特集 染色加工(3)/厳しい環境を乗り切る各社の戦略
2019年08月30日 (金曜日)
〈利益重視の営業活動/価格転嫁、コスト削減も/大阪染工〉
大阪染工(大阪府島本町)は染料など各種コストが上昇する中、コスト削減や価格転嫁に取り組むとともに、利益を重視した営業活動を進める。
今期(2020年3月期)は、前期比増収で推移している。前期に減少していた官需向けの捺染が回復してきたことが増収に寄与。一方で、ここ数年堅調に推移していたワークウエア向けの加工はアパレルの在庫調整の影響により減少している。
10月以降の下半期については不透明だが、さらに染料価格など各種コストの上昇に対し、コスト削減を進めるとともに価格転嫁に向けた交渉も粘り強く進めていく。染料は調達が難しくなるなどの心配もあるため、代替染料についても検討、研究する。
コスト削減に向けては、生地メーカーだけでなく、その先のアパレルにまで説明し、ロットをまとめた効率的な発注を促す。そのほか、物流費も上昇しており、これまで複数だった納品先を一カ所にまとめてもらうなどの取り組みも進めている。
〈独自加工で高付加価値品特化/設備も積極的に更新/フジボウテキスタイル〉
富士紡グループのフジボウテキスタイルはニット染色加工の和歌山工場(和歌山市)で独自技術を生かした高付加価値加工への特化を進める。設備投資も積極的に実施する。
和歌山工場は富士紡グループ内からの受注に加えて、工場独自での営業活動を強化してきた。このため現在、受注の80%以上がグループ外の商社やテキスタイルメーカーからとなる。
「独自技術を生かした高付加価値加工への特化を進めている」(新宅孝敏工場長)とし、微起毛調加工「ローズペトール」や汗染み防止加工「ディスノーティス」、同じ生機でさまざまな風合いを実現するグレース加工などの評価が高い。風合いが硬くなりがちなシルケット加工でソフトな風合いを実現する加工の開発にも取り組む。和歌山産地のニッターとの取り組みにも力を入れており、産地企業を通じて輸出向け加工の拡大も目指している。
設備投資も進めた。現在、液流染色機を新型の低浴比タイプに順次更新しており、染料や水使用量の削減を目指す。サンプル染色機も更新を予定しており、サンプル染色だけでなく、極小ロットの受注にも対応できるようになる。
〈アパレル向け開発強化/海外でも高評価/吉田染工/貴志川工業〉
糸染めの吉田染工とグループ会社で編み地染色加工の貴志川工業(ともに和歌山県紀の川市)はアパレル向けの商品開発を強化し、生地販売にも力を入れる。
吉田染工は、「ホールガーメント」横編み機1台、「SRY」横編み機3台を持ち、生地販売にも力を入れてきた。7月から元編み機メーカーの人員を採用し、アパレル向けの開発をさらに強化している。地元のニッターなどと開発した生地を貴志川工業で加工した生地の販売も今年からスタート。7月の「ミラノ・ウニカ」(MU)には極端に固い仕上げや柔らかい仕上げの生地などを出品し好評だった。
アパレル向けの提案には2017年に開設した東京事務所も活用している。小ロットから受注し、若手デザイナーなどにも対応する。海外販売に向けては出展を継続するMUのほか、米国のニューヨークでの展示会参加も検討する。
貴志川工業ではこれまでボトルネックとなっていたテンターを1台増設し、計4台体制とする。来春までに新たに建屋を建築し、そのほかに水洗機なども入れる計画だ。
〈飯田繊工/丸胴の毛焼き可能に/風合い加工に新タイプ〉
編み地染色加工の飯田繊工(大阪市東淀川区)は、丸編み地を切り開かず、丸胴のまま毛焼きすることを可能にした。綿高率混編み地の加工として人気の「シードル」と「キール」の新タイプも開発した。
丸胴のまま毛焼きできる工場は珍しい。既存設備を改造して、それを可能にした。インナーや婦人アウター分野からの需要を見込んでいる。
レーヨン使いのようなドレープ性などを付与するシードルと、仕立て映えのするハリ感などを与えるキールの両加工の新タイプは、「ほとんど使っていなかった」設備を活用して開発した。光沢などが高まるのが特徴で、それぞれ「ロイヤル・シードル」「ロイヤル・キール」と名付けて受注している。
