PV・MUレビュー 転換期の欧州生地素材展①

2020年02月25日 (火曜日)

会期変更で出展戦略・開発時期は

 13日の「プルミエール・ヴィジョン(PV)パリ」閉幕で欧州主要生地素材展が一巡した。トレンド発信ではPVパリ、「ミラノ・ウニカ(MU)」でも引き続きファッションでの持続可能性と創造性との架橋が焦点となった。他方、新型肺炎の影響など場外の話題にも事欠かなかった。両展の会期中に発表されたPVパリの会期変更と他展の対応も出展者の関心を集めた。輸出拡大を狙う日本企業にも商品開発・市場開拓双方で影響が及びそうだ。エコ・サステ対応に限らず、転換期を迎える欧州展の動向にどう対応するか。各論点で課題を探る。

 2021年以降のPVパリの会期変更が発表されたのは、21春夏展開幕直前の6日。ファッションビジネスの商品サイクル変化に対応し、春夏展を1週間早い2月2~4日、9月中旬の秋冬展を2カ月近く早い7月6~8日に前倒しする。プレコレクションも含めた企画回数、それに伴う店頭デリバリー回数の増加で、生地調達も早期化・分散化が背景にあり、フランスモード学院が昨年実施した業界関係者1765人対象の調査は会期前倒しに約7割が賛成。続く出展者への調査でも7割が賛意を示した。プレコレクションに特化し開催してきた人気のプレビュー展「ブロッサムPV」も12月展は時期・内容を据え置くが、7月展は21年から本展と会期を入れ替え9月中旬へ移動。今夏には新コンセプトを発表する。

 PVパリの新会期は現行のMU会期と重複する。今回、ドイツのムニック・ファブリック・スタート(MS)展と会期が重複したMUはドイツの来場者が2割近く減少。会期重複がいずれにも益がないことは明らかで、MUは21春夏展が閉幕した6日付リリースで、22年以降、7月の秋冬展会期を1週間遅らせる(22年は7月12~14日、23年は同11~13日)ことを発表した。「PVパリの会期の前倒しは、市場の示唆にいち早く応えたわれわれの3年前の選択に先見の明があった証し」として、ひとまず秋冬展の重複回避を決めた。

 PVパリ最終日の13日午後、急きょ設けられた日本の出展者との会合に臨んだPVのジル・ラズボルドゼネラルマネジャー(GM)に、出展者から21年の開催などで「何とか重複回避を」との声が向けられたが「他展と、透明性を持って協議して会期を決めたい。現時点では未回答だが、21年もMUに調整を要望している」と応えた。

 春夏展も「当初要望が最多だった1月末は会場の都合で不可能だった」と来場・出展双方の要望を最優先した会期である点を強調。MUの対応は未定だが「MSとは1月最終週開催で調整できた。MUの良い回答も期待する」と話した。

 「顧客の要望に沿った全体の変身がPVにとっての大きな挑戦」と締めくくったラズボルドGMだが、その動向はMU、MSなどの国際展にどう影響するかが注視される。

 今回の対応を見れば、会期重複の不都合自体は数年の調整を経て解消されると思われる。ある識者はその一方で、「欧州の生地・素材展でも規模の圧倒的なPVパリの会期変更で、MUも他展も新たな内容の差異化のため、重点分野やターゲットの市場をより特化させていく可能性がある」と指摘。日本の出展者もこれを受けて、重点地域をにらんだ展示会の出展戦略、国内外をにらんだ商品開発サイクルを改めて検討する必要がありそうだ。