繊維ニュース

商社のサステ提案/コスト理解浸透が今後の鍵/原料から姿勢まで切り口は多様化

2019年10月15日 (火曜日)

 商社のサステイナビリティー(持続可能性)提案が加速している。「日本の消費者はまだその意識が低い」とされるものの、“先行投資”の意味合いも込めて各社が提案、打ち出しに躍起。過去にも環境配慮商材が注目された時期は幾度もあったが、そのたびにブームは終息した。今回のそれはブームとは相反する「持続可能」をテーマしており、全世界的な機運であるため、「一過性のブームにはならないだろう」との見方も現時点では一致する。市場浸透の鍵を握るのは、高コストへの理解度、あるいは低コスト生産の実現になりそうだ。

 商社のサステイナブル商材は、原料、糸、生地が軸。これまでも再生ポリエステル糸やその生地、原着糸などの環境配慮商材を販売してきた蝶理はこのほど、再生ペレット販売事業を開始すると発表した。廃ペットボトルの回収、洗浄、粉砕、ペレット製造を手掛けるウツミリサイクルシステムズ(大阪市中央区)に、蝶理が購入して独自改良したペレット押出機を貸与する形で実現した。

 ヤギもさまざまなサステイナブル提案を打ち出している。オーガニックコットンやレンチングの環境配慮型レーヨン「エコベーロ」などを集約した自社生地ブランド「フォレシカ」を今春立ち上げた。栽培から紡績まで独自性のあるオーガニックコットンを開発しカセイソーダを使わない有機精練加工を手掛けるツバメタオル(大阪府泉佐野市)を7月には子会社化。「エシカル領域への進出を加速する」と言う。社内横断プロジェクトチームを設置してエシカル指針「ヤギシカル」も策定しており、今後もサステイナブルな企業姿勢を鮮明にしていく。

 このほか、あらゆる総合商社、専門商社が糸、生地、廃棄問題への取り組みなどさまざまな工程や視野でサステイナブル提案を強めている。

 生地商社の中でもサステイナブル商材が一気に拡大している。先行するのは瀧定名古屋。「プルミエール・ヴィジョン・パリ」の同社ブースは数年前から、同業他社に先駆ける形でサステイナブルへのかじを切った。北欧のグローバルメガブランドが調達方針にサステイナブルを盛り込んだためだった。この戦略は徐々に奏功し、同社の生地輸出拡大に寄与していく。このほど開いた国内展でも「リサイクルポリエステル」「BCIコットン」「RWS認証」などの取り組みを展示テーマの中心に据えた。

 サンウェルはSDGs(持続可能な開発目標)の17項目のうち15項目を実現できる対応力をアピール。さまざまな商材と取り組みでサステイナブル対応を加速する。双日ファッションも「環境配慮商材へのニーズは日に日に高まっている」として再生セルロース繊維や再生ポリエステルブランド「e co to」の打ち出しを強化する。

〈持続可能にするために〉

 各社が口をそろえるのは、サステイナブル商材が現時点で大きな売り上げには至っていない点。欧米や中国市場向けで先行しているのが実態で、日本の市場はまだこの世界的な潮流を受け入れきれていない。各社が「先行提案のようなもの」と話すのはこのためだが、先行することそのものが以後の事業展開に優位に働くことも間違いなく、今後も商社のサステイナブル提案はますます加速するものとみられる。

 「理念、理想だけで、売り上げ(利益)が伴わないなら長続きしない」ことも事実。過去のエコロジーブームは「売れない」ことが終息の原因だった。一般的にサステイナブル商材の開発には従来品よりもコストがかかる。新たな設備投資が必要であったり、製造工程も従来の定番品より複雑なケースがほとんどだったりする。ただし日本市場の現状は「サステイナブルだから高額でも仕方がないという状況にはなっていない」。「サステイナブルにはコストもかかる」という事実を消費者含め市場全体に浸透させることが、持続可能か否かの鍵を握る。