再生セルロース繊維と綿製品リサイクル/コットンを再生原料に/セルロースの循環経済実現へ

2019年07月31日 (水曜日)

 マイクロプラスチックによる海洋汚染への懸念などから世界的に“脱・プラスチック”の潮流が強まったことを背景にレーヨンやリヨセルなど生分解性のある再生セルロース繊維への注目度は高い。こうした中、コットンを再生セルロース繊維の原料とするなど綿製品のリサイクルとの連携の可能性が出てきた。(宇治光洋)

 再生セルロース繊維は、木材など自然界に存在する天然のセルロースを化学的に再生して繊維化する。このため化学繊維でありながら天然由来繊維であり、生分解性などを持つ。近年、繊維製品分野でも“サステイナビリティー(持続可能性)”への要求が高まったことで、合成繊維の代替として再生セルロース繊維を使う機運が生まれた。

 こうした流れの中で、綿製品のリサイクルに再生セルロース繊維を位置付けようという構想が生まれる。例えばダイワボウレーヨンの福嶋一成社長は、「今後、レーヨンは『化学繊維』ではなく、『セルロースファイバー』としてコットンなどと同じカテゴリーの素材として認識されるようにならなければならない」と強調した上で、「綿製品の再生を含めてセルロースリサイクルの仕組みを作りたい」と話す。

 再生セルロース繊維は、原理としてセルロースを大量に含む物質ならパルプ化することで原料として活用が可能。例えばオーミケンシはこれまでも、ケナフや折り鶴として使用された紙などをパルプ化し、原料として再利用したレーヨンを商品化している。レーヨン製造の技術を応用すれば、使用済み綿製品や生産工程で端材として発生する綿糸・綿布を再生セルロース繊維の原料として活用できる。

 こうした構想は綿紡績など綿製品メーカーにも大きな意味がある。綿製品でもリサイクルは大きな課題だが、従来は反毛にして紡績糸や不織布の原料とするぐらいしか再利用の方法がなく、反毛使いは品質や物性面で制約が多い。しかし、再生セルロース繊維の原料として再利用する場合、パルプ化して使用するため品質や物性面で汎用性が高まる可能性がある。

 こうした取り組みは海外メーカーが実用化で先行する。レンチングはグローバルSPAなどと連携して綿製品の製造工程で発生する廃棄綿布を原料とするリサイクルリヨセル「リフィブラ」を商品化し、ザラやリーバイス、パタゴニアなどに採用された。世界の有力デニムメーカーやデザイナーと共同で製品コレクション「ミッドナイト・ブルー・カプセル」も発表し、“サステイナブル・ファッション”素材としてリフィブラを打ち出す。

 ダイワボウホールディングスの斉藤清一取締役兼常務執行役員繊維事業統括は「繊維産業は今後、廃棄物のリサイクルまで含めたサプライチェーンを考える必要がある。その際に重要になるのが、既存概念を超えた再生原料の活用や生産プロセスの革新」と指摘する。再生セルロース繊維と綿製品リサイクルが結び付くことでセルロースファイバーの“サーキュラー・エコノミー(循環経済)”が実現する可能性が浮上した。