クローズアップ/東洋紡 参与 生活・産業マテリアル事業総括部長 粟津 慶司 氏/中国2社と「プロコン」で共闘

2020年03月03日 (火曜日)

 PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維「プロコン」を展開する東洋紡、東洋紡上海(TSS)。両社は昨年10月、原料の調達及び原綿のOEM生産で中国の浙江新和成股フン(NHU)、紹興裕辰新材料(YC)と契約を交わした。中国などでのバグフィルター需要に支えられ成長を続けたPPS繊維。しかし、この数年は市況低迷によって各社は苦戦を強いられていた。今回の契約で何を目指すのか、粟津慶司参与に聞いた。

  ――中国企業とプロコンで契約を結びました。

 NHUとは安定的に原料を供給してもらう契約を、YCとは汎用タイプのプロコンをOEM生産してもらう契約を昨年の10月に締結しました。

  ――契約の狙いは。

 これまで当社は原料をある1社から購入してきました。数年前、先方から販売が好調な自動車用樹脂向けを優先させたいといわれ、そのときから原料の複数購買のための取り組みを進めてきました。今回、原料の生産から着手しYCでの繊維化を計画するNHUとの契約に至ったわけです。

  ――両社との取り組みの進捗は。

 NHUは独自の技術で原料生産をスタートさせています。その後、当社が技術指導しつつ、プロコン用に使えるスペックに仕上げていきました。既に2018年1月から原料の供給を受けています。一方、OEMの方は20年後半からスタートします。初年度は数100㌧の販売になるとみています。

  ――PPS繊維の中国での状況は。

 15年までは市場拡大が続きましたが秋以降、市況は冷え込み、その後、低迷が続きました。現在、市況は反転していますが、回復の途上です。今後も中国やインド、インドネシアといった新興国でバグフィルターの需要は伸びていくとみています。

  ――プロコンの販売状況は。

 19年度はほぼ横ばいで落ち着きそうです。中国では代理店契約の切れた17年から当社が独自に販売してきましたが、現地に在庫を構えてのQRなどがスムーズにいかず、中国内需向けの販売は減速に転じました。

  ――今後の販売計画は。

 中国2社と連携して、失った商権を取り戻しに行きます。中国は価格競争の厳しい市場ですが、品質に優れるプロコンの現地一貫生産でコスト競争力を発揮させ、シェアを回復させます。OEM生産が立ち上がると当社は販売業務にタッチできなくなるため、TSSのスタッフをしっかりトレーニングし拡販に取り組んでもらいます。