再生セルロース繊維企業/セルロースの循環経済へ/廃棄繊維のリサイクルが加速

2020年01月10日 (金曜日)

 世界的にサステイナビリティー(持続可能性)への要求が強まり、繊維分野でもリサイクル・アップサイクルへの注目が高まる中、レーヨンなど再生セルロース繊維のメーカーが廃棄繊維や廃紙などセルロース系素材を繊維の原料として再利用する取り組みを加速させている。セルロースのサーキュラーエコノミー(循環経済)構築への動きが具体化しつつある。(宇治光洋)

 セルロースは地球上に最も豊富に存在する炭水化物(多糖類)であり、繊維素とされる。木材や綿花はいずれもセルロースで構成されており、パルプ化して抄紙(しょうし)すれば紙となり、化学的に溶解して繊維状に再生すればレーヨンなどの再生セルロース繊維となる。このため原理的には使用済の繊維製品や紙製品を溶解して繊維化することで再利用が可能となる。

 これを利用していち早く繊維製品のリサイクル・アップサイクルに取り組んだのがレンチング。グローバルSPAと連携して裁断工程で発生する裁断くずなど廃棄綿布を精製セルロース繊維「テンセル」に再生した「テンセルリフィブラ」を開発している。さらに昨年には消費者が使用した綿製品の廃棄物を原料として再利用した量産技術を確立した。

 日本でも再生セルロース繊維メーカーの動きが活発化している。ダイワボウレーヨンはスウェーデンのパルプ関連ベンチャー企業と連携して使用済み綿製衣料や裁断くずなどを原料に再利用したレーヨン短繊維「リコビス」を開発した。

 昨年12月に東京で開催された環境総合展示会「エコプロ2019」に出展し、使用済みデニム製品から再生したリコビスを披露した。ポリエステル綿混など混紡品の再原料化の研究にも取り組む。

 紙分野での連携を進めているのがオーミケンシ。同社は早くから非木質原料によるレーヨン短繊維「リテラ」を開発しているが、その一つに古紙再生レーヨンがある。これまでも原爆死没者慰霊で全国から広島市に送られてくる千羽鶴をレーヨン短繊維に再生した折り鶴レーヨンを実用化するなど豊富な実績がある。

 これを応用し、廃棄紙製品をレーヨン原料として再利用する仕組み作りを進めている。既に大手飲料企業や衛材企業などから協力のオファーが寄せられている。企業としてSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが求められる中で、再生セルロース繊維企業と連携し廃棄物のリサイクル・アップサイクルに取り組みたいという声が出てきたことが背景にある。このためオーミケンシは廃紙や使用済み紙製品を原料とするレーヨンの量産技術の確立を急ぐ。

 繊維に限らず、あらゆる素材、分野でリサイクル・アップサイクルの取り組みの重要性が高まる中、セルロース系素材によるサーキュラーエコノミーが業種・分野を超えて広がるのか注目される。