繊維ニュース

在名輸出商社座談会/海外のスピードに乗り遅れるな/産地縮小で納期対応に危機感

2019年10月21日 (月曜日)

出席者(社名五十音順)

国際貿易推進部長兼瀧定ヨーロッパ社長 黒田 剛臣 氏

タキヒヨー グローバルテキスタイル営業部貿易部長 土屋 旅人 氏

豊島 十部部長 岡部 良輔 氏

 衣料品の国内市場が縮小する中、日本の繊維企業は海外市場に活路を求めるべく、輸出に力を入れてきた。繊維商社も同様で、各社の強みはもちろん、日本のモノ作りを生かしながら、テキスタイルの海外販売拡大を進めている。そうした中で世界経済は目まぐるしく変化しており、さまざまな課題も浮上。今後の輸出でポイントとなることは何か。「テキスタイル輸出の課題と展望」をテーマに瀧定名古屋、タキヒヨー、豊島の輸出担当者に聞いた。

〈黒田/外的要因いかに抑えるか/現地への土着化進め開拓を〉

  ――テキスタイル輸出のこれまでの歩みと現状を教えてください。

 黒田氏(以下、敬称略)当社は2007年2月から輸出をスタートしており、紳士服地部門の中に輸出専門の課を発足させたのが始まりです。北米のメンズ市場を皮切りに、アジアでは韓国、台湾、香港、欧州ではドイツ、フランス、スペイン、イタリア、北欧の開拓をしていきました。そうした中で、海外のお客さんのニーズに対応するため、そのニーズをくみ取った商品とわれわれが売り込みたい商品の二つを軸にハイブリットさせて提案しています。

 ただ、輸出は外的な要因に大きく左右されます。為替はもちろん、最近では日韓関係の悪化、米中貿易摩擦などさまざまな形で影響を受けることがあります。そうした外的要因の影響をいかに最小限に抑えるかが重要と考えています。そのためには現地への土着化を進め、貿易するということが大事になります。例えば15年には韓国で現地の韓国人をヘッドハンティングして会社を作りましたし、同じ年から私はオランダ・アムステルダムの事務所に駐在していますが、そこで市場の開拓を進めながら、なるべく外的要因に左右されないよう、日本だけでなく、世界でのモノ作りもしながら、三国間、四国間貿易などによる仕組み作りを始めています。

 岡部氏(同)当社は1998年に輸出がスタートしています。当時、「テンセル」を扱っていた部署の十部から輸出ビジネスが始まりました。日本からアメリカへ出張ベースで行ったりしていましたが、その後は米国・ニューヨークに事務所を作り、ロサンゼルスには現地法人の豊島インターナショナルアメリカを設置し、西海岸方面へ販売攻勢を仕掛けました。

 これまで欧州はエージェントを介したり、日本からの出張で対応したりしていましたが、7月1日からイタリア・ミラノの駐在員事務所で人員増強を図り、より一層販売に力を入れていこうとしています。中国は豊島国際〈上海〉有限公司との連携を進めています。

 土屋氏(同)輸出のスタートは分かりませんが、売上高はこの10年で約2倍の規模になりました。米国向けが元々多かったのですが、それに加えて欧州向けが伸びたことが大きいですね。自分の意識としては、05、06年ぐらいの販売の仕方と今はそのやり方がだいぶ違っており、良い意味で商社らしくない取り組みを進めています。国内の産地で作った物を、そのまま右から左に流しているような商売では買ってくれなくなりますので、自分たちできちんとモノ作りした物を提案して、お客さんからの声を聞き、それをまたモノ作りに反映させ提案するというやり方になっています。

 拠点はイタリア・ミラノと米国・ニューヨークで、エージェントを介した商売をすることもありますが、日本から出張して積極的にお客さんの声を聞いて、モノ作りに反映し提案するということを実直にやっています。なるべく価格競争に向かわないよう、付加価値型の商品の提案を進め、どこが狙えるかを常に考えています。当社にしかない商品を持つことが重要と考えています。

〈岡部/メーカー的な立ち位置必要/オリジナル商材をどう作るか〉

  ――欧米、中国などの仕向地別での輸出環境の変化はありますか。

 岡部 当社は備蓄品を売っている訳ではなく、基本的にはその都度産地で作られた物を輸出させていただいています。そうした中で感じることは、特に北米で顕著なのが生地の価格帯にリミットが掛かり始めているということです。多様化やネットの影響で高い物が売れにくくなっていると感じます。欧州はトレンドであるトレーサビリティー(追跡可能性)やサステイナビリティー(持続可能性)の商材を求められる中、備蓄をしていないという現状で、今後どう対応していくかが重要になると考えています。

