技術の眼(YKK、新日本繊維、テンタック、空調服)
2020年02月10日 (月曜日)
「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。
〈YKK/内から外へ〉
YKKが軽く、薄く、柔らかい最小ファスナー「ミニファ」を販売したのは20年以上前である。パスポートなどを落とさないジャケットの内ポケット向けに開発され、玩具人形が着る服にも利用された。
同社のサイズでは№0に当たり、№3のコイルファスナーに比べて約4割軽く、薄い。柔軟性も約4倍ある。「ナイロンのエレメント(務歯)とポリエステルのテープを同時に織り込む」技術は、日本の黒部工場にしかないジャパン・オンリーの商品である。
同社はミニファの用途を広げるため、スライダーのバリエーション開発を進めている。引手をひもタイプにしたものの販売を開始。現在は、引手をスライダーに固定するステイダウンタイプの開発を進めている。「内ポケットだけでなく、外ポケットや、アウトドアウエアでのベンチレーション使いにも提案したい」としている。
〈新日本繊維/石炭灰を使った繊維〉
素材開発スタートアップ企業の新日本繊維(千葉県我孫子市)は、放射線に対して高い耐性を持つ繊維を開発した。石炭灰が原料で、軽量性や強度などに優れている。今夏にパイロットプラントで生産を始め、宇宙領域や原子力関連分野などに提案する。2021年度下半期からの量産化に向け、パートナー企業を探す。
新繊維「バッシュファイバー」は、火力発電所で発生する石炭灰を活用。石炭灰を1200~1400℃の熱で溶かし、紡糸する。繊維径は10~30¥文字(G0-ACA3)㍍。鉄と比べて比重が3分の1程度でありながら、約5倍の強度を持つ。軽量高強度素材として普及している炭素繊維よりも低コストで製造できる。
石炭灰は、石炭の燃え残りでガラスや酸化鉄を含んでいることから放射線への耐性が高いと言われる。欧州の原子力センターで原子炉に1カ月間放射線にさらす試験を行ったが、繊維は崩壊しなかった。
〈テンタック/CO2削減のプラ製品〉
副資材製造卸のテンタック(東京都新宿区)は、プラスチックを焼却処分する際にCO2(二酸化炭素)の排出を大幅に抑制する技術「グリーンナノ」を使った製品の提案を強める。ハンガーやフックなどの服飾副資材に加え、取り扱う製品の領域をレジ袋まで広げた。
グリーンナノは、従来のプラスチック製品の原料に、炭化促進剤をリン脂質の膜で包んだナノベシクルカプセルを含むペレットを少量加える製法をいう。焼却時に炭素が灰に閉じ込められるため、大気中に放出されるCO2を減らせる。炭化促進剤などを膜で包むことで、プラスチックの強度の低下や白濁の原因となる添加物同士の凝集を防止する。原料全体に対し、ペレットの混入率は3%程度で効果を発揮する。
東京理科大学発のベンチャー、アクテイブ(千葉県野田市)が開発した。テンタックは、アクテイブとアパレル関連の副資材や包装資材の製造・販売を独占的に扱う契約を結んだ。
〈空調服/ベビー向け空調グッズ〉
電動ファン(EF)付きウエア「空調服」を製造販売する空調服(東京都板橋区)はこのほど、ベビー用品のダッドウェイ(横浜市)とコラボレーションした「空調ベビーカーシート」と「空調抱っこひもカバー」を開発した。今春から順次発売する。
3月末発売予定の空調ベビーカーシートは、乳幼児の背中と背筋にファンで風を送り込み、気化熱で涼しさを持続させることで、夏の外出の快適性を向上させる。
4月末発売予定の空調抱っこひもカバーは、熱のこもった抱っこひもにファンで風を送り込み気化熱で涼しさを持続させる。価格はいずれも1万4300円。
同社は、異業種のトップ企業とのコラボレーションに力を入れている。2019年から取り組んでいるゴルフメーカーのプロギアとの連携もその一例で、20年はダッドウェイの他、アウトドア用品のビッグウイングとの商品化を既に具体化している。
〈日本コパック/エコ素材のマネキン〉
副資材製造卸の日本コパック(東京都台東区)は、植物由来のエコ繊維を100%使用したマネキンの提案を開始する。販売の際には、使用済みになったマネキンを回収し、サーマルリサイクルの燃料として再利用するサービスを盛り込む。エコな副資材の開発、普及に力を注ぐ方針の一環。
ガラス繊維などで強化した樹脂素材「FRP」で製造された従来のマネキンは、使用済みになると産業廃棄物として焼却か埋め立てにより処分される。マネキンを使用するアパレル店舗にとって、処分のためのコストと手間が負担となる。植物由来のマネキンの使用は、処分に要するコストの負担を低減しながら、環境保護の貢献にもつながる。
回収したマネキンはパーツごとに分解し、本体部分を細かく裁断した後に固め、暖房や発電の熱源となる固形燃料に作り変える。こうした回収スキームの成果によって、リサイクル証明書を発行することもできる。
〈フランスベッド/重みで安心感と安全を〉
フランスベッドはこのほど、認知症や発達障害の人の精神的な安心感と安眠をサポートする重みのある掛け布団「ウェイテッドハグふとん」を開発した。
なぜ重みが必要なのか。認知症者や発達障害者は寝付きが悪く徘徊や騒ぐことがあるが、適度な重さと圧刺激がある布団を掛けることで、精神的な落ち着きや安眠を促せるという。
同社は2015年から、当事者とその家族、施設などの協力を得て臨床評価を行い、日本人になじみやすいウェイテッドハグふとんを開発した。
暖房を付けずに眠り、重い綿布団に慣れ親しんだ日本の高齢者に合うよう、ブランケットではなく、包まれ感のある3層構造の掛け布団にした。極細ポリエステル繊維の詰め物で羽毛布団と同等の保温性を備える。重量はモニター評価で満足度が高かった6キロにした。




