紡績の開発最前線(下)/設備高度化と革新技術導入

2019年08月23日 (金曜日)

 高い競争力を持つ商品開発の大前提となるのは、生産設備と革新技術の導入にほかならない。紡績各社とも近年、生産設備の更新・高度化の動きを加速させており、革新プロセスの導入や実験も本格化しつつある。こうした取り組みは特に染色加工工程で目立ち、世界的に要求が高まるサステイナビリティー(持続可能性)の実現にもつながる。

 富士紡ホールディングスの紡績・加工事業会社であるフジボウテキスタイルは、染色加工の和歌山工場(和歌山市)で液流染色機を最新鋭の低浴比タイプに順次更新している。新鋭機による加工品質向上だけでなく、染料や水使用量の削減につなげる。ニッケは印南工場(兵庫県加古川市)にイタリア製の最新鋭連続ロープ洗絨(じゅう)機を導入した。日本初の導入となる。独創的な機構によって独特の風合いが可能になるほか、連続加工による品質や生産性の向上も実現する。

 革新的な加工技術の開発も進む。トーア紡コーポレーションは衣料事業子会社の東亜紡織がソトー、森保染色(愛知県一宮市)と共同開発したウールの次世代非塩素防縮加工「ライフファイバーEFT」の実用化を進める。現在、ソトーの工場内に設置したパイロットプラントで加工したウールで製品ブランド「ONU」を展開するほか、海外の羊毛加工大手に加工技術を供与し技術指導料や特許権使用料を得る事業に育てることを目指す。

 ダイワボウノイは、綿に対するカセイソーダ非使用染色加工技術を開発した。強アルカリであるカセイソーダを使わないことで廃水の中和工程が不要になることで環境負荷が低減できるほか、アルカリに弱いウールやシルクとの複合素材の加工にも応用できる。超臨界染色によるポリプロピレンの染色加工の実験も設備を保有する海外企業と連携してスタートさせた。

 繊維製品のリサイクル・アップサイクルの取り組みも注目。クラボウは縫製工程で発生する裁断くずなどを原料として再利用する「ループラス」を展開する。ダイワボウレーヨンは綿などセルロース繊維を再生セルロース繊維の原料として再利用する構想を持つ。こうした取り組みも今後、ますます大きな意味を持つことは間違いない。

(おわり)