 そのためにも、オーストリアのレンチング・ファイバーズが開発した精製セルロース長繊維「テンセル リュクス」や廃棄食材を染料として活用する「フードテキスタイル」といった商材を生かしながら、製品まで一貫して打ち出せるようなオリジナル商材を提案していかなくてはなりません。つまり、オリジナルの商材を持ったメーカー的な立ち位置に移っていくことが大事だと考えます。これまで豊島として海外の展示会にはあまり出展したことはありませんでしたが、今年は既にさまざまな展示会に積極的に出展しています。今後も出展を計画しており、そうした展示会でオリジナルの商材を提案していくことが、より一層重要になるでしょう。

 黒田 輸出の環境の変化はそれほど感じてはいませんが、政治摩擦は今まで以上に経済に直結することはあります。一昔前は大国であった米国にほかの国が追随しているという構図でしたが、近年は世界のあらゆる国で自国ファーストという考えが強いですから、そういう意味ではかつてと比べて秩序は乱れていると思います。それに加え、為替相場をより注視するようになりましたね。以前までは円からドルの相関関係が基本でしたが、今では取引国も増え、韓国や欧州、そして原料からのモノ作りをする中で調達する国の相場などをより意識するようになりました。

 2月に発効した日欧EPA(経済連携協定)については、正直なところあまりメリットは感じていませんね。お客さんの中にはEPA自体を知らない人もいるので、まだ浸透していないのかもしれません。それより、むしろデメリットを感じることの方があります。例えば日本のメーカーが生機を輸入して、国内で染色加工などの2工程を踏めば、それはメーカーからしたら日本製ということになります。ただ、それはEPAの基準に合わない場合もあるので、そうした面で不具合などが生じることがあります。それにEPAを発効したからと言って、輸出が増えるかと言われれば、そんなに単純でもありません。関税が撤廃されたから日本品にシフトするということは、現状あまり考えられません。

 土屋 変化として感じることは、米国の古き良きニューヨークブランドが売り上げを作るのに苦戦しているようですね。米国はサステイナビリティーとEC(電子商取引)を両方やっていない企業は厳しくて、ブランドの淘汰(とうた)が進んでいます。そうした動きが米国の方は早く、欧州の方はそれがまだ少し遅いという印象を受けます。サステイナビリティーはもう当たり前になっており、エコだけでは売れなくなっています。エコはもちろん、プラスアルファの何かが必要になっており、驚きがないと売れないので、こちらのモノ作りも、かなりハードルが上がったと感じています。スポーツ・アウトドアのお客さんとファッションのお客さんで求めるレベルに違いはありますが、サステイナブルな商品しか見ないというお客さんは多いです。

〈土屋/日本製生地の現状認識を/ストーリー作りを重要視〉

  ――日本のテキスタイルの優位性を生かすために必要なことは何だと思いますか。

 土屋 優位性もそうですが、まずは日本製テキスタイルが置かれている立ち位置を正しく認識することが必要不可欠です。日本製という時点で世界的に見てかなりニッチで、決して主流ではないということです。生産キャパシティーの縮小はもちろん、納期対応、生地幅などで日本製の生地は買いにくいということもあります。しかし、逆に言えばそういったことが日本のモノ作りのストーリーにつながっている部分もあります。島国特有の特殊性が日本人には当たり前でも外国人から見たら面白いと思うことはたくさんありますから。ただ、これまでは、そういったアピールがわれわれも産地側も十分ではありませんでした。よりストーリーを発信した売り方で、モノよりコトを打ち出して販売することで、海外のお客さんに興味を持ってもらうことが大事でしょう。

 繰り返しになりますが、モノを作っていれば売れるという大量生産・大量消費という考え方から付加価値型に変わらなくてはなりません。そうすることで商品開発も変化があるでしょうし、設備を縮小しながらオリジナリティーの高い物を作って生き残る方法もあるでしょうし、生き残り方を考えることが必要です。

 黒田 優位性は複合素材の再現性と加工技術です。もちろん、ほかの国のレベルも高くなってはいますが、これに関しては他を圧倒するものがあります。ただ、課題は作るスピード。市場ニーズが何を求めているかというと、ファストファッションが盛り上がる中、やはりスピードが大事になる。一度このスピードに入ってしまうと、今後供給側のスピードが遅くなることはないですから。

