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特集 事業戦略1(1)/クラボウ/“モノからコト”へ転換/グローバル戦略は“勝負の年”/取締役兼常務執行役員 繊維事業部長 北畠 篤 氏

2020年02月26日 (水曜日)

 クラボウは繊維事業の構造転換を急ぐ。従来型の“モノ消費”ではなく新しい価値を創出する“コト消費”に向けた開発や提案を加速させ、取引先や消費者と付加価値を“共創”するビジネスの拡大を図る。そのために生産プロセスの高度化にも取り組み、国内工場はスマートファクトリー化に向けた投資を積極的に実施する。同時に、タイ、インドネシア、ベトナムの子会社が連携することで独自の開発・提案を強化。東南アジアでの販売拡大を目指す。

  ――2019年度(20年3月期)もあとわずかです。

 非常に事業環境が厳しい1年でした。特に衣料品消費の環境が悪かった。天候不順に消費税引き上げ、さらに新型コロナウイルス問題まで起こり、インバウンド消費や中国での生産や納期対応などにも影響が出る可能性が高まりました。こうした市況を反映して、原糸は国内産地向けが良くありません。ただ、環境配慮素材への関心が高まったことで“綿回帰”の動きはあります。原綿改質の「ネイテック」なども注目されており、一部で回復の兆しがあります。ユニフォームは堅調でした。定番品の販売は減少していますが企業別注向けなどが安定しています。一方、カジュアル分野は全体的に市況が低迷しています。若い世代の間で衣料品に対する考え方が変わってきていることを感じます。SPAも海外メーカーからの調達を増やすなど、海外企業との競争が激化しました。海外子会社の低迷も大きかった。特にタイ・クラボウは高値で手当てした原綿を持っている段階でバーツ高による輸出不振に見舞われました。インドネシアのクマテックスも日本での原糸販売が低迷したことで稼働率が低下し、利益を圧迫されています。

  ――3月末で紡績の丸亀工場(香川県丸亀市)の操業停止を決めました。

 現在の消費不振、海外との競争激化を考えると繊維事業全体でさらなるコストダウンを図る必要性があります。丸亀工場は建屋も古くなっており、耐震補強工事の必要に迫られていました。こうしたことも勘案すると、丸亀工場に新たに投資するのではなく、安城工場(愛知県安城市)に紡織工程を集約することで効率化を進めるべきだと判断しました。丸亀工場の設備の一部は安城工場に移設しますから、国内の紡織工場を集約することでスマートファクトリー化などの投資も集中的に行うことができます。原糸生産の一部は海外子会社にも移管します。これにより海外子会社の稼働率を上げ、利益率を高めることもできます。

  ――来期(21年3月期)に向けた重点戦略は。

 現在、事業環境が劇的に変化しています。リユースやシェアリングなど消費形態の変化、環境配慮やSDGs(持続可能な開発目標)への意識の高まり、デジタル技術の発展など。こうした変化に合わせて事業モデルを転換する必要があります。そのためには従来型の“モノ消費”ではなく、“コト消費”に向けた開発や提案が重要です。

 例えば環境配慮では生分解性素材への要求が高まっていますが、これは当社のような綿紡績にとっては追い風です。さらに縫製工程で発生する裁断くずを原料にリサイクル・アップサイクルする「ループラス」もあります。新たにエドウインに採用されるなど成果が出てきました。ループラスを活用したデニムで輸出にも取り組みます。色落ちしないデニム「アクアティック」もレーザー加工や洗い加工の際の水使用量を削減できることで評価が高まってきました。こうした特徴を打ち出すことで販売拡大につなげなければなりません。

 もうひとつは熱中症対策スマートウエア「スマートフィット」のようなユーザーとの価値共創型ビジネスの拡大です。さらにデジタル技術の活用では工場のスマートファクトリー化を進めなければなりません。情報を統合管理することで最適化することです。

  ――海外子会社のテコ入れも必要ですね。

 グローバル戦略の高度化も来期の重点戦略の一つです。海外子会社は従来、クラボウ本体の発注をこなす生産拠点の性格が強かったのですが、今後は自前で商品開発と販売に取り組むことで自立を進めます。

 東南アジア縫製が拡大する中で重要になるのはクイック・レスポンス。そこでタイ・クラボウを中心にインドネシアのクマテックス、ベトナムのクラボウ・ベトナムなど各拠点が連携し、ベトナムなど東南アジア地域の縫製企業に糸・生地を販売するビジネスを拡大します。既にクラボウ・ベトナムを通じた受注が始まるなど成果も出始めましたから、非常にチャンスは多いと感じています。この機会を生かしたい。その意味で今年は海外戦略における“勝負の年”だと考えています。