学 講演会より/「インド生産を成功させるために」

2019年08月20日 (火曜日)

 インドのアパレルとホームファッションを紹介する「第5回インドトレンドフェア東京2019(ITF)」が7月下旬、東京都渋谷区のベルサール渋谷ガーデンで開催された。期間中には、日印の繊維産業関係者が交流を深める「インドテキスタイル産業『ビジネス動向と発展』」セミナーも開かれた。その中で、検査機関としていち早くインドに進出した、ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)事業推進室の岩田純治プロジェクトマネージャーが、現地生産を成功させるポイントを語った。要旨を紹介する。

〈極めて高い将来性〉

 インドの国土面積は328万7263平方キロメートルで、日本の約8・8倍に及ぶ。首都はデリーで、公用語としてヒンディー語、タミル語、英語などが使われている。

 人口は2018年時点で世界第2位の13億5千万人超で、22~30年の間にも中国を抜いて世界一になると見込まれる。

 特筆すべきは、15歳から64歳までの生産年齢人口が45年まで増え続けることだ。国内の消費拡大も期待できるため、ビジネスを展開する上での将来性は極めて高い。

 さらに、特恵関税制度により、ほぼ全ての繊維製品の関税が無税化されているメリットも大きい。

〈国土全域に広がる産地〉

 古くは英国・東インド会社が綿織物を積極的に買い取っていたという史実に示される通り、インドは世界有数の綿花の産地として知られる。16年、17年と世界1位の実績を残している。

 主な産地には、デカン高原を擁するマハーラーシュトラ州やグジャラート州が挙げられる。デカン高原の南側では、紡績産地が発展している。

 国内では素材ごとに産地が分かれ、素材の種類は気候と密接に関わる。

 最北に位置するアムリトサルはウール素材が盛ん。同じ北部のルディアナはカットソーと冬物生地全般が作られている。パニーパットはホームテキスタイルやホームファニシングの産地。ニッセンケンが事業所を置くジャイプルではスクリーンプリントが行われている。

 東部のコルカタはカディやシルクで有名。

 西部では、ポリエステル、綿100番手双糸・200番手双糸、デニム生地のアーメダバード、ポリエステル生地全般のスラトが主な産地とされる。

 南部は繊維関連の産地が集積する。かぎ針編みのナルサプールや40番手単糸×40番手単糸のナガリ、先染めや40番手双糸のサーレム、先染めやプリントのイーロードウなど、多彩な技術と素材が各地に存在する。日系自動車メーカーも進出しているバンガロールではシルクが製造され、ボトム工場も稼働する。

 私が最も面白いと見ているティルプルは、カットソーの産地としての存在感が高まっている。

 コインバトールは紡績産地であり、カルールはホームテキスタイル、ホームファニシング、秋冬素材、20番手双糸と幅広い産品がそろう。マドライではタオルやアンダーウエアが作られている。

 なお、インドでは、手織り織機「ハンドルーム」、力織機「パワールーム」、自動織機「オートルーム」が使用されている。プリント染色では、デジタルプリントが普及する一方、ハンドプリント、手捺染の技術が根強く残っている。機械捺染やロータリープリントに加え、無地染色のジガー染色も盛んに行われている。

〈工場の選定が最も重要〉

 インドの生産を成功させるには、まず現地の生産背景を把握しなければならない。サンプルを1枚作らせ、その商品の生地や付属品の生産背景を確認する。最初は1型のサンプルに時間をかけて打ち合わせをする。

 最初の工場の選定で、そのオーダーが成功するか9割方決まってしまう。いくら打ち合わせを重ねても、その通りに生産してくれない工場が多数存在するのが現実だ。

 納期を十分にとり、時間をかけて一つ一つ確認しながら工程を進めることも心掛けてほしい。混率の検査確認から洗濯ネームの発注、生地検査の確認から裁断の進行というように、確認を徹底する。納期のないオーダーは特にリスクが伴う。

 閑散期を狙ってオーダーするのも有効な手段だ。インドは夏物しか生産されていないと言っても過言ではない。7~10月の閑散期は大半の工場が縫い子を放出し、縫製をストップする。従って、この時期のオーダーは、値段が厳しくても受ける傾向にある。

〈ニッセンケン インド・ジャイプル事業所/現地生産を多方面からサポート〉

 ニッセンケンのジャイプル事業所は、日系の試験機関として、インドで初めて試験業務を開始した。現在は6年目。

 試験にとどまらず、試験後のモノ作りに関するサポートや信頼できる工場の紹介など多様なサービスを提供してきた。その結果、依頼件数は順調に推移している。

 JIS規格に関する試験に加え、国際標準化機構(ISO)の規格に合致した欧米向けの試験メニューにも対応する。さらに国際的な信頼を受ける試験機関の証しとされる「ISO17025」も取得した。

 ニューデリーとパニーパットにも営業拠点を設置し、きめ細やかなサービスとアフターフォローを提供する体制を整えている。