PV・MUレビュー 転換期の欧州生地素材展(4)/期待大きい日本勢の新規出展
2020年02月28日 (金曜日)
「プルミエール・ヴィジョン(PV)パリ」や「ミラノ・ウニカ(MU)」では新規出展者の動向も注目点だ。PVパリへの出展機運は近年落ち着きを見せ、中核の生地展「PVファブリック」への日本勢の新顔は今回、他のPV展で出展歴のある1社のみ。他方、MUの日本パビリオン「ジャパン・オブザーバトリー」(JOB)は参加30社・団体中、六つが新顔。全国各地の産地企業・団体の顔ぶれがそろった。
JOBを主催する日本ファッションウィーク推進機構(JFW)、日本貿易振興機構(ジェトロ)の事前事後の支援体制もあって、生地輸出に挑む小規模企業の格好の受け皿になっている。JFWにもMU側から新規出展者の詳細を事前に知りたいと要望が寄せられ、それを目当てにJOBを訪問する来場者も多く、集客の目玉の一つだ。
今回もJOBの新顔はいずれも予想以上の手応え。色彩感あふれる先染めジャカード織物を得意とする播州織産地の遠孫織布、足利産地で100年以上手捺染を手掛けてきた朝日染色は、いずれも国内市場で拡大が望めない高品質テキスタイルの販売先として対欧州直接販売の可能性を探った。遠孫織布は初日にバルク発注を得る順調な滑り出し。朝日染色も欧州と周辺国のブランドからの好反応に「海外市場で手捺染のニーズを探る意味では想像以上の成果」で、イタリア現地コンバーターと捺染地を相互供給販売する足掛かりも得た。
元来和装のしじら織りを洋装向けにアレンジした徳島の長尾織布も中盤以降、来客が途切れないにぎわいぶり。新潟の亀田繊維工業協同組合の「亀田縞」、広島・備中備後地域の「ジャパンデニム」プロジェクトの両地域ブランドも独自性で注目を集めた。ジャパンデニムに参加する篠原テキスタイルは今回が1年ぶり2回めだが「日本製デニムを目指して来る客が大半で商談の確度は高く、リピーターも多い」とバルク受注を獲得した前回と変わらない手応え。同プロジェクトで初出展の坂本デニムも「画期的なエコ染色システムの認知を高め織布メーカーを側面からサポートする目的も大きいが、天然藍やヘンプ、カポックなど織布メーカーと住み分けた独自の自販生地にも想像以上に注目が集まった。」
PVファブリックのパノコトレーディングは国内や北米での販売が軌道に乗ったことで、欧州向け販売の足掛かりにと初出展した。世界各地から原綿を自社手当てし、日本各地の織り編物産地で生地にした各種オーガニックコットン生地をそろえ「ならではのソフトさ安心感に加え、従来品にない色使いのシャープさ」を訴求。織物、丸編み地双方がそろい、半数以上が備蓄品であるという「欧州アパレルの日本品の評価ポイントを持ちながら、それを十分生かしきれなかったのが次回への課題」と、今後への期待と反省を話す。
JOB常連出展者から「備蓄販売やエコといった以前からの特徴で日本品を訴求するだけでは、そろそろ来場者に飽きが来る予感もある」という示唆的な指摘も。別の出展者の「JOBで日本企業が一区画に集中出展するMUの場合、多様な産地が点在する日本の繊維産業の特徴をもっとPRし、集客力のある個別ブースからJOB全体への回遊効果を高める努力がもっとあってもよい」という声も傾聴に値する。
かねてから期待の高い日本製テキスタイル。その“期待”を“信頼”に変えるもう一段の努力も、主催者、出展者双方に望まれている。(おわり)




