特集 カーペット(1)/好環境下も盛り上がり今一つ
2019年09月17日 (火曜日)
国内カーペット市場は、ホテルや商業施設などコントラクトを中心に堅調さを見せる。ただ2019年のオフィス用途は8月まで前年並みか、やや前年を下回っているもよう。家庭用途は引き続き苦戦している。
〈ホテル用途が堅調/冷感ラグ伸び悩み〉
あるカーペット製造業の首脳は2019年度のカーペット市場動向について「人手不足などが影響し、大きくブレークすることはないだろう」と19年初に話していたが、その言葉通りに推移しているようだ。
日本カーペット工業組合のまとめによると、19年1~6月のタフテッドカーペット累計生産量(速報値)は、前年同期比3・4%減の2286万平方㍍。生産量の6割を占めるタイルカーペットは1・2%増と前年を上回っているものの、ロールや帖物・ラグ、折タタミ、車両用ラインなどが前年を下回っている。
用途別では、訪日外国人の増加や20年の東京五輪・パラリンピックを受けた新設・増設ラッシュが続いているホテル向けがけん引する。ロールやタイル、フックカーペット、織カーペットなどが動いている。商業施設用途も堅調のようだ。
首都圏を中心としたオフィスを含む大型再開発案件も数多く進行しているが、オフィス用途は前年並みか、やや前年を下回っているカーペット製造企業が目立つ。その要因には、建設関係の人手不足による工期の遅れ、元請の受注活動に調整機能が働いている点などが指摘されている。
家庭用途は引き続いて厳しい。カーペットを含む春夏商品にとって6、7月は、本来なら夏物の山場を迎える時期。しかし、今年は様相が異なった。気温が上がらず、冷感ラグをはじめとした夏物が苦戦した。気温が上がった7月末から盛り返したが、全般的に18夏シーズン比の売り上げを下回ったとみられる。
その中で、利益率は改善している。インテリア上場企業の19年4~6月期は、原材料や輸配送のコストアップを受けて前年から取り組んできた価格改定が浸透するなどして増益が大勢を占めた。
サンゲツのインテリア事業は増収増益。営業利益が前年同期比69・7%増と大幅に伸びた。18年10月1日受注分から壁紙・床材・カーテンの価格を15~20%上げるとして改定を進め、値上げ効果が利益を押し上げた。
東リのプロダクト事業も増収増益。経常利益は12・5%増だった。18年6月に塩ビ系床材とタイルカーペットを中心とする製品全般の取引価格を10~15%程度引き上げる方針を示して浸透を図った価格改定や、基幹システム更新による業務効率化などの取り組みが奏功した。
複数のカーペット製造企業は19年度業績について今年4月、前年度並みか微増収を見込んでいた。現時点で大きな修正はなく、計画通りと言えるが、コントラクトを中心に好環境下にある中で、ピークの山ができず、波に乗り切れていないとの見方もある。
〈東リがナイロン紡糸機/内製化一段と進む可能性も〉
素材では、カーペット用BCFナイロンを巡って動きがある。後染めの白糸よりも、顔料を添加して糸に色を付ける原着糸が世界のカーペット糸の主流になる中で、国内BCFナイロンでトップシェアを持つとされるインビスタ ジャパンが19年末をめどに白糸の一部生産を終了する。それを受けて白糸使いを強みにしてきた国内カーペットメーカーを中心に対応を迫られている。
米国のカーペット製造企業では糸の内製化が進んでいる。その流れを踏まえて、東リは2020年1月にナイロン紡糸機1台(2系列)を導入する。カーペット用糸の安定的な確保や糸からの差別化を図るため、「将来を見据えた判断。そこ(糸生産)にトライしていかないといけない」(永嶋元博社長)として紡糸の一部内製化へかじを切る。
ただ内製化するのは原着糸で、白糸は引き続き外部調達する。インビスタ ジャパンに代わる調達ルートの確保にある程度のめどが付いたという。
永嶋社長は「後染め、原着糸使いを並列でできるようにし、それぞれの良さを生かす製品開発を進める」考えを示している。
住江織物のグループ会社、住江テクノも紡糸機4台を保有しており、そのうち1台をカーペット用ナイロン6原着糸用に充てている。5年ほど前から研究を進め、一部自社製品の糸に採用していると言う。
米国のカーペット製造企業のように国内でも内製化が一段と進むのか。岐路に立っている。
〈「ドモテックス」/世界の床材産業を支える〉
じゅうたん・カーペット・フロアカバリング産業の専門展示会「ドモテックス」が、来年も世界各地で開催される。年明け1月10~13日にはドイツのハノーバー国際見本市会場で開かれ、米国・アトランタ(2月)、中国・上海(3月)と続く。
30年余りの歴史を誇るドイツ本国の同展は、19年に61カ国・地域から1407社が出展し、3万1107人が来場した。来場者の67%がドイツ国外からで88%が購買決定権者。出展者の76%が「ターゲットとコンタクトできた」、73%が「次回も出展したい」と答えるなど盛況だった。20年も洗浄技術や機械・工具・技術ソリューション、屋外用製品など関連分野を含めて展開する。
2回目となる「ドモテックスUSA」は北米唯一のフロアカバリング展として注目され、中国の「ドモテックスアジア/チャイナフロア」は前回、出展者1579社(うち中国国外301社)、来場者6万6875人(同1万5092人)を記録。来場者数は18年比約11%増えた。
出展、来場など各展の問い合わせは日本能率協会 産業振興センター ドイツメッセ代表部まで。