「MU20秋冬」生地輸出の新たな形(後)/変化で市場を動かす
2019年07月19日 (金曜日)
「備蓄販売を当てにする顧客が増えていると感じる」――出展者の一人はそう話した。ファッション市場の低迷が続く中で、「トップメゾンを含めて、リスクを避ける傾向が強まっている。EC(電子商取引)専門アパレルも増加し、小ロット・短納期が“使える機能”として認識されるようになった」と強調する。
生地備蓄機能の認知向上は出展者が継続的に訴求してきた成果が顕在化したものだ。生地商社の北高(大阪市中央区)は「今回の『ミラノ・ウニカ』(MU)では、最小ロットを問われる回数が多かったように思う。昨年の7月展や今年の2月展ではほとんどなかったこと」と言う。
日本コーナー「ザ・ジャパン・オブザーバトリー」(JOB)では、スタイレム、瀧定名古屋、サンウェルなどのブースがにぎわいを見せたが、これらは備蓄販売に取り組んでいる企業。ただ、瀧定名古屋が「備蓄販売は機能の一つ。最大の売りは企画提案力」と話したように、別の強みを持っているのも確かだ。
とはいえ、「備蓄機能は新規顧客とのファーストコンタクトには有効」(スタイレム)であり、先染めスレン高密度織物を販売するスタイルテックス(東京都中央区)は、4品番で備蓄販売を始めた。スエード調人工皮革「ウルトラスエード」を並べた東レも、「対応できる商品は積極的に応じる」構えを見せた。
他方で「高付加価値と高コストが一緒になっている」「高額品だけではスポット採用で終わり、継続性がない」との指摘もある。そうした声に応じたのがセーレンだった。複雑なデザインが可能な経編み地「プリモーディアル」などだけでなく、生地値が1㍍当たり6~15¥文字(G0-ACAC)で比較的手に取りやすい価格帯の生地もそろえた。
ファッション市場が勢いを欠く中で、価格抑制は不可欠と言えるかもしれない。他の日本企業も模索はしているものの、日本の良さが出しにくいのも事実。「価格を抑えるならば、同じくMUに出展している韓国勢の生地でいい。もっと言えば中国や東南アジア産で十分」と話す出展者は少なくなかった。
そのほかにも生地輸出拡大に向けた多様な挑戦があった。ニットメーカーのエイガールズ(和歌山市)は、欧州縫製メーカーとの連携を強める。トップメゾンに製品の提案を行っている縫製メーカーは多く、そうしたメーカーに生地を供給する。「双方に利点があり、生地輸出の新たな在り方になり得る」と語った。
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イタリアの18秋冬シーズンは暖冬の影響で衣料品が売れなかったといわれる。同国に進出する日系企業が、「ビエラ地方の大手生地メーカーは2019年の生産を18年比25~30%減と予想している」と指摘するなど、市場低迷は続く気配だが、変化のスピードも速い。日本企業の戦略の転換が市場を動かす可能性はある。
(おわり)




