技術の眼

2019年12月09日 (月曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKKスナップファスナー/取り付けにも技術あり〉

 YKKスナップファスナーは8~9月のファスニング商品総合展示会「YKKファスニング・クリエーション・フォー・2020」で、スナップなどを取り付けるアタッチングマシンを展示した。足踏み機「M―131」、半自動機「N―6S」、自動機「N―7」の3台。同社はコンマ1㍉以下の精度でパーツ品質を高めた商品、高性能な取り付け機による正しい取り付け、素材にあったスナップの選択などの的確なアドバイスがそろって、確かな商品を提供できる――という三つのポリシーを持つ。

 そのうちの一つのアタッチングマシンには全て、コンペンセーター(打ち込み圧力自動調整装置)が組み込まれている。生地の厚みにかかわらず、踏み込むだけで簡単に取り付けられる。半自動機(自動機も含む)には正確な取り付けのための直下型マーキングライト、安全のためのフィンガーガードも装備。「確かな品質は失敗を省き、サステイナビリティー(持続可能性)にもつながる」

〈帝人/触覚体験可能なシステム〉

 帝人は、慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科、南山大学、エンハンス・エクスペリエンス(米カリフォルニア州)との共同で、革新的な触覚体験を実現する布状の2次元通信システムとその技術を応用したハプティクス(触覚)スーツを開発した。

 帝人は電波を面で制御する2次元通信技術で物品管理に資する事業を展開している。これまでは固い樹脂素材にしか適応できなかったため、柔らかい布状素材へも適応できるよう南山大学との共同開発を進め、全身での通信、給電が可能な衣服として利用できるようにした。慶応大学は触覚分野での研究で世界をリードしており、2015年にエ社と共同で全身触覚スーツ「シナスタジア スーツ」を開発している。

 今回、帝人と慶応大の双方の技術を組み合わせることで、簡単に装着ができ外部からの接触を疑似的に体験できる2次元通信ハプティクススーツを開発した。

〈ヤギ/多機能性備えた中わた〉

 ヤギはこのほど、多機能性を備えた中わたのブランド「クライマシールド」の日本国内の独占販売権を、米国のハーヴェスト・コンシューマー・インサレーション社から取得した。米国では軍隊に正式採用されているほどの保温性や耐久性を訴求し、多様な用途に向け提案する。

 クライマシールドは、特殊な紡糸技術によって製造された独自のフィラメント糸を使用し、かさ高で軽量感があり、弾力性や透湿性にも優れている。

 フィラメント糸を素材にしているため、最小限のキルティングで繰り返しの洗濯が可能で、保温効果が低下しない。価格帯は機能性中わたの中間に位置するという。当初は6品番で展開する。

 主力の「エイペックス」は、保温性をはじめとした機能をバランスよく備えているのが特徴。汎用性が高く、アウターから寝袋まで幅広く提案する。ほか、ストレッチ性に優れた「コンター」、機能と着心地を両立させた「HL」も展開する。

〈清原/鉱石活用の繊維製品〉

 アパレルパーツ商社の清原(大阪市中央区)は、鉱石パウダーを使って筋活動の効率化をサポートする技術「アドエルム」を取り入れた独自製品の展開に乗り出す。運動時にも着用できるネックレスやブレスレットなどを、スポーツ分野に向けて提案する。アパレルに向けても、シリコンワッペンやジャカードテープなどを服飾副資材として打ち出す。アドエルム製品の普及を通じ、幅広い業種で商圏を開拓する。

 アドエルムは、トリピュアジャパン(東京都渋谷区)が開発した技術。用途に応じて鉱石パウダーを調合し、体に密着させることで人体の元素の反応を引き起こす。

 スニーカーや多機能ウエアなどの自社商品と合わせ、アツギなどとライセンス契約を結び、アドエルム製品の普及を図っている。

 清原は2018年12月にライセンシーに加わり、アドエルムの企画・生産・販売の権利を取得。技術を生かせる商品の開発に取り組み始めた。

〈コーマ/片手ではける靴下〉

 ソックス製造卸のコーマ(大阪府松原市)が開発した、片手でもはきやすく、脱げにくいソックスの売れ行きが好調だ。ナイガイの直営店や百貨店内の靴下ショップなどでシニアや手の不自由な消費者のニーズをつかんでいる。

 この商品は、足底部を下に置いた時、常にはき口が三角に口を開いて上に向かって立つ構造を持つ。加えて、はき口のふくらはぎ側に引き手が編み込まれてあり、着用者は、開いたはき口に足先を入れて引き手を上に軽く引っ張るだけでソックスをはける。従来の靴下のように両手を使ったり、着用時に腰を大きく曲げたり、足を高く上げたりする必要がない。脱げにくさも独自に開発したかかと部分の設計による。

 2017年にコーマの吉村盛善社長が原型を開発した。その後、若手の開発者がスポーツソックスのノウハウを応用し、フィット感を高めたほか、シリコーン製の滑り止めも施して刷新した。

〈アシックス/投球動作解析シャツ〉

 アシックスはスマートアパレル「e-skin」を展開するゼノマ(東京都大田区)との共同で、着て投げるだけで野球の投球フォームを評価することができる「投球動作解析e-skinシャツ」を開発した。

 体の動きを計測するモーションセンサー、各関節部位の動きを計測するストレッチセンサーを搭載しながら、着心地が良く洗濯耐久性に優れているのが同シャツの特徴と説明する。

 従来はモーションキャプチャーシステムで投球動作を解析するのが一般的だったが、高価な設備が必要で計測環境にも限界があったという。計測で得られたデータを指導現場で用いられる体の開きや胸の張りといった具体的な表現に落とし込むには専門的な知見が必要だった。

 同シャツで計測すれば、投球で重要な動き、見た目や映像では判別が難しい投球動作の細かな特徴を即時に抽出し評価できるという。