2019年9月期は、売上高、最終利益ともに前期比10%増の見込み。そうなれば、前々期の水準に回復することになる。染料・薬剤コストは上がったが、加工賃の値上げやコスト削減に加え、婦人アウター、紳士スポーツなど新規分野からの受注が安定したことが業績回復に寄与している。
〈多彩な顔持つ染工場/助言や色見本帳販売も/シンドー〉
丸編み地染色加工のシンドー(大阪市都島区)は多彩な顔を持つ。インナー素材を中心に染色加工を行うとともに、同じ敷地内にある二つの子会社を通じて小ロット・短納期対応や、染色加工に関するコンサルタント、さらには色見本帳の製作販売も行っている。
シンドー本体は、丸編み地を切り開かず、難度の高い丸胴の状態で染色加工することを売りに、主にインナー素材を手掛ける。「量を追わず、職人技を生かして価値の高い染色加工に力を入れる」方針が奏功し、売上高はこの4、5年、9億5千万円前後で安定している。
小ロット・短納期の丸編み地染色加工を担うのは、1991年に設立したバイテックス(2005年にV―TECに社名変更)。手間のかかる仕事を請ける分加工賃は高いが、同業他社からの加工依頼も舞い込む。顧客数は、シンドーよりも多いという。
コンサルタント業務は、IT―Partnersが担う。同社は、2339色の綿生地を収録した色見本帳や、2250色のポリエステル生地を、カラーチップ形式で納めた箱も販売している。
〈外注先減少で対策/新商品や内製化など/オザワ繊工〉
チーズ染色、綛(かせ)染めのオザワ繊工(愛知県一宮市)は外注先の高齢化に伴う能力減対策としてさまざまな手立てを講じる。綛染め後の綛繰りの外注先の減少は綛染め並みのバルキー性を持つチーズ染色を新開発。チーズ染色前の巻き取りを行うソフト巻きワインダー内製化も進めており、9月に180錘増の1320錘体制にする。
バルキー性のあるチーズ染色は今年から本格生産を始めた。風合い面で綛染めと差があるものの、バルキー性は同等。「別注品での採用を徐々に進めながら、認知度を高めていきたい」(小澤俊夫社長)としている。
同社の今上半期(2019年4~9月)は綛染めの備蓄生産が進み、受注量は堅調だったが、出荷量は「前年に比べて20%減」と低調。主力の靴下、セーター向けとも荷動きが悪く「下半期以降が懸念される」と先行きは不透明感が強まる。
一方で染料などコストアップが著しい中、定評のある省エネ活動に取り組むが、それだけではカバーできないとして今年4月に続いて、コスト上昇に伴う加工料金の改定にも着手する。
〈導電糸の新案件期待/受注回復へ提案強化/茶久染色〉
チーズ染色が主力の茶久染色(愛知県一宮市)は自主販売する導電糸「Qnac(キューナック)」シリーズで、ヒーター用の拡大を見込む。Qnacシリーズはカーボンナノチューブをポリエステル長繊維にコーティングしたもの。電気を通しヒーターとして使うQnac―Tと、電線用のQnac―Sをそろえる。
Qnac―Tは今年、受託加工から自主販売に移行した。これまでに高速道路などのETCゲートの融雪マット用面状発熱体向けで実績はあったが「現在、新案件が進行中」(今枝憲彦社長)で、下期以降の採用に期待する。Qnac―Sも「性能向上が進んできた」と物性面での手応えを示し、用途開拓に力を入れる。
今上半期(2019年4~9月)業績は受注量が前年同期比10%減で推移するなど苦戦。このため「地道な提案活動を行いながら、下半期の受注量の回復に努める」ことで通期での落ち込みを「できる限り抑えたい」と話す。
染料・薬剤の高騰などコスト上昇で利益が圧迫されているため、加工料金への転嫁にも取り組む。
〈徹底した色合わせ強み/新規開拓も着実に進む/伴染工〉
綛(かせ)染めの伴染工(愛知県一宮市)は徹底した色合わせを強みに顧客からの高い品質ニーズにも対応できる。市況は依然として厳しいが、新規顧客の開拓が進み受注量は横ばいから微増と健闘している。
売上高の比率はファッション衣料向けが8割、資材向けが2割。資材向けはヘアーカラー剤の色見本用髪束の染色で年間安定した受注を得ている。主要な顧客は尾州のニッターや生地商社などで、他産地からの発注も徐々に増えていると言う。
