顔料による染色加工/“顔料の時代”来るか?/節水、リサイクルで注目

2019年11月12日 (火曜日)

 繊維分野では染料による染色が一般的だが、顔料による染色加工への関心が一部で高まっている。背景にあるのが世界的なサステイナビリティー(持続可能性)への要求。染色工程での節水につながる可能性が注目される。染色技術者の中には「今後、顔料の時代が来るかもしれない」といった声も上がる。

 顔料染めは、顔料を固着剤で生地表面に物理的に定着させる染色法。ユーズド加工などで使用されることが多いが、摩擦堅ろう度が低く、生地の風合いが硬化するなど弱点もあって繊維の染色方法としては主流とはなっていない。

 ところがここに来て変化の兆しがある。今年6月にスペイン・バルセロナで開催された国際繊維機械見本市では顔料インク搭載のインクジェット(IJ)捺染機の出展台数が大幅に増えた。背景にあるのが染色・捺染工程で世界的に節水ニーズが高まっていることがある。

 IJ捺染は水使用量削減につながるとされる一方で、染料インクでは色素定着のための熱処理や余分な染料を除去する洗浄工程などで多量の水を使用する必要がある。顔料インクならこうした前後処理のプロセスを短縮でき、水の使用量を削減できる可能性が高まる。このため今後、顔料インクによるIJ捺染が拡大するのではないかといった見方がある。

 もう一つ注目される分野が合成繊維や再生セルロース繊維に顔料を練り込んだ原着糸。原着糸を使うことで染色工程が不要となり、水使用量の削減が可能になる。このため世界的に原着糸への注目が高まる。例えばインビスタはカーペット向けBCFナイロンで原着糸への特化を進めている。衣料用途ではレンチングが原着HWMレーヨンの提案を強めており、日本のダイワボウレーヨンなども同様の動きを見せる。

 将来的な技術開発テーマとして顔料に注目する声もある。現在、リサイクル繊維原料への関心が高まっており、再生ポリエステルの需要が高まっているほか、綿製品を再生セルロース繊維の原料に再利用する動きもある。

 こうした繊維製品のリサイクルで問題になるのが色。繊維をリサイクルする際、色が繊維と化学的に結合している染料よりも物理的に固着しているだけの顔料の方が除去が容易ではないかといった指摘がある。

 これまで繊維分野では比較的ニッチな用途で活用されてきた顔料染めだが、世界的なサステイナビリティーへの要求を背景に、節水やリサイクルといった新たな観点から可能性が再評価されるかもしれない。