 一方で産地のメーカーは限られた設備投資と人材確保の中で、グローバル市場が求めるスピードに合わせる難しさに直面しています。産地の匠と呼ばれているような人たちが作る商品を輸出の面でお手伝いをしていく上で、納期はどうしてもネックになります。イタリアのメーカーなどは、染色が10日、プリントが当日にできてしまいます。そうしたことを考えると、国内でのモノ作りということに対し、産地もわれわれも大変な危機感を持たないといけません。ただ、それを産地に丸投げするのではなく、この場にいるわれわれのような商社が一緒に考えて、産地を盛り上げていくことが必要になると思います。

 岡部 課題は黒田さんと重なりますが、スピードとコピーされない商品をどうやって作るかだと思います。コピーされる商品はスピードで負けたらよそで作られてしまいますから。コピーされない商品というのは、オリジナルの原料を使ったモノ作りや独創性の高いモノでしかありません。この二つは繊維産業全体の課題ですが、豊島の課題でもあります。そして当社として何ができるかを考えた時に、生機にしろ、加工反にしろ、生地の備蓄ということも含めて、やり方を模索しないといけません。

〈輸出へのハードルは高い/社内の人材、商品、情報を集約〉

  ――今後の輸出での課題と方針を教えてください。

 岡部 まず課題は二つあります。一つはどうやってメーカー的な立ち位置を確立するかということです。豊島として素材原料を長年扱ってきて、私自身もその仕事に携わってきた中で、素材から物を作るということにもう一度チャレンジしたい。それをやらないとテキスタイル輸出の仕事は増えないと考えています。当然そこには、先ほど話したように商社としての機能である備蓄をどうするかということになりますが、しっかりやっていければと考えます。

 そして二つ目は豊島が持っている商材の集約です。いろいろな部署でいろいろな事をやっており、しかも、その一つ一つが世界で通用しそうなものばかり。先ほどのフードテキスタイルもそうですが、ストレッチ性が高い丸編みの「ワンダーシェイプ」やトルコの農場から紡績まで一貫したトレーサビリティー万全なオーガニックコットンといった誇れる商材があります。ただ、現状はそれが部署ごとでバラバラになっています。十部として輸出を大前提にそれらをまとめ上げていきたい。

 目標は綿花、製品のドロップシップを除く、輸出及び三国間貿易の売上高で全社比率の10%です。生地輸出の貿易のノウハウを持っている十部が会社の商品を世界に売っていくことで、その目標をクリアしたい。さまざまな部署にある戦略商材をどんどん吸い込んで、連携して一緒になって売っていく。十部がその旗振り役となって、海外市場に広げていきたいと思います。

 黒田 輸出は全社の方針として取り組んでいます。その中において、社内で貿易(輸出)についての価値観や考え方をどう共有していくかは、我々国際貿易推進部としての課題です。社内には海外で通用できる人材も商品もあるので、それらをうまく組み立てていきたい。本社ベースでの海外販売の目標は全社売上高の10%です。そのために海外にショールームを作ったりして、いかにお客さんに来てもらえる環境を作るかが大切です。そうしたことがより整っていけば、海外販売で目標数値以上も達成できると考えています。

 土屋 方針は丁寧な仕事をするということに尽きると思います。われわれのお客さんに対して、準備も含めた完璧な商談ができているかというと不十分な部分もあるので見直しが必要です。商品の説明はもちろん、相手とのコミュニケーションをより密にするなどやれることはたくさんあります。それらを実現することで、部としての目標は輸出入を含め、全社売上高の10~15%にまでもってくということです。

 私自身が感じることは、輸出という仕事の難しさが増していると強く思うことです。国内の生産キャパシティーが縮小する中で日本製のテキスタイルを売ろうとなると、生機をリスクするケースが増えます。在庫を残してはいけませんので、そこに目利き能力が必要になる。その上で納期対応に優れ、多彩なカラー展開も得意な海外のメーカーに打ち勝たなくてはなりません。このハードルはかなり高く、先ほどのストーリー作りもそうですが、企画段階からいろいろな事を模索する必要があります。ひと言で言うと輸出はそんなに簡単ではないということです。国内の仕入れ先から新しい商品を見せてもらうこともありますが、納期や商品面で輸出が無理だと判断したら正直に言うようにしています。ただ、こちらとしても国内市場が縮小する中で輸出に力を入れたいのは理解できますので、お互いに情報をリサーチして、われわれもあらゆることをフィードバックしていくことも大事です。