尾州産地の今秋冬向けの受注は暖冬による店頭販売の不振が影響し、総じて低調だった。しかも、ニットはここ数年低迷が続いており、ニット向けを主力とする同社にとっては、依然として厳しい状況が続く。
そうした中、来年をめどに工場の建て替えを実施する。労働環境を整備して人材確保に力を入れるほか、現場での作業の動線などを見直し生産の効率化や省エネにもつなげたい考えだ。
課題は染料の高騰。加工料金の改定を進めているが、それを上回るほどのスピードで価格が上昇し利益を圧迫している。
〈わた染め強み生かす/高性能繊維の染色も可能/栄光染色〉
わた染めが主力の栄光染色(愛知県一宮市)は2018年11月1日、豊島紡績(名古屋市中区)の子会社となり、豊島グループの一社として新スタートを切った。
菱川純治社長は今後について「人材、設備など優先順位を決めながらどのような手を打っていくかが課題になる」と話す。
わた染めは糸染めや生地染めに比べて求められる色を表現でき、色ぶれもなく、染色堅ろう度も高いのが特徴。梳毛紡用、綿紡用、紡毛用、合繊紡などあらゆる紡績向けを手掛けるが、学生服など向けのポリエステル・ウール混が多い。
わた染めのほか、チーズ染色、トップ染めも行い、カード機、コーマ機まで保有する。
機能性付与などさまざまな後加工もできる。その強みを生かして、衛生材料向けを中心とする綿やレーヨンのわた晒し、染色難度が高い高性能繊維の染色も行っており、産業資材向けの加工にも力を入れる。
2020年7月期の受注状況は「やや弱い」一方、染料が高騰しているため、昨年に続き加工料金の改定も予定している。
〈品質、納期を徹底/JYF通じ新規開拓も/森保染色〉
チーズ染色、原料染め、綛(かせ)染めを行う森保染色(愛知県一宮市)は「基本である品質と納期対応を徹底する」(早川典雄社長)ことに重点を置く。
2020年2月期は19秋冬向けが早めに終了したこともあり、上半期の生産量が前年同期比10%減で推移する。下半期も「先行き見通しは読みにくい」が、品質安定と納期対応の徹底に力を入れるとともに、この数年、取り組む閑散期である春夏向けの開拓が「少しずつ形になっている。今後もきめ細かく対応しながら結果に結び付けていく」と言う。
新規顧客の開拓に向けては愛知県一宮市で開催される「ジャパン・ヤーン・フェア」(JYF)に18、19年と2年連続で出展した。「JYFを通じて、尾州産地以外の企業も含めて開発段階で取り組む先が増えている」と手応えを示し、20年のJYFも出展を予定する。
こうした商品開発、用途開拓に粘り強く取り組む上で「出口を持つ企業との連携も重要。1社だけでは限界がある」として、共同開発にも力を入れる。
〈事業領域の拡大実る/取組型で海外スポーツなど/ソトー〉
ソトーはこの数年、課題に掲げてきたスポーツ・ユニフォーム・インナー・海外など事業領域の拡大が実りつつある。
3年前はグループ全体の約90%を国内ファッション衣料、残る10%もファッション衣料の輸出向けだったが、現在は国内ファッション衣料向けが80%弱。「バランスの取れた事業構造に向けた領域拡大が進んでいる」(浜田光雄常務)と見る。
先行きも「ファッション衣料分野は不透明も、ファッション衣料以外は見えている部分がある、非ファッションでどれだけカバーできるか」を課題に挙げる。特にスポーツウエア向けに期待。「海外企業と取り組み型ビジネスが構築できつつあり、さらに伸ばせる段階に来た」。
ユニフォームも織物に加え、編み地にも広げつつあり、今後は同分野向けも強みの風合い加工だけでなく、機能加工にも力を入れる。
2019年4~6月期の連結業績は増収も2桁%の減益だった。今期はコストが上昇する中で加工料金の改定に取り組む一方、「染色改革」と呼ぶコスト削減を推進しており、染色機の低浴比化も図る。
〈合繊・麻複合加工に重点/秋冬はウールライク投入/岐セン〉
岐センは主力である春夏の婦人服地向けで麻ライク加工や合繊・麻複合加工に力を入れるとともに、秋冬向けはウールライク加工「ルミュールNEO」を新開発し、裏シーズンの強化も図る。
