クラボウ/新ビジネスモデルを構築/海外はタイ中核に最適供給体制

2019年08月28日 (水曜日)

 クラボウの繊維事業部は中期経営計画初年度の目標達成に向けて新しいビジネスモデルの構築に全力を挙げる。繊維事業部長である北畠篤取締役兼常務執行役員は「次の10年に向けた戦略を実行する。従来型の糸・生地販売ではなく、ユーザーとの価値共創型のモノ作りを進める」と強調。海外事業に関してもタイ子会社を起点にアジア市場での最適供給体制の構築を進める。

 繊維事業は2019年度第1四半期(4~6月)決算で営業損失となった。クラボウ単体では売上高、営業利益とも前年同期比横ばいだったが、タイ子会社が綿花高とバーツ高で苦戦。商事子会社のクラボウインターナショナルも主力のカジュアル衣料の市況低迷で振るわなかったことが利益を圧迫した。

 北畠取締役は「既存のやり方の延長線上では繊維事業の今後は極めて厳しい」と強調する。このため今期からスタートした中期経営計画の重点戦略に掲げる「新しいビジネスモデルの構築による高付加価値商品の拡販」を一段と加速させる。特に単純な糸・生地・製品販売だけでなくユーザーと価値共創型のビジネスモデル構築の力を入れる。

 例えば熱中症対策のスマート衣料・システム「スマートフィット」はユーザーのニーズやデータを恒常的にくみ上げることで機能や解析アルゴリズムを順次アップデートする仕組みになっている。収益化もウエアの販売だけでなくサブスクリプション(継続課金)型とするなど新たな方式を導入した。縫製工程で発生する裁断クズを再資源化し製品に再生する「ループラス」もパートナー企業との協働で新たな価値を創造する試みとなっている。こうした新しいビジネスモデルの拡大に取り組む。

 海外事業に関してはタイ子会社のタイ・クラボウを“セカンド・ヘッドオフィス”と位置付け、インドネシアやベトナムの関係会社との連携を強化する。ベトナムには18年にクラボウ・ベトナムを設立し、現地協力工場への技術指導で紡績から染色加工、縫製まで一貫生産できる体制を整えた。こうした基盤整備を生かし、タイ・クラボウが営業活動や生産統括の中核となってアジア市場での糸・生地・縫製品供給を最適化することを目指す。