「PVパリ21春夏」開幕/サステ・創造性の接続へ/カラーは穏やかさと同居する躍動感
2020年02月13日 (木曜日)
【パリ=泉克典】21春夏の生地トレンドを発信する「プルミエール・ヴィジョン(PV)・パリ21春夏」が11日、フランス・パリのノール・ヴィルパント見本市会場で開幕した。会場全体を飾るテーマカラーの「地球上の空」と題された淡くややくすんだブルーのほか、優しく爽やかだが躍動感あるトレンドカラーがそろった。
「地球=グローブをきちんと見つめ、空、海、森など地上で人間に不可欠な色が選ばれた」と同展のトレンド協議会日本代表を務める池西美知子氏は説明する。他方、「紫コショウ」と銘打った穏やかだがインパクトある色も。「単純に自然色/人工色と分けられず、落ち着いた色彩感の陰に現代的・テクノ的要素も垣間見える」選ばれ方と言う。
カラーが暗示するように今回の見どころは「サステイナビリティー(持続可能性)を実現する諸テクノロジーをクリエーティビティーとどう接続・架橋するか」だと池西氏。
持続可能性へのアプローチはエシカル(倫理性)の観点で深堀りが続く。環境意識の高い欧州で、原料のトレーサビリティー(追跡可能性)、水・薬剤の使用量削減、さらに生分解性など製品ライフサイクルへの注目など、素材からは見えづらい生産工程での好循環の実現に向けて、ますます多様化する。
表現面でも、これらの技術を背景に持つ原料・加工を利用して「感性的な魅力を引き出そうとする”アップサイクル”的観点が不可欠」と言う。平滑な薄地主体の春夏生地では、サッカー素材の進化や、節糸、シワ加工による凹凸感など表面効果の追求が表現上の焦点となる。
「光、水面のゆらぎに着想を得たいろいろな意味での動きの表現がポイント。加えて、メッシュによる半透明感、ハリ感やストレッチで薄地に空気感と丸みの形を与える、立体表現の追求も重要」。太番手糸の天然繊維使いなどで視覚・触感双方からの実体感・構築感を表現する逆方向のアプローチも他方で目を引く。
カラーも同系色を集めると、その色相の微妙なバリエーション、トーンの幅が見逃せない。例えば、引き続きブラウンを始め暖色は重要だが、爽やかな寒色、ブルーも浮上する。ただし、青々とした青に限らず、グレイッシュな青から空色まで幅広い。「自然とテクノロジーの共生という方向性はこんなところにも現れている」と見る。
同展には日本企業55社(新規出展は5社)を含む48の国・地域から1755社(うち148社が新規出展)が出展している。会期は今日13日まで。
〈PVのラズボルドGM/会期変更は大勢の要望で/企画早期化・分散化に応える〉
プルミエール・ヴィジョン(PV)のジル・ラズボルドゼネラルマネジャー(GM)は初日恒例の記者会見の冒頭で、開幕直前に発表した2021年からの会期前倒しの意図を改めて以下の各点から説明した。
ラズボルドGMは「シーズン性は依然として重要」としながらも「近年のプレコレクション定着で商品の店頭に並ぶ時期が早期化している。コレクション発表リズムの間隔が狭くなったことで各企画の早期化への対応が急務」として、ラグジュアリーブランドからミドルレンジにわたる詳細なコレクション回数、商品デリバリー回数の分析結果を報告した。
昨年実施した来場ブランド、出展者双方の意向調査でも、春夏会期の前倒しを望む声が7割前後に上ったことを挙げ、春夏展の2月上旬開催、秋冬展の7月上旬への会期前倒しについて、「顧客の要望に応え、最も要望の多い時期に合わせた結果」と話す。
今回展への新型肺炎の影響については、「中国からの出展者100社中45社が出展を取りやめ、残る出展者も在欧エージェントが代理でブース対応したケースも多いようだ」と述べた。その大半は縫製提案を行うマニュファクチャリングエリアへの出展者で、このため、当エリアは当初予定のホール2から規模を縮小し、ホール6へ会場変更したことを報告した。
〈11月に深センでPVチャイナ〉
ラズボルドGMは会見末尾で、新イベントとして、今年11月27~29日に中国で「PVチャイナ」を立ち上げると発表した。同展は深センで開催される服地およびアクセサリー展示会「ファッション・ソース」展とのジョイントで実現し、PVチャイナ内にはヤーン、ファブリック、アクセサリー、レザー、デザインの各部門をそろえる。同展開催の背景として「すでに大きな地位を占める中国のファッション市場が、25年に一般衣料、高級衣料の両面で世界最大規模に到達すると予想されること、そしてとりわけ市場が急成長・急拡大を遂げているのが深センの位置する華南地域である」ことを挙げた。
〈ミラノ・ウニカ/22年から秋冬展7月第2週に/春夏展もPVとの重複回避に最善〉
イタリアの国際素材見本市「ミラノ・ウニカ(MU)」は21春夏展閉幕後の6日、今後の開催日程の一部変更を明らかにした。
6日に発表されたプルミエール・ヴィジョン(PV)による21年からの会期前倒しを受けて、会期重複を避けるための措置を取った。21年までは従来通り第1週の7月7~9日の開催となるが、22年以降は会期を1週間遅らせ、22年は7月12~14日、23年は7月11~13日の開催となる。
MUは開催日程の一部変更について、「PVが今回決定した会期の前倒しは、市場の示唆にいち早く応えたわれわれの3年前の選択に先見の明があった証し」とした。
現行日程では会期が重複してしまう2月開催の春夏展についても、「(PVが1週間会期を前倒ししたことで)MUが従来コレクションを発表してきた21年2月第1週の会期重複の難点は認識している。効果的に問題に対処するために最善を尽くす」と述べている。




