特集 事業戦略1(3)/ダイワボウホールディングス/繊維事業一体化で全体最適/SDGs、ESGを基本に/取締役兼常務執行役員 繊維事業統括 大和紡績 社長 斉藤 清一 氏

2020年02月26日 (水曜日)

 ダイワボウホールディングスは4月1日付でダイワボウポリテック、ダイワボウプログレス、ダイワボウノイ、ダイワボウアソシエを中間持株会社である大和紡績に統合する。繊維事業を一体で担う“新生”大和紡績の誕生で、人材や技術の融合を進め、全体最適化を目指す。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)を事業運営の基本に置き、独自素材・加工を活用した「ファイバー戦略」を加速させる。

  ――2019年度(20年3月期)も終盤ですが繊維事業の状況は。

 売上高は前期並みで推移していますが、営業利益が減少傾向です。特に合繊・レーヨン部門が苦戦しました。衛材はインバウンド需要が一服したことに加え、コスメ用途も中国市場が振るいません。やはり中国の景気の悪さが影響しています。一方、産業資材部門は堅調です。重布が底堅く、樹脂加工も悪くありません。国の国土強靭化政策もあって土木資材や防災関連も好調です。フィルター関連も需要が盛り上がってきました。ただ、カンバスは苦戦です。国内の製紙需要の影響が出ています。衣料製品部門はカジュアルブランド製品とOEM製品ともに好調です。暖冬で綿ニット製品の着用期間が延び、需要が拡大した側面もあります。

  ――海外事業はいかがですか。

 インドネシアで生産する布帛トランクスの対米輸出は19年後半から急ブレーキです。やはり実体経済に変調があることと、世界的に布帛トランクスからニット製ボクサーパンツへとトレンドが変わってきたことがあります。ただ、生産拠点であるダイワボウガーメント・インドネシアはトランクスこそ減産となっていますが医療用コルセットや羽毛布団の“側(中わたを詰める前の半製品)”の縫製が底堅く、稼働率は下がっていません。また、中国の縫製子会社もフル稼働です。大和紡工業〈蘇州〉は成形インナーが拡大しており、蘇州大和針織服装もコートこそ苦戦も、カジュアル製品がブランド向け中心に好調です。

  ――4月1日で事業会社4社が大和紡績に統合され、合繊、産業資材、製品・テキスタイル、管理の4事業本部制となります。

 事業会社体制で各社が努力した結果、それぞれが成果を上げるようになりました。ただ、さらなる成長に向けた次の段階に進むためには全体最適化が必要だと判断しました。特に人材や技術面です。そこで人材配置も横断的に行い、技術開発も一体的に進める構想です。そして合繊、産業資材、製品・テキスタイルの各事業はいずれもSDGsやESGを事業運営の基本に据え、さらに独自原料や加工を活用するファイバー戦略を横串で実行します。

 合繊事業はポリプロピレン(PP)や再生ポリエステルに加えてダイワボウレーヨンのレーヨンなど生分解性繊維の活用を強化します。衛材分野でも生分解性への要求が高まっていますから綿不織布で国際綿花評議会の「コットンUSA」認証を活用する準備も進めています。

 産業資材事業はフィルターの拡大が期待できます。5G(第5世代通信技術)の普及に向けて半導体関連で需要が高まってきました。そのため現在、出雲工場(島根県出雲市)にフィルター製造を集約する新工場も建設中です。カンバスは海外市場の開拓がポイント。特にアジア市場での拡大が重要です。製品・テキスタイル事業は、従来以上にファイバー戦略を徹底します。これで他社にない商品を開発する。そこで綿、レーヨンを活用した生分解性も打ち出すことになるでしょう。衣料向けにPPの採用も広がってきました。これも独自性のある原料です。海外拠点もインドネシアと中国は工場だけですから、早期にジャカルタと上海に統括機能がある現地法人を作ることも検討します。

  ――次世代ファイバー開発推進統括も新設されます。

 生分解やリサイクル、マスターバッジによる機能化などの技術開発を進めます。従来は衣料用途での活用が中心でしたが、これをフィルターや産業資材にも応用します。そのために提携する信州大学繊維学部のファイバーイノベーション・インキュベーター施設(Fii)に派遣する人員も増やします。

  ――大和紡績の事業会社としての体制強化もあります。

  女性の登用を進めたいと思います。これは働き方改革も合わせて実行します。管理本部ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による自動化も進めたい。既にダイワボウ情報システムが先行して導入していますから。そして大和紡績として従業員の一体感と新しい文化を作っていこうと思います。そのために組織としてやれることを徹底的に行います。