技術の眼

2019年10月01日 (火曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKK/薄地の縫製収縮を軽減〉

 薄い生地やストレッチ素材の縫製に適した画期的なファスナーが開発された。YKKの縫製収縮軽減テープ(ウェーブレス)を使用したビスロンファスナーで、来年1月から№3サイズでの販売開始を目標に準備を進めている。

 スポーツやアウトドア分野の薄い生地、ストレッチ性のある生地にファスナーを縫製するとき、縫製収縮(パッカリング)が生じることがあった。ミシン糸が生地を締めて縫い縮みを引き起こすのが要因。このため、現場では熟練工が手わざを駆使していたが、熟練工の減少に伴い「ファスナーでパッカリングを防止できないか」というユーザーの声が強まった。

 YKKはファスナーのテープ部を波打たせることで、縫い縮みを防げるのではないか、という逆転の発想で開発に取り組んだ。テープの縫工部を高密度組織にして波状を形成、最適な織り方と密度を探し求めて開発に成功した。

〈ニコンシステム/ささげ業務向けシステム展開〉

 ソフトウエアの開発などを行うニコンシステム(東京都品川区)は、ささげ業務(撮影、採寸、原稿作成)を効率化するシステムの本格販売を始めた。パソコンに接続したカメラで商品を撮影するだけで採寸と画像生成ができ、電子商取引(EC)の業務効率改善などにつながる。

 新展開の「SAI SOON(サイスーン)」は、ECバックヤードを支援するシステム。独自開発の人工知能(AI)が服の種類に応じて採寸ポイントを自動で判別してサイズを計り、同時に商品画像を出力してECサイトに素早く掲載できる。撮影画像から採寸データの修正や異なる箇所の採寸も可能。

 EC事業担当者の作業は、服をハンガーに掛けてサイスーンのナビゲーションに従って商品を撮影するだけ。工程がシンプルなため、ささげ業務の高速化につながる。通常のささげ業務にかかる時間と比較すると2分の1から3分の1に短縮できる。

〈ZOZO「ゾゾタウン」/類似アイテム検索機能導入〉

 ファッション通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOは、AI(人工知能)を活用する「類似アイテム検索機能」を追加した。各商品画面上にある画像検索アイコンをタップすると、閲覧商品の形・質感・色・柄などを基にAIが似ている商品を検出する。

 一つの商品を起点にして、「これと似た色の服をチェックしたい」「こんな柄の服がほしい」といった検索ニーズがある一方、色や形を表現する言葉が人によって異なるため、イメージする商品にたどり着けないことがあったと言う。

 同機能の導入で、ユーザーは商品を再検索する必要がなく、ニーズに合致する類似商品を比べることが可能。同社が行った先行テストでは、利用者は非利用者と比較しサービスの滞在時間が4倍以上長く、利用率の向上につながった。

〈ウエルズ/極限まで抑制の制菌加工〉

 洗い加工のウエルズ(岡山市)はこのほど、繊維に付着する細菌を極限まで抑制する制菌加工「ナノウィー」を打ち出した。「繊維上の細菌を99.9%以上生存不能にする効果が実証されている」(山下宏平社長)と言う。一般的な抗菌防臭加工よりも高い抗菌力を備える製品加工ができるため、ジーンズだけでなくワークウエアなど幅広い用途へ提案できる。

 ナノウィーは微粒子化された酸化亜鉛超微粒子が原料で、ナノレベルの微粒子が繊維の奥まで潜り込み、持続性の高い制菌効果を発揮する。酸化亜鉛超微粒子から発生する過酸化水素が付着する細菌の細胞にダメージを与える。これは人間の体内で行われる殺菌作用と同じで「肌に対する安全性が高く、自然環境にも優しい」安全な加工となる。

 綿100%のほか、ポリエステル綿混、ポリウレタン混のストレッチ素材に対応。素材の色や風合いを変えることもない。洗濯耐久は約30回。

〈フィセル/空気を入れる授乳クッション〉

 ベビー用品を企画・販売するフィセル(愛知県蒲郡市)は9月下旬から、空気を簡単に出し入れできる独自の授乳クッション「エアプッション」を販売する。中わたの代わりに空気を入れることにより、持ち運びや収納を楽にした。胴体にはめたまま、ボタン一つで空気を抜いて張力を緩められるため、クッションの位置を自在に調節できる。

 授乳クッションは、授乳の時に乳児を下から支えるため、母親の胴体にはめて使う道具。一般的には中わたを詰めた製品が多い。

 エアプッションは、空気を封入する本体に綿100%のカバーをかぶせる構造となっている。本体の素材は表面がポリエステル、内部がTPU(熱可塑性ウレタン)で、空気穴とボタン式のポンプを内蔵した。

 空気を入れる時に、空気穴に口を付けて息を吹き込んだりしないため衛生的に使用できる。浮き輪などを膨らませるのに使うポンプを別個に用意する必要もない。

〈帝人/消防隊員へ新システム〉

 帝人は、消防隊員向けのモニタリングシステムを開発した。熱中症を起こしにくくするために消防隊員が行っているトレーニングに応じるシステムで、センシングデバイスを用いて深部体温を予測して、トレーニング内容の適正状況を可視化する。2020年度にレンタルで展開を始める。価格は1人月間5千円。

 炎から身を守るために防護衣料を重ねて着用する消防隊員は全国で11万人いるとされるが、熱が蓄積されることで熱中症を引き起こすケースがある。事前策として暑さに体を慣らすための暑熱順化トレーニングなどが実施されているが、この暑熱順化によって深部体温が低くなると、体熱が逃げやすいといわれる。

 新モニタリングシステムは、同社と大阪市立大学が消防局などの協力を得ながら蓄積したデータを活用し、独自のアルゴリズムでトレーニング中の深部体温を予測する。これによって熱中症のリスク予知を行う。