特集 小学生服(4)/有力学生服・素材メーカー/細やかな目配りで課題対応

2020年02月18日 (火曜日)

〈学生服メーカー〉

 有力学生服・素材メーカーは、小中一貫校の増加などによって制服の採用率が上昇する兆しを受けて、機能の強化や需要創出のための活動を継続する。より細やかな部分にも目を配り、市場開拓に求められる課題に対応。最新の取り組みを紹介する。

《トンボ/低学年を支援し市場創出》

 トンボはメインブランド「トンボジョイ」や小中一貫校向け「トンボプライマリー」で、低学年をサポートする機能性によって支持を得ている。2020年入学商戦のモデルチェンジ校は30校となる見通しで、市場が縮小する中でも例年並みを確保する。足元の売り上げも前年比横ばいで推移している。

 袖内部の布地をほどくことによりサイズが調整できる袖口グローイング仕様や、快適な伸縮性など定番の機能を引き続きアピールする。トンボプライマリーではこうした機能に加えて、配色によってボタンの掛け違いを防止するなど、子供の自立を支援する仕様を重視することで評価を得てきた。

 上衣のほかは、汚れが付いても洗濯で落ちやすいポロシャツが初ロットで5千枚を完売。昨年投入したばかりだが、好発進している。大手素材メーカーと開発した防汚・抗菌効果の高い新加工で、菌の繁殖を抑える機能が評価される。増販に向け、初ロットの倍の1万枚を生産している。

 同社はこれまで、中高生向けの商品と連動した企画を継続してきた。織物に近い上質な風合いで、ストレッチ性を追求した人気のニット素材「ミラクルニット」は、詰め襟服やブレザーなどで評価される。今後、小学生向けの商品も検討する。

 恵谷栄一取締役営業統括本部副本部長は「少子化が加速しているとはいえ、小学生服は未だ600万人超の市場。平等や統一感、連帯感といった意義を訴え、必要性を示す」と語る。

《菅公学生服/モノ作りと教育の両輪》

 菅公学生服は、教育ソリューション事業で学校教育のサポートを強化している。調査や研究の充実を通じて学校との接点を増やし、教育で新たな価値を生み出す企業としての認知度向上に努めている。

 同社が目指す教育の方向性に、生徒の自立がある。非認知能力(数値化が難しいコミュニケーション能力や共感性、忍耐力などの幅広い力)や意欲の向上を目指す。

 昨年末、三大都市圏で開催した「ミライフォーラム2020ソーシャルソリューションクロス」で最新の事業を発表。目標と行動をリスト化する生活基礎力チェック、自発的に行動できる人材を育むため労働や生活についてディスカッションするアンクスプログラムなどに取り組んでいる。

 教育面でのサポートに努める一方、制服の物性面での研究も進める。カンコー学生工学研究所の三宅利明部長は「学生の間に3~6年着ることを想定した上での価値を発信したい」と話す。ストレスフリー、シーズンフリーなどをキーワードに環境、気候、動作、心(LGBTの人々への対応)の面から、快適かつ持続的で、あらゆる人に配慮した制服作りを模索している。

 小学生向けの商品では現在、洗濯耐久性を軸に商品開発を進める。ワンランク上の「カンコータフウオッシュ」は、家庭洗濯でピリングやほつれが発生しにくい品質が評価されて販売が堅調だ。袖や胴内部の生地を使った袖伸ばしや脇出し、サイズアップやストレッチ性など定番の機能も付与。ベーシックな「カンコー小学生服」と併せて拡販に努める。

 さらなる付加価値の向上に向けて、動きやすさや着心地の面でも機能の強化を検討している。

《明石SUC/制服の“丈夫さ”で支持》

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は、小学生服の市場縮小が激しい中でも、全体の売り上げで前年同期比ほぼ横ばいを維持している。

 上衣は「洗濯耐久性など“丈夫さ”がアピールポイント」(営業本部スクール第一販売部の江藤貴博部長)。主力ブランド「富士ヨット小学生服」と、ワンランク上の「THD(テ・アッシュ・デ・ラ・メゾン)」で訴求する。前者は、豊富なサイズ展開や、袖口の縫い目をほどいてサイズ調整できるアジャストカフスに、後者は、上質感や立体縫製、首中心から肩全体に重さを分散させる仕立てに定評がある。

 イージーケアの流れによって、シワになりにくいニット関係のアイテムは引き続き好調だ。同社もニットシャツ「ラクポロ」が10%増、ニットの給食着が80%増となっている。シャツでは、安価でそれなりの質の商品より、割高になるものの質の高い商品が売れる傾向が強まりつつある。給食着を含めて販促する。

 注力する防災関係の商品でも、安定した売り上げを確保している。昨今の大規模災害の頻発を受けて学校や保護者の意識が高まっており、昨年本格的に投入した小学校向けの防災学習教材や非常食などで引き合いがある。

 防災の教材を監修した神戸学院大学(神戸市)の社会防災学科とは、2017年から「明石SUCセーフティプロジェクト(ASP)」で提携。今後も防災教育や関連商品の開発に努め、学校との接点作りにつなげる。

《オゴー産業/小学生服でも目先を変えて》

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は小学生服で、文具製造卸サクラクレパス(大阪市中央区)とのコラボ商品など目先を変えた商品を提案している。

 同社は「他社にない切り口」を目指して販促を続けてきた。昨年6月、認知度が高いサクラクレパスの「クーピー」や「クレパス」のロゴを配したポロシャツや体操服を発表。今年4月から店頭での販売をスタートさせる。

 デニム調学生服「ディーモ」も小学生服で初めて採用を獲得。趣向を凝らした多様な商材で販売拡大を図る。片山一昌経営企画部長は「時代の変化に振り回されないものを考える」と話す。

 販売の方法も模索している。最近では百貨店内の文具やランドセル販売店と契約し、今後、売り場面積に応じた“販売キット”も提案する考えだ。

 定番商品ではメインブランド「鳩サクラ通学服」で、汚れが付いても洗濯で落ちやすい加工「ウオッシャブルマジック」を訴求。洗濯の頻度が高い小学生服で一定の支持を得ている。

 その他のアイテムでは、2層構造で防風性が高いスポーツニット「アクティ」でカラー展開や付属によるラインアップの充実を図り、別注を獲得する。2012年から販売する女子向けが中心のニットシャツ「楽スクール」は、織物より割高ながらノーアイロンなど取り扱いのしやすさで販売が順調に推移している。

 こうした商品企画や取り組みの結果、小学生服の売り上げは前年同期比ほぼ横ばいとなっている。

 安心・安全の取り組みも継続。セコムと共催する「全国安全マップコンテスト」の第13回審査を進めており、子供たちの危険回避能力の向上と地域の安全な環境作りに向けて地道に取り組む。

〈素材メーカー〉

《ニッケ/環境配慮にも焦点 ニッケ教育研究所と協力》

 ニッケは小学生服向け素材として主力のウール・ポリエステル混織物のほかニット生地の活用にも取り組む。制服の教育資材としての側面も重視し、環境配慮型素材の活用にも取り組む。

 同社によると、小学生服は急拡大こそないものの全国的に開設が続く小中一貫校を中心に制服の導入が進められている。同社の調べによると2002年から21年の間に制服を導入する小中一貫校は国公立と私立を合わせて160校に達した。

 こうした動きに合わせて、改めて“制服の価値”を訴求することで小学生服素材の提案を進める。そのため昨年に一般社団法人として設立したニッケ教育研究所とも協力し、制服の教育上の効能や経済性などに関する科学的研究の成果を小学生服分野にも積極的に発信する。

 素材の面では織物に加えてニット生地の開発と提案に力を入れる。編み地のイージーケア性や軽量性、ストレッチ性を生かしながら、耐久性など小学生服に必要な物性の確立を進める。同時に織物もストレッチ性などの機能を重視し、編み地の特徴を取り込んだ開発に取り組む。

 制服の教育資材としての側面も重視。このため特に環境配慮型素材の提案を強化する。再生ポリエステルの活用を進めるほか、牧羊農場からのトレーサビリティー(追跡可能性)を確立したニュージーランド羊毛を使った「ジーキュー」を活用する。ウールはサステイナブル(持続可能な)繊維であることも改めて打ち出すことで、制服を通じた環境教育への貢献も視野に入れる。

《東レ/合繊の機能を生かす 柄物にインクジェット捺染》

 東レは小学生服に向けて合繊の機能を生かした素材提案を進める。小中一貫校向けを中心に柄物でインクジェット捺染の活用にも取り組む。

 小学生服に関して同社では市場は確実に拡大しているものの、依然として急拡大といった状況にはないとの見方を示す。このため“小学生服の役割”を業界全体で幅広く訴える必要があると指摘する。例えば近年、卒業式の衣装の華美化が問題となるケースが増えた。これに対して制服が持つ「礼服」としての機能を改めて打ち出すことなどが考えられる。

 こうした中、同社は小学生服で合繊の機能性を生かした素材提案に取り組む。ポリエステル100%梳毛調織物「マニフィーレ」などを軸に提案を進める。合繊によるイージーケア性に加え防汚、ストレッチ性など小学生服に必要な機能を付与することで学校や保護者、児童のニーズを満たす素材を用意する。

 特に全国的に開設が続いている小中一貫校に向けた提案を重視。マニフィーレのほか、柄物は小松マテーレと連携して生産するインクジェット捺染「モナリザ」の提案を進める。プリント下地を備蓄することで先染め品よりもスピーディーに多品種・小ロット・短納期の柄物提案・販売が可能になる。既にスカート地など小学生服で採用実績があり、中学の制服でも関心を示す案件が出てきた。

 制服だけでなく周辺商品に向けた素材提案にも取り組む。高視認染色生地「ブリアンスター」を雨具や帽子などに提案しており、小学生の安全に貢献する商品の開発に取り組む。