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2019年秋季総合特集Ⅴ(4)/産業資材分野の潜在需要/紡績編/伝統的用途から最先端分野まで

2019年11月01日 (金曜日)

 紡績にとって産業資材は古くて新しい事業領域であり続けた。創業当時から続く伝統的分野だけでなく、その技術を応用することによって開拓した最先端分野でも独自の存在感を発揮している。紡績の産業資材事業でも社会構造の変化や環境問題、技術革新などによって新たなニーズが生まれる。こうした中で新たな商機を捉えることに取り組む。

〈社会構造の変化にも対応/重布・帆布〉

 重布・帆布は紡績の産業資材事業にとって最も伝統的な分野。例えばダイワボウグループにとって重布・帆布は産業資材事業の祖業とも言える事業であり、現在でもダイワボウプログレスがトラック幌向け合繊帆布で高いシェアを持つ。長年の実績を生かし、全国に地域密着の販売代理店網を持っていることが最大の強みとなる。

 伝統的な商品ながら、やはり社会構造の変化とともに新たな要求も登場する。近年、物流業界では人手不足やトラックドライバーの高齢化など新たな課題が浮上する。このためトラック幌も取り扱い時の負担を減らすために軽量性が求められるようになった。軽量帆布「エアスカイ」を開発するなど新たなニーズに応える商品提案に力を入れている。

 同じくダイワボウグループのカンボウプラスは重布・帆布の樹脂加工からスタートし、現在でシート補修用粘着テープや断熱・遮熱ターポリン、スピーカー内蔵サイネージ「音なび」、子会社である朝日加工の滑り止め加工「ダイナミックフォーム」など多彩な商品を取り扱う。

 3月に創立80周年を迎えた同社は新規商材の開発や用途開拓にも力を入れる。その一つがカイハラ、田島ルーフィングと共同開発したデニム製フロア材。そのほか光触媒防汚機能テント材「ダイナスター」は品質保証体制を強化し、7年保証と10年保証の商品の販売を開始している。

〈フィルターで新規用途開拓/短繊維不織布〉

 紡績の産業資材事業でも存在感が高まっているのが不織布。ニードルパンチやケミカルボンドなど短繊維不織布は高い汎用性から土木・建築資材から自動車までさまざまな用途で使われている。特に近年はフィルター用途で新規用途開拓を進める動きが目立つ。

 ニッケグループのアンビックは主力の不織布「ヒメロン」や楽器用ハンマーフェルトで豊富な実績を持つ。さらに近年、力を入れているのがバグフィルター。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を使った耐高熱タイプのバグフィルターはゴミ焼却場やバイオマス発電所向けで高い評価を得ている。

 中国でもゴミ焼却場が多数建設されており、高温焼却するため耐高熱タイプの需要拡大が期待できる。このため中国でのバグフィルター生産に向けて中国子会社での製造設備導入を正式に決めた。

 クラボウグループの倉敷繊維加工も自動車のキャビンフィルターなどでの事業拡大を進めてきた。さらに近年、独自のグラフト重合加工による金属イオン捕集フィルター「クラングラフト」による半導体関連分野への参入を本格化させている。

 グラフト重合は繊維に放射線など高エネルギーを照射してさまざまな機能材を分子的に結合させるもの。これを不織布に応用したクラングラフトは薬液に溶け込んだごく微少な金属イオンを捕集できる。こうした性能を生かし、半導体製造工程などで使用する高純度薬液の精製用途で提案を進め、ここに来て複数の半導体関連企業と正式採用に向けた仕様の最終決定が確定しつつある。

〈用途も広がりを見せる/グラスファイバー〉

 グラスファイバーは、工業的に生産された初めての無機繊維。強度や耐熱性、不燃性、電気絶縁性、耐薬品性といった特徴を持ち、幅広い産業で利用されている。建築資材や繊維強化プラスチック(FRP)、プリント配線基板用電気絶縁クロスなど、用途も広がりを見せている。

 原繊製造は、1300℃以上という高温で溶融紡糸が行われる。ガラスは高温度溶融化された状態では非常に活性で、溶融炉や紡糸炉には白金系の材料を使用し、温度制御などについても精密なコントロール技術が必要となる。1938年に日東紡が日本で初めて工業化に成功した。

 その日東紡の強みは極細糸が生産できること。繊維径が4・5マイクロメートル以下の糸を製造できる企業は世界的にも少ないといわれているが、同社は4マイクロメートルの製造が可能。製織工程を社内に保持していることも優位性の一つとなっており、糸製造からガラスクロス、複合材料の開発まで一貫で手掛ける。

 用途では特にプリント配線基板用ガラスクロスで存在感を示す。中でも低誘電特性ガラスクロスのNEガラスと低熱膨張特性ガラスクロスのTガラスが注目される。第5世代移動通信システム(5G)の規格化などもあって、これからも順調に拡大していくと予想されている。