2019年秋季総合特集(16)/トップインタビュー  カケンテストセンター/潜在力は変化への対応力/専務理事 北川 義人 氏/SDGsへの取り組み強化

2019年10月28日 (月曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は10月にテキスタイル・エクスチェンジ、11月にはZDHC(環境系への有害化学物質の排出ゼロを目指す企業連合)に登録加盟するなど、海外の環境配慮団体との取り組みを通して、世界的潮流であるSDGs(持続可能な開発目標)への対応を強化する。北川義人専務理事はこうした活動を「次代に向けた第一歩」と語っている。

  ――繊維産業の潜在力とは何でしょう。

 繊維産業は時代のさまざまな変化に対応してきました。衣料を取り囲む環境は厳しいが、環境問題への対応、顧客ニーズにどう対応していけるか。CSR(企業の社会的責任)、SDGs、エシカルファッションしかり。こうした世界の潮流に対し、カケンという第三者試験機関としても対応が急がれます。

  ――企業のSDGsへの取り組みが活発です。

 SDGsの目標12は「つくる責任、つかう責任」ですが、検査機関には「評する責任」があると考えます。地球に優しい商品ができたとして、それを評価し、企業に伝えていく。それが最終消費者にも伝わります。新しい試験方法を開発し、評価の物差しも作らなければいけません。

 つかう責任でも、長く愛用される製品はその「長く」を、耐久性としてどう評価するのか。こうした企業が開発した商品を評する責任が今後の大きな柱になると考えます。

  ――そのためには。

 SDGsを含めて対応するため、10月に米国のテキスタイル・エクスチェンジに登録加盟しました。SDGsを強く意識した環境配慮団体です。有害物質の分析などを主にこの団体の活動に関与していきたい。加盟する海外企業とのコンタクト、コミュニケーション、将来的には加盟企業の支援も行っていきたい。

 11月には有害物質排出ゼロを目指すZDHCに登録加盟する予定です。情報をいち早く入手できるなどのメリットもありますが、提携するビューローベリタスとも連携し、有害物質の排出削減に取り組んでいく。グローバルなテスト機関として活動するためには、海外の認証を持つ能力を持っていなければ、先がありません。これは次代に向けた第一歩です。

  ――CSR工場監査は。

 中国(上海)ではCSR工場監査を既に行っており、今後も充実拡大していきますが、カケン自身のCSR体制の構築も進めています。

  ――日本化繊協会とマイクロプラスチック問題に取り組んでいます。

 測定方法の提案、ISO化を進めています。ビジネス環境が急速に変化しています。業界でもウエアラブル、エコ、リサイクルといったものが注目されており、12月には「エコプロ2019」に日本化学繊維協会とタイアップして初出展します。素材や機能をどう評価するかを紹介します。

 来年2月の「ウェアラブルEXPO」にも出展します。ウエアラブルの世界の中で、われわれが何をやっていくべきかを、勉強するためにも出展を決めました。展示物を含めて準備を進めています。ウエアラブルはメディカルの分野にも広がり、注目しています。

  ――ビニールショッパーを紙製に切り替えるアパレルも増えています。

 紙の試験の問い合わせも多く、調査しています。紙袋や下げ札の強度、色汚染などが現実のニーズとしてあります。リサイクルポリエステルとバージンポリエステルの違いをどう分析、評価するかも課題です。

  ――上半期(4~9月期)はいかがでしたか。

 国内はおおむね順調でした。ほぼ昨年並みを見込んでいます。機能性試験が増えています。納期や信頼性、試験後のサービスなどで評価されている側面もあります。

  ――試験結果の短納期対応も重要です。

 これまで海外の試験機器の充実を図ってきました。国内は、量が増えても短納期対応を維持していきます。ITを使い、各所のコミュニケーションをとり、進捗(しんちょく)の見える化を進めています。報告書も電子化し、ペーパーレス化、納期短縮にもつながっています。データベースサービスも行っています。これからのデータベースサービスは、データ情報をどう分析するかも重要です。試験、データ、フォロー、分析・支援まで一貫化していきます。

  ――海外事業はいかがですか。

 おおむね順調でした。韓国は一部苦戦しましたが、インドネシアは黒字を維持して好調です。インド、バングラデシュは駐在員をそれぞれ2人置いて、好調です。タイも試験量が復調しています。中国は上海、青島、大連、寧波、無錫、南通、香港とも順調、好調です。中国でも機能性試験需要が結えています。ベトナムも順調で、ここでも機能素材試験のニーズが増えています。

〈私のリフレッシュ法/鏡の前で声を上げて笑う〉

 「ストレスはためない、残さない」のがモットーという北川さん。それでもたまるのがストレスである。5、6年前にあるセミナーに参加して教わったのが、鏡を見ながら、声を出して笑うという方法。実際に朝起きて、鏡の前で声を出して笑ってみた。すると、その瞬間、心が軽くなり「悩んでいることが馬鹿らしく思えてきた」と言う。「しんどい時こそ、ニッコリする」。笑顔が似合う北川さんである。しかし、理由も知らず、鏡の前で声を上げて笑う姿を他人が見たら、ちょっと……。

〔略歴〕

 きたがわ・よしと 1975年4月日本化学繊維検査協会(現カケンテストセンター)入会。2007年西部検査所所長、12年東京事業所所長、13年理事、14年常務理事を経て、17年専務理事就任。