PV・MUレビュー/転換期の欧州生地素材展(3)/新型肺炎さまざまに影響

2020年02月27日 (木曜日)

 中国・武漢に端を発する新型肺炎の大流行の影響に直撃された形となった今回の「ミラノ・ウニカ(MU)」と「プルミエール・ヴィジョン(PV)パリ」。主催者発表による来場者数では、PVパリは前回比約16%減の4万4414人、1万人近い大幅来場減となった。MUは、来場者実数は公表していないが、2019年下期の各展ほどの減少幅はなく、新型肺炎や他展との会期重複の影響は杞憂だったとした。それでも、両展への日本の出展者からは、おおむね「来ブース者数、商談件数は肌感覚で2~3割減った」という声が聞かれた。

 中国からの来客がほぼ見られなかったことに加え、新型肺炎を受けて一定数のトップメゾン、ハイエンドブランドが全社的に展示会出張を禁じたり、来場人数を減らすなどの対応を取ったことも響いた。

 実際「担当者はミラノまで来ていたが、会社方針により直前でアポが取り消された」(瀧定名古屋)例も散見されたが、「開幕前は商談数半減も覚悟したが、初日の来客は平年並み。全体では2割減だが、普段はアポ満杯で断る新規客との商談内容も良く、結果オーライ」(デビステキスタイル)、「実際には3割以上の来客減だが、既存客に新提案を普段より格段にリラックスして見てもらえる分、感触はむしろ良い」(エイガールズ)など、逆風の影響はかなりの程度まで抑えられたと見る出展者は少なくない。

 MU・PVパリ双方への出展を長く続け日本勢で毎回トップクラスの集客力を持つスタイレムも「キャンセルの空きは、ほぼ新規客で埋まった。全備蓄品番で多色展開し1反からでも販売する、”どんな要望も拾う”体制のたまもの。コレクションの半分までエコ・サステイナブル(持続可能な)対応品を大幅拡充したのも正解だった」として、逆風下でも「カバーに手を尽くした結果、まずまずの手応え」と振り返る。

 生産地・消費地の両面での中国の存在感の大きさも新型肺炎で明らかになった。例えば、ビジネスシーン軽装化を背景に、天然素材代替として機能性もプラスした合繊リッチのメンズ生地を製品も絡めて提案し、SPA向け販売をこの間に一気に拡大させた瀧定名古屋。今回も「中国客の減少分を他地域の新規で埋め微減。独自生地手配する東欧縫製工場の新規客の発注も拾えた」などこれまで同様の好感触を得る一方、「生地・製品とも価格・スピード両面で使いやすい中国生産に依存し過ぎては危険。対欧輸出のもう一段の拡大にはリスク分散の必要性を痛感し、既に対策に着手した」という。

 このほかある出展者からは、「新型肺炎による流通の混乱で中国品の供給が止まっているため、会場でいきなり数万㍍規模の引き合いが寄せられ、中なかには本発注まで決まったケースもある」という声も聞かれた。