特集 20春夏オフィス&サービスウエア(4)/商社編/安定供給へ生産設備確保

2020年01月31日 (金曜日)

 カジュアル衣料などに対して比較的安定的とされてきたオフィス・サービスウエアのユニフォーム市場。しかし、内情は好調なサービスウエアに対して、オフィスウエアは失速傾向にある。加えて、主力生産地であるベトナムの人件費高騰問題や海外有力アパレルとのライン獲得競争など、国境を越えたグローバルな課題も次々と発生。商社の力が一層求められる時代に突入している。

〈サステ素材群「MY WILL」全社で積極提案/豊島〉

 米中貿易摩擦の余波を被るASEAN地域の生産キャパシティーの問題など、ユニフォーム生産を巡る外部環境は目まぐるしく変化している。豊島の場合、ベトナムにある自社工場「トヨシマ・ロンアン・ガーメント」の存在が大きい。

 現在年間生産量は約10万枚。多品種小ロットでオフィス・レディースウエアを品質、価格の両面で安定して供給できる点が大きな強みとなっている。目標生産量は15万枚。自社以外の生産については、中国とASEAN地域内では適材適所で生産拠点を決めていく。

 2020年6月期上半期(19年7~12月)のユニフォーム事業の商況は厳しい状況となったが、会社全体で取り組むサステイナブル(持続可能な)素材群「MY WILL」(マイウィル)の積極提案を推進していく。中でも日本環境設計の「ブリング」や、オーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」に対するニーズは確実にあるため、足元を固めつつ、次につなげていく方針。

 20秋冬の提案テーマは“モノ”から“コト”。ユニフォーム生地では、カジュアルスーツで使われている合繊素材や、ストレッチ性のあるニットまたは布帛、「ブリングプロジェクト」で再生した素材を使った生地、製品などを紹介している。

〈ワーク・サービスに商機見出す/丸紅〉

 ユニフォーム市場について「方法によってはまだまだ成長の余地はある」と話すのは、機能繊維部の田口亘ユニフォーム課長。

 ASEAN地域における生産戦略については 数量ベースで見ると、引き続きベトナムが主力だが、インドネシア・ジャワ島中部での生産も増やしている。

 ベトナムの人件費高騰が主な要因だが、元々バティックという民族衣装の産地だったので縫製工場が多く、賃金もベトナムほどではなく進出のハードルは低いと言う。

 ただ、欧米アパレルも同様の視点から同地域への進出を図っており、工場のライン争奪戦も徐々に増している。そのような中、丸紅グループや各国の取り組み先企業などと協力して技術指導も行い、安定供給体制を構築している。

 下半期(19年10月~20年3月)に取り組んでいる課題としては、カタログ定番品のリピート品減少を新商品でどれだけカバーしていけるかがポイントになっている。

 東京五輪・パラリンピック大会や大阪・関西万博に向けては、具体的な案件があるわけではないものの、中期的には都市部のインフラ整備に関する作業服需要や、インバウンド効果による接客業向け商品を2本柱として期待している。

 加えてメディカルウエア分野もチャンスがあるとみる。

〈ミャンマー工場が強み/日鉄物産〉

 2019年4~12月期のユニフォーム事業の商況は、グループ企業ネットワークも生かしながら堅調に推移した。

 企業用ユニフォームではミャンマーとベトナムが生産拠点として強みとなっている。ミャンマーでは設備貸与している工場が2社あり、今後はマーケットニーズに合わせてさらにブラッシュアップし強化していく。ベトナムについては地域によってオフィスとワーキングの工場が分かれているため、今後設備貸与を含めて検討していく。「商社の得意とする適材適所で生産拠点を見いだすことが大切」と繊維事業本部機能衣料部の藤原英剛部長。生地開発はこれまで素材開発グループがインドネシアで行ってきたがベトナムでも始めている。

 来期(21年3月期)に向けての重点課題は、「製造の可視化」。進捗(しんちょく)管理、余力管理を見定めて生産効率を向上させていく。品質を担保した安定供給とともに、“クオリティー”“コスト”“デリバリー”の強化につなげていくという。加えてサステイナビリティー(持続可能性)を基にした素材開発では、製造コスト、顧客ニーズに合わせた販売価格など、ビジネスにどうやってひも付けていくかという点から取り組んでいく。

〈4つの方向性示し強化図る/ユニコ〉

 伊藤忠商事100%子会社でユニフォームの企画・製造・販売を手掛けるユニコ(東京都中央区)は昨年、日本航空(JAL)が4月から使用する客室乗務員、地上接客部門などの制服や、イトーヨーカドーといった大口案件を受注した。一般企業に向け大きなアピールとなり、今後のOEM/ODMの拡大に弾みを付けた。

 同社は中長期の方向性として、ユーザーに直接出向いての情報収集、百貨店・アパレルとのOEM/ODM、レンタル事業、新ビジネスの4点を打ち出している。「これらのどれか一つではなく、全て動かしていくことが大事」と、華井義徳取締役営業本部長。

 百貨店・アパレルとの協業では、情報収集力やプレゼンテーション力のあるパートナーとして認知してもらえるかどうかがポイントとなる。ニーズが増えるとみているレンタル事業については、これまで活用し切れていなかった部分も含め、改めて強化していくという。提案時のツールとして、生産工場や企画、販売プラットフォーム、伊藤忠独自の環境配慮型素材ブランド「レニュー」などとともに、レンタル事業を加わえることで強みにしたい考え。

 新ビジネスについては、持っているリソースを有効活用できるようなアイデアを枠にとらわれずに挙げてほしいと社員に呼び掛けている。