PPS繊維メーカー 東レ「トルコン」 東洋紡「プロコン」/極細タイプで攻勢かける/中国企業とのコラボも

2020年03月10日 (火曜日)

 PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維を展開する東レ、東洋紡が中国市場に攻勢をかけようとしている。中国の市況は大きく変わっていないとみられているものの、環境規制が強化されるに伴い、高機能タイプへのニーズが強まっているという。このため、このゾーンに極細タイプや異形断面タイプを打ち出し、シェア拡大を狙う。(堤 貴一)

 東レ、東洋紡はPPS繊維を中国の石炭火力発電所で使われるバグフィルター向けを主力用途として展開してきた。中国市場では2015年ごろまでは需要急増が続いたものの、その後、中国勢の新規参入が相次ぎ市況が混乱。両社とも特に汎用品のゾーンで苦戦を強いられていた。

 しかし、環境規制強化が本格化するに伴い、より高性能なバグフィルターが求められるようになり、日本勢が展開する高機能タイプのPPS繊維に注目が集まっているという。

 東レは「トルコン」を展開しており、この間、集塵(じん)効率の高い極細タイプ(1デシテックス)の販促に重点的に取り組んできた結果、19年度上半期は「販売量を急増させられた」と言う。

 中国では、南通に構える東麗繊維研究所〈中国〉がユーザーであるバグフィルターメーカーや石炭火力発電所まで出向いて現場をフォローしており、納入したトルコンの実際の効果を検証し、次の商品開発へとフィードバックさせる取り組みを長年、続けてきた。

 火力発電所の新設は期待できないものの、今後も安定的な交換需要が見込めるほか、環境規制の強化に伴い「ハイスペックを求めるニーズは間違いなく増える」と東レはみている。20年度は上半期中にさらに極細化した0・9デシテックスの販売を立ち上げ拡販を計画する。鉄鋼関連用途の開拓、欧州市場への再度のアプローチにも意欲を示している。

 「プロコン」を展開する東洋紡。これまでは岩国事業所で生産してきたが昨年10月、東洋紡上海とともに原料調達、原綿のOEM生産で中国の浙江新和成股フン(NHU)、紹興裕辰新材料(YC)と契約を締結した。

 数年前、原料の調達先から、販売が好調な自動車用樹脂向けを優先させたいと通告されたことをきっかけに別の原料メーカーの探索に着手。原料生産、繊維化を検討するNHU、YCとの契約にたどり着いた。

 NHUとは、技術指導を通じプロコン用に使える原料のスペックを確立。YCは20年後半からOEM生産をスタートさせることにしており