特集 清潔・衛生と繊維製品(2)/素材メーカー/多彩な機能で清潔・衛生実現

2019年11月27日 (水曜日)

 日本の繊維素材メーカーはこれまでも多彩な機能素材によって消費者の清潔・衛生を実現してきた。新たな加工も登場する。

〈クラボウ/ユーザーの声を実現〉

 クラボウはユニフォームなどのエンドユーザーの声をダイレクトに反映した機能素材の開発を進めている。そこから生まれたのが既存品を超える高い機能を持つ消臭加工生地「ストロングデオ」と防汚加工生地「ソイルスウィープ」。採用に向けた動きが進む。

 ストロングデオは汗臭の原因物質であるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸それぞれに対して既存品を上回る高い消臭機能を持つ“強消臭”加工として打ち出している。繊維評価技術協議会の「SEK消臭加工マーク」も取得した。工業洗濯50回後も機能を維持する高耐久タイプの開発も進めている。

 一方、ソイルスウィープはワーキングユニフォーム用途を中心に提案を進めているが、ここに来て食品分野のユニフォームなどでも引き合いが増えており、一部で採用も進む。油汚れが中心の作業服と水性汚れが多い食品分野のユニフォーム・白衣では汚れの質も異なる。このため特に食品分野ではユーザーの協力を得て着用試験を実施している。その結果を生かして機能の改良にも取り組む。

〈ダイワボウノイ/清潔・衛生をSDGsに〉

 ダイワボウノイは抗菌防臭、抗ウイルス、防汚、消臭など清潔・衛生に焦点を当てた機能素材・加工を豊富にラインアップする。使用する原材料・薬剤や加工プロセスでの環境負荷低減も重視し、清潔・衛生関連の商品をSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みにつなげることを目指す。

 清潔・衛生関連の機能加工でも特に好調な販売が続いているのが防汚加工の綿100%生地「エコリリースW」とポリエステル・綿混生地「ミラクルリリースW」。生地販売だけでなく同社の縫製品事業で活用が進んでおり、インドネシアや中国で生産するドレスシャツなどに採用した。寝装用途でも実績がある。繊維評価技術協議会の「SEK防汚加工マーク」も取得する高い防汚機能への評価が高い。

 泥に含まれる無機物を利用した抗アレル物質加工「ミネラルピュア」や洗濯100回後も機能が持続する高耐久消臭加工「デオパワーD」なども注目が高い。同社は加工に使用する薬剤も天然由来とすることで環境負荷低減と機能化の両立にも取り組む。

〈ダイワボウレーヨン/練り込み技術で多彩な機能〉

 ダイワボウレーヨンは、得意の練り込み技術によって清潔・衛生関連でも多彩な機能レーヨンを開発してきた。

 近年、昆虫や節足動物に対する忌避性を発揮する機能素材・加工への注目が高まる。同社はレーヨンでもいち早く防虫機能レーヨン「バグノン」、防ダニ機能レーヨン「マイテクト」を実用化するなど高い技術力を発揮している。忌避剤として天然由来成分であるケイ皮酸誘導体をレーヨンに練り込んでいる。香料などにも広く使用されており、安全性も高い。

 そのほか抗菌防臭の「バクトフリー」、部屋干し臭の原因菌であるモラクセラ菌に対する制菌性を持たせた「ビスクリーン」など多彩な機能レーヨンをラインアップする。

〈富士紡ホールディングス/吸水速乾と抗菌防臭両立〉

 富士紡ホールディングスは綿100%に吸水速乾と抗菌防臭を複合加工したニット生地「デオスカイ」を開発している。わきがに対する抗菌防臭機能も実現した。

 綿に吸水速乾と抗菌防臭を同時付与する加工はや薬剤の相性から技術的ハードルが高い。フジボウテキスタイルの和歌山工場(和歌山市)が持つ加工技術でこのハードルをクリアした。既にTシャツなどに採用され始めている。

 デオスカイは、わきがに対する抗菌防臭性も実現した。抗菌防臭加工は、臭い成分を発生させる原因菌の増殖を抑えることで防臭性を発現させる。このため特定の臭いを抑えるには原因菌の特定とそれに対する抗菌性の確立が必要。日本の化粧品メーカーが、わきがの原因菌がコリネバクテリウム属だと特定した。これを受けて同社はコリネバクテリウム属に対する抗菌性を確認している。

 そのほか、綿100%の防汚加工「ワンダーフレッシュ」もユニークな商品。油汚れに対するSG(ソイルガード)性とSR(ソイルリリース)性を併せ持つ。綿100%の可能性を広げる。

〈シキボウ/抗アレル物質加工も登場〉

 抗菌防臭や抗ウイルス、防かび、消臭など清潔・衛生に焦点を当てた機能素材・加工の開発に力を入れてきたシキボウ。このほど新たに抗アレル物質加工「アレルオフ」を開発した。

 アレルオフは繊維上に付着した花粉やダニの死骸・フンなどに由来するアレル物質を捕集し、成分を変性させることで無害な物質に変化させる。ダニとスギ花粉を用いた実験では90~80%の低減率を確認し、洗濯50回後でも機能が持続する。

 現在、繊維評価技術協議会が中心となって繊維上のタンパク質の測定方法の国際標準(ISO)化を目指している。アレル物質もタンパク質のため、繊維上のタンパク質測定方法がISO化されれば従来よりもアレル物質低減機能への注目が高まることが期待される。

 同社はそのほか、抗ウイルス加工「フルテクト」「ノロガード」、抗かび加工「ノーサム」、消臭加工「スーパーアニエール」など多彩な機能加工をラインアップする。肌への低刺激加工を医師と共同開発し、アトピー性皮膚炎患者用肌着「アレリオン」として実用化するなど豊富な実績を持つことも強みとなる。