繊維製品とリサイクル/高まる消費者の共感/サプライチェーン連携が不可欠
2019年12月11日 (水曜日)
サステイナビリティー(持続可能性)への要求が高まる中、リサイクルやアップサイクルへの関心が高まる。だが繊維製品は再資源化の割合が極めて低いのが現状。こうした中、新たな方法で繊維製品リサイクルに取り組む動きがあり、消費者の共感も高まってきた。
(宇治光洋、桃井直人、川口直康)
繊維製品のリサイクル、アップサイクルで消費者から支持を集めているのが、アーバンリサーチが2018年に立ち上げた製品ブランド「コンポスト」。それまでは処分していた在庫衣料を反毛・樹脂含浸して再生したシート材を使った商品を企画した。第1弾の多目的収納バッグ「マルチパーポスバッグ」をネット通販を含む15店舗で販売したところ売り切れが続出した。
開発と生産に当たっては、繊維製品のリサイクル技術開発に取り組む研究者、デザイナー、企業で構成するネットワークやNPO法人の協力を得て、縫製を障害者に委託する。リサイクルだけでなく障害者の社会参加と雇用創出につなげることも大きな目的だ。こうした理念に消費者が共感したことがヒットの要因だと同社は分析する。
エドウインは自社縫製工場で発生する裁断くずをデニムの原料に再利用したジーンズ「コア・コットン・リサイクル」を20秋冬向けから販売する計画だ。同社はこれまでも裁断くずを車両向け不織布原料などとして提供してきたが、自社のジーンズへのリサイクルは新たな挑戦となる。
エドウインの取り組みにデニム生産で参画するのがクラボウ。同社は裁断くずを紡績原料に再生するプロジェクト「ループラス」を推進しているが、エドウインともループラスで連携する。また、ループラスによるデニムをエドウインへ供給するだけでなく、クラボウとして欧米へ輸出することも構想する。
染色関係では豊島が、廃棄予定の食材を再利用して染料に活用するプロジェクト「フードテキスタイル」に取り組む。捨てられていた野菜の切れ端やコーヒーの出がらしなどを食品メーカーから買い取り、染料を抽出する。500色をそろえ、綿素材を中心にTシャツやバッグなどを製品化した。
使用済み綿製品や綿の裁断くずを再生セルロース繊維の原料として活用する動きも本格化する。ダイワボウレーヨンは、スウェーデンのベンチャー企業と連携して古着ジーンズやデニムの裁断くずを脱色・パルプ化してレーヨンに再生した「リコビス」を開発した。
綿製品・綿裁断くずを再生セルロース繊維の原料に再利用する方法は、既にレンチングが精製セルロース繊維「テンセルリフィブラ」として開発しており、このほど量産技術にも成功した。今後、綿製品の新たなリサイクル法として注目されるだろう。
繊維製品のリサイクルに関してクラボウは「小売・アパレルとの連携が無ければ普及しない」と強調する。アーバンリサーチの萩原直樹執行役員も「店舗スタッフに企画の意義を理解してもらい、店頭で説明・提案できることが重要」と話す。繊維製品リサイクルは、サプライチェーン全体、そして異業種との連携によって消費者の共感を得ることが不可欠だと言える。