詰め襟学生服の“いま”(下)/多様性への対応も

2019年12月20日 (金曜日)

 学生服の機能性で競争が激化する一方、制服のブレザー化でLGBT(性的少数者)の潮流が一つの理由になっており、各社が対応を求められている。トンボや菅公学生服、明石グループのオゴー産業がジェンダーレスな制服を提案するほか、菅公学生服や明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は多様性を認め合うための活動を展開。学校側がスラックス・スカートの選択制を採用するケースも増え、学生服自体の環境が変わりつつある。

 菅公学生服はLGBTQ(Qはクエスチョンで自身の性自認や性的指向が定まっていない人々も含む)に対し、これまでGID(性同一性障害)学会への出展など多様性を認め合うための活動を続けてきた。

 自認の性が男性の場合は詰め襟服を、自認の性が女性の場合はセーラー服を着るなど“着たい制服”を着ることが当たり前の世の中にするためには、今後の取り組みが重要となる。同社学生工学研究所の三宅部長は「最適な制服の提案は引き続き模索が必要」としながらも「多様性を認め合うという観点では、どんな制服でも堂々と着ることができる世の中にするための支援が必要」と指摘する。10~20年後の実現を目標に活動する考えだ。

 明石SUCは、当事者の「心のケア」を前提として寄り添う活動を続けている。「レインボーサポート」の活動名で日本セクシャルマイノリティ協会とフレンドリー契約を結び、研修を受けた全国30人の専任スタッフ「レインボーサポーター」が各エリアのスタッフとして教育現場の課題に対応。丁寧に当事者の悩みを聴き取り、必要に応じてオーダーメイドの制服作りなどを行う。同社は12月に岡山県で30年ぶりの総合展示会を開き、併せてLGBTに関するセミナーも開催している。

 他方、LGBTの社会的な流れ次第で詰め襟服やセーラー服など「男性」「女性」を強く感じさせるアイテムは、さらに需要が減少したり特徴が抑えられたりすることも考えられる。制服のブレザー化と合わせて「スカートとスラックスとの併用も目立ってきている」(トンボの阿部本部長)など、既にその兆候はある。

 それでも、菅公学生服の三宅部長は20~40代を対象に調査を進める中で「学生時代に自認の性に合った制服を着たかった」との声を多く聞き、男性的な詰め襟服、女性的なセーラー服の需要が一定程度続くとの考えを示す。

 「楽しい学生生活の応援」が各社の取り組みの根底にある。付加価値化や多様性が求められる中で、各社は最新の動向を意識しつつ、より良い制服作りに努力している。

(おわり)