「ミラノ・ウニカ21春夏」閉幕/来場減も濃い商談内容/JOB全体への滞留に課題
2020年02月10日 (月曜日)
【ミラノ=泉克典】「ミラノ・ウニカ(MU)21春夏」が6日、3日間の会期を終えて閉幕した。日本コーナー「ザ・ジャパン・オブザーバトリー(JOB)」来場者は昨年2月展より少なく、7月展(20春夏)比でも減った印象だが、著名ブランドバイヤー来訪は一定数を確保。各ブースも多くが訪問者数で伸び悩む中「打ち出しに狙い通りピックアップが集中」「以前より具体性ある商談が多い」など提案自体に感触をつかむ企業も少なくない。
日本貿易振興機構(ジェトロ)とJOBを主催する日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW)によると、MU全体の来場者数は「初日が昨年比2%増、2日目もまずます。ミュンヘンの国際見本市との日程重複や新型肺炎の中満足な数字」とMU主催者は見ている。
主要国ではドイツが上記理由で減ったのみで、米国は15%増、英国の来場者も増えた。JOBにほぼ姿のなかった中国の来場者の姿も、春節と完全に重なった昨年比だが10%増だった。
JOB訪問者数については「2、3日目で盛り返したが、初日の大幅減が響いた」と言う。会場レイアウト変更で「MUトレンドコーナーとMU中核のイデアビエラ展を結ぶ動線から外れた」のも要因と見て、JFWは次回展での改善を既にMUに要望した。「2日目以降、JOBトレンドを見る限り、にぎわいはあり」、初日約30件、2日目は再来場含む約50件のハイブランドのバイヤーが来訪した。個社の認知が進み、目当ての特定ブースを訪れる継続訪問客を、JOB全体に回遊させる仕掛けが今後求められそうだ。
初日から常に来場者が途切れなかったスタイレムは「今回も「前年並みのJOB最上位の商談件数」を確保した。「固定客維持と新規客誘引、ブランド認知拡大を大命題に、商品力・対応力など総合性を磨いて、事前事後のフォロー体制も整えてきた成果」と言う。瀧定名古屋も90件以上を確保。「昨年比で数社減。主にアジア系のへこみで、欧州客には新型肺炎の影響は実質なく、新規客が増えたほど」と説明する。
初出展企業も健闘した。和装向けのしじら織りを洋装服地にアレンジした長尾織布(徳島市)も会期を通して訪問客でにぎわい、亀田繊維工業協同組合の「亀田縞」、「ジャパンデニム」プロジェクトの両地域ブランドもまずまずの客入り。ジャパンデニムに初出展の坂本デニム(福山市)は「自販生地より、省エネで厳格な排水基準もパスするエコ染色システムの訴求がメイン」だが「天然藍やヘンプ、カポックなど珍しい天然原料のデニムも想像以上の人気だった」。
遠孫織布も初日に少量ながらバルク発注を得るなど初出展ながら順調な滑り出しを見せた。朝日染色も現地コンバーターと双方の捺染地を日伊で相互に供給販売し合う取り組みへの足掛かりを得たほか、イタリアに限らず、トルコやデンマークなど周辺国の高級ブランドからの好反応も得て、「手捺染のニーズを欧州で探るという当初目的からすれば、想像以上の成果」と話す。
〈中国人来場の対応に苦慮〉
今回のMUでは、JOBで中国、アジア系の来場者の姿を見掛けることは極めて少なく問題視されなかったが、イデアビエラ展など他エリアの出展者の一部では、新型肺炎を受けて、欧州からの来場客に配慮して中国からの来場者のブース入場を断るケースもあったようだ。
これを受けて、今週のプルミエール・ヴィジョン(PV)パリにMUと掛け持ちで出展する数社のJOB出展者で、PVでの対応について意見交換する風景も見られた。
PVではブース面積を広く取り、複数客と同時に対応する機会がMUより格段に増えることは、大いに予想される。
とはいえ「現地法人を置き中国向け商売も多くある中で、そんな“人種差別”めいた対応は到底できない」という意見の一方で、「大多数の欧州客に不安を与え、集客に響かないか、大いに懸念がある」と、いずれの選択肢を取るにせよ悩ましげなやり取りが交わされていた。