19春夏は麻ライクな表面感を施す「ナット」やマスクメロン調のシワ感を持つ「コモルミーMSK」などがヒット。20春夏向けも堅調に推移すると見る。同時にフェミニンへのトレンド変化もあり、これに対応した開発も進める。
一方、秋冬はルミュールNEOに期待する。特殊な物理的加工で微起毛感を付与し、ウールのようなウオーム感を再現した。20秋冬向けから受託加工とテキスタイルの自主販売で初年度2万㍍を見込む。
今期は同社初の中期経営計画2年目。単体で売上高33億円(前期比3・4%増)、営業利益1億200万円(2・3%減)、経常利益8400万円(14・9%減)、純利益5500万円(4・8%減)を予想する。後藤勝則社長は「染料・薬剤価格の上昇に対しては個々に加工料金への転嫁を交渉しているが、利益面では厳しい」と話す。
〈次世代へ新加工提案/人工皮革対応も充実/尾張整染〉
カーシート地の染色加工が主力の尾張整染(愛知県一宮市)は次世代に向けた新加工提案を行っている。2年に1度行う「加工技術プレゼンテーション」で47の新加工を打ち出している。同プレゼンテーションには毎回、自動車以外にインテリア、家電、衣料などさまざまな業種が来場し「新規顧客の開拓に結び付いている」と中島俊広取締役車輌インテリア事業部長は言う。
6回目となる今回は本革や人工皮革のような表面感、風合いを持つ新加工を充実。「クミーイル くおいお」は本革のようなしっとり感としなやかさを実現。「ノヴェル パーツ」は織物でスエード調に仕上げストレッチ性も付与。その他、本革調で通気性と伸縮性を与えた「ランボス ビヨン」や黒原着による割繊糸を使い特殊加工を施したスエードタイプをそろえた。
同社の2019年4~6月は当初計画を上回ったが、7~9月は苦戦する。染料など製造コストも上昇する中で、新商品でコスト上昇分の加工料金に転嫁する一方、自助努力として生産効率の向上などに取り組む。
〈受注確保へ新加工も投入/ロボットスーツ5%増へ/艶金化学繊維〉
丸編み地染色加工の艶金化学繊維(岐阜県大垣市)は2020年1月期、受託加工が「上半期は前年同期比5%減。先行きも厳しい」(墨勇志社長)とみる。染料価格などコストも上昇するが「納期対応も強化し、まずは受注確保が先決」とし、その一環で新加工も投入した。
一つは可視光線・赤外線を反射し衣服内の温度上昇を抑制し涼感性を付与する「パラソル加工」。もう一つは特殊樹脂を使用し生地のストレッチ性を高め、ボリュームのある反発性、伸長回復性を付与する「iO(イオ)加工」。ともに20春夏向けで好評と言う。
一方、自主販売は丸編み地製品であるロボットスーツ(ロボットのアーム部分を覆う製品)は車の塗装用に加えクーラント対応品や耐熱対応品などを含め、前期同様に、5%増収を目指す。自動車向け以外も含めた需要増に対応し、自社のミシンも15台まで増設した。
廃棄食材を原料にした「のこり染」によるフードラップ「のこり染エコラップ」にも期待。丸編み地販売は今期の回復に向け新たにプリント生地製造卸と提携した。
〈品質向上でロス削減/プラスアルファの提案も/サカイナゴヤ〉
ユニフォーム地の染色加工を主力とするサカイナゴヤ(愛知県稲沢市)は引き続き品質向上によるロスの削減に取り組む。中谷好秀社長は「品質追求が生産力につながり、効率化に結び付く」と語る。同社は合繊長繊維染色大手、サカイオーベックスの子会社。品質向上の成果は表れているが「まだまだやるべきことがある」とし、一つ一つの作業を見直し、工程内でロスなく操業するには「人材育成が欠かせない」とも指摘し、従業員教育に力を入れる。
開発の強化やスピードアップにも取り組む。短期、長期に分けながら「求められるものに対応するだけでなく、さらに一つ、二つのプラスアルファを提案できる体制に変えていきたい」考え。そのためにも発注者との連携を一段と強固にする。織物、編み地、ボンディングの連携による開発にも力を入れる。
9月には液流染色機2台を更新、12月末には染色助剤の自動計量投入装置を導入するなど生産体制も整備するが、染料などコスト上昇をカバーしきれないため、加工料金への転嫁にも取り組む。




