デジタルシステム・ベンダー 繊維業界への提案/デジタル接客を適正に評価する仕組みで カリスマ販売員復活、そして店舗再生へ/バニッシュ・スタンダード「STAFF START」
2019年09月30日 (月曜日)
サービス開始から3年で、導入ブランド数700、年間流通総額288億円を達成した「STAFF START」。店舗販売員によるデジタル上の接客や業務をアプリケーションで簡易化し、さらにその評価まで行えるサービスだが、なぜここまで成長しているのか。
同サービスを提供するバニッシュ・スタンダード代表取締役の小野里安寧氏は、「ネット通販だけでは、ブランドが提供する体験や価値を十分に伝えることはできません。やはり店舗での購買体験が大切にされるべきです」と話す。
手軽に商品を購買できるネット通販は着実に拡大してきたが、一方で店舗販売員へのしわ寄せも生じている。例えば、利益率の高いネット通販を伸ばすために従来の業務に加えてネット通販サイトや会員制交流サイト(SNS)などへの投稿といった作業が増えた。ネット通販と比較して利益率の低い店舗では、販売員の数も削減されている。給料は上がらないのに、業務だけが増える状況と言える。販売員のモチベーションは下がり、優秀な人材が辞めていく。店舗のサービス品質も落ちていく……。こうした悪循環を変革するために開発されたのがSTAFF START。
STAFF STARTは、アプリケーションとブランドのネット通販サイトが連携し、店舗の販売員によるネット通販サイトへのコーディネート投稿やコメントの記入を簡易化する機能を備えている。投稿は販売員個人のSNSにも同時に行える。
STAFF STARTのアプリケーションによってコーディネートの投稿などが手軽にできるようになるのだが、肝はそうした投稿を経由したネット通販サイトでの売り上げが、投稿した販売員の成績として計測できる点にある。
例えば、ある販売員が商品Aを使用したコーディネートをネット通販サイトに投稿し、そのコーディネートのページから商品Aが購入された場合、その売り上げは投稿した販売員の成績として計測される。STAFF STARTのアプリケーションや管理画面からは、そうしたデジタル接客による売り上げの成果を販売員自身が確認できるようになっている。「販売員の業務を適正に評価する仕組みを構築できるのです」(小野里氏)
ネット通販やSNSなどを通じたデジタル接客の成果が適正に評価され、自身でもその成績が確認できるようになると、販売員のモチベーションは劇的に上がる。そうなると、さらにデジタル接客に力を入れるようになる。そして、SNSでのフォロワーが増え、カリスマ的な販売員が生まれる。そのカリスマ販売員に接客してもらおうと、店舗にまで足を運ぶ客が増え、結果として店舗の売り上げも上がる。
STAFF STARTが生み出すのはこうした好循環であり、サービス開始から3年で導入ブランド数700という数字がその効果を裏付けている。多大な実績を積み上げているSTAFF STARTは今後、アパレル以外の業界にも展開していく。