台湾の繊維企業/原料一貫、供給力強みに/スポーツ、アウトドア向けサステイナブル素材を進化

2019年10月10日 (木曜日)

 台湾の繊維企業が、スポーツ、アウトドア向けのサステイナブル(持続可能な)素材を進化させている。7~9日に台北市内で開かれた「2019台北紡織展(TITAS)」では、同素材の新商材が目白押しとなった。原料からの一貫生産や供給力を強みに、世界の大手ブランドへの提案を加速している。(岩下祐一)

 合繊の原料である石油化学原材料からグループで一貫生産し、大きな生産背景を持つことを強みに、幅広いサステイナブル素材を開発するのが繊維大手の遠東新世紀と、台湾塑膠工業(台湾プラスチック)傘下で合繊織物製造最大手の福懋興業(フォルモサ・タフタ)だ。

 遠東新世紀は今回展で、ペットボトルの回収から自社一貫で手掛けるリサイクルポリエステル繊維「トップグリーン」を前面に打ち出した。水を使わずCO2で染める超臨界二酸化炭素流体染色のポリエステルのニット生地や、「アディダス」に提供する海洋廃棄プラスチックを使ったリサイクル糸、非フッ素系撥水(はっすい)加工を施したナイロン66の服地なども紹介した。

 福懋興業は、廃棄漁網を原料とするリサイクルナイロン生地を披露。「パタゴニア」と2年の独占販売契約を昨年結び、このほど提供を始めた。1年目は原糸200㌧規模になるもよう。超臨界二酸化炭素流体染色のポリエステル布帛生地や、原着糸の織物なども披露した。これらは台湾、ベトナム、中国大陸の3拠点で生産しており、大きな供給力を持つ。李敏章総経理は「リサイクルポリエステル素材と原着糸使いの販売が今年伸びている」と話す。

 個性的な原料で来場者を引き付けたのが、環境配慮型の機能素材メーカー、興采実業(シンテックス)と、合繊メーカーの力鵬企業(リボロン)。

 興采実業は、コーヒーかすを再生ポリエステルに分散させることで、消臭、涼感、紫外線防止、速乾の機能を持たせる「S.カフェ」と、伊藤忠商事のケミカルリサイクルポリエステル「レニュー」を組み合わせた「レニュー×S.カフェ」を前面にアピールした。今年10年目を迎えたS.カフェは、欧米のアウトドアブランドを中心に約110ブランドが採用する。「レニューを組み合わせることでS.カフェをさらに進化させる」と陳国欽董事長は意気込む。

 力鵬企業は、廃棄処分されているカキ殻を使った、静電気防止や制菌などの機能を持つ新素材を紹介した。

 糸染めから織布、製品まで一貫展開する南緯実業は、原着糸「イカラー」を打ち出した。従来はポリエステルのみだったが、ナイロンをこのほど追加。2千色をラインアップしていることを訴求した。

 加工糸メーカー、宜新実業は、生分解性ポリエステル繊維を初披露。ポリエステルに米メーカーの特殊な化学品を加えることで生分解性を付加するもので、今回展を機に提案を本格化する。

 サステイナブル素材を使った機能性生地も充実してきた。ニット生地のコンバーター、崇躍実業は、サステイナブル素材に特化して生産する富勝紡織の廃棄魚網を使ったナイロン素材の抗ピリング性を持つ生地をアピール。高機能生地メーカーの佳紡国際貿易は、原糸段階で高いUVカット性、抗菌性を持たせた素材「リッチ・ヤーン」のリサイクルポリエステル使いを紹介した。