジェット紡績機「J26」に改良が加え、100%綿で実演。サウラーは新型エアジェット紡績機「オートエアロ」を発表した。

 サウラーのオートエアロは開発から販売まで1年半という短期間で事業化に成功。オープンエンド機の「オートコロ」をベースとし、部品の約70%をオートコロと共通化している。会場ではレーヨン(20番手)、ポリエステル・綿混と綿100%(ともに30番手)で実演したが、初日だけでメキシコなど数台成約。トルコのウカク・テクスティルでオートエアロが稼働している。

 LMWもエアジェット紡械を展示した。最大ドラム数が200、最高速度が毎分550メートルという。会場ではレーヨン、ポリエステル、ポリエステル・レーヨン混などを30番手で実演。半年後に販売開始を予定する。