2019年秋季総合特集Ⅱ(8)/トップインタビュー ユニチカ/ガーメンテック駆使し新展開/常務執行役員 繊維事業本部長兼特需部担当兼ユニチカトレーディング社長 細田 雅弘 氏/海外事業をもう一

2019年10月29日 (火曜日)

 2019年度は、ユニチカグループの中期経営計画「ジーラウンド20トゥ・ザ・ネクストステージ」の最終年度だ。主力の高分子事業に比べると最近は影が薄くなってしまった祖業の繊維。この数年は衣料繊維事業の後退に歯止めがかかっていない。今年4月1日付でユニチカの繊維事業本部長、ユニチカトレーディングの社長に就任して以降、半年が経過した細田雅弘常務執行役員。残る半年をどう乗り切っていくのか、次期中計に向けた課題は何かを聞いた。

  ――日本の繊維産業の潜在力はどういうところにあると思いますか。

 やはり高度な技術力とそれをベースとする多彩な展開力ではないでしょうか。匠の力と言い換えてもいいと思います。この高度な技術力を背景に、これまで日本の繊維産業は多くの高品質の商材を生み出してきました。この匠の力、日本人ならではのこだわりというものが高品質の方ばかりを向いていると私には感じられます。このこだわりを徹底したコストダウンの方に展開するアイデアが重要なのではないか。それを実現させることが日本の繊維が生き残る道を切り開くのではないかと思います。

  ――最近の状況はいかがですか。

 海外を含めて、一言でいうとよくありません。素材や用途ごとにばらつきがあり、例えばPLA繊維「テラマック」のようなエコ素材はあちこちから引き合いを集めており、今のところ前年を30%前後上回る伸びを示しています。再生ポリエステル「エコフレンドリー」も注目されていて、客先との具体的な取り組みが動き出しています。

 一部のSPAは頑張っておられるし、ユニチカトレーディングが連携する鎌倉シャツさんとの取り組みはうまくいっていて、複重層糸「パルパー」の販売は今年も順調です。一方で、スポーツ素材や婦人テキスタイル、寝装では苦戦を強いられていて、トータルは良くない、というのが現状です。

  ――ユニチカ本体の繊維事業の状況は。

 産業繊維事業部が土木建築用途向けにポリエステル長繊維、衛生材料向けにポリエステル短繊維やショートカットファイバーをそれぞれ展開しており、土木建築向け、衛材向けはいずれも堅調です。

 現在、芯鞘構造のポリエステル長繊維「メルセット」の増設を進めており、来年から稼働させます。熱融着性能が特徴の長繊維というのは珍しい存在で、こういう独自性のある素材のためか、特殊な用途への販売が増えています。4~6月期は岡崎工場のトラブルによって苦戦しましたが、通期では挽回できると見ています。

  ――ユニチカトレーディングはいかがですか。

 4~6月期までは好調だったユニフォームがここに来て減速しています。備蓄のワーキングで在庫調整が行われている影響が出始めました。スポーツや婦人も低調です。しかし、中には好調なアパレル、SPAがいることですし、こういう勝ち組との連携を強化し、販売量、収益力の回復につなげたい。少しやり方を変えないと過去の二の舞いを繰り返すことになります。

  ――新しい施策を考えている。

 当社にはユニチカガーメンテックというグループ会社があります。ここには、例えばさまざまな天候を再現し、その環境下で衣服がどういう機能を発揮するかをシミュレートできる設備が備わっています。発汗マネキンを使い、汗をかいたときの状況をさまざまに測定することにも取り組んでおり、各方面と機密保持契約を結び、性能評価を進めています。最近はJIS化の動きがあるようですが、この拠点は海洋プラスチック問題で注目されている繊維クズの測定も独自に行える能力を備えています。

  ――ユニチカガーメンテックの活用を考えている。

 ガーメンテックを駆使すれば何ができるのかを各営業が理解した上で、顧客との連携を通じ新しい取り組みにつなげられないかを考えていきます。これまではさまざまな機能性を測定する機関という扱われ方をしていました。企画提案のためのもっと有効な連携に乗り出し、仕事の幅を広げていければと考えています。

  ――再生ポリエステル「エコフレンドリー」が注目されているようですが。

 昨年から量産に着手し、期を追うごとに販売量が増えています。当社はケミカルリサイクルによる差別化素材の販売に特化していきます。20年度からの次期中計で、「テラマック」などのエコ素材を含めた全体を「エコフレンドリー」として打ち出す販売戦略を立ち上げようと考えています。

  ――ユニチカトレーディングが海外事業に力を入れてきました。

 インドネシアに自前の拠点ユニテックスを展開しています。国内販売だけでなく、最近は日本や中国の顧客に供給する「パルパー」が順調に伸びてきています。ベトナムでは外注拠点と連携しテキスタイル生産、縫製を進めており、これら海外オペレーションを今後どう展開していくのかが20年度からの次期中計の大きな課題になります。

 例えば、「パルパー」をもっと伸ばしていこうと考えた時、現在は国内とインドネシアで生産していますが、その他の海外での生産も一つの選択肢になります。ベトナムになるのかミャンマーになるのかはわかりませんが、中国ではないどこかで作ることになる。独資か合弁かも考えながら、次期中計で検討していきます。私個人としては、独資はないなと考えています。

〈私のリフレッシュ法/至福の時間を映画とともに〉

 かつては月に何回かのゴルフがリフレッシュ法だった。先日、購入した新しいウェッジがぴたりとマッチし、スコアアップにつながっている。最近は親の面倒を見ることを卒業し時間的な余裕が生まれたため、「ネットフリックスで昔の映画を見る」ようになった。見たい時に見られるネットフリックスは「便利でいい」とご満悦の様子。「誰にも邪魔されることなく、至福の2時間を過ごすことができる」と細田さん、昔を思い出しながら、お気に入りのアンジェリーナ・ジョリーの作品を楽しんでいる。

〔略歴〕

 ほそだ・まさひろ 1982年4月ユニチカ入社。2007年7月技術開発本部技術開発企画室長、12年7月執行役員、14年6月執行役員樹脂事業本部長、15年4月執行役員樹脂事業部長、16年4月上席執行役員樹脂事業部長、19年4月常務執行役員繊維事業本部長兼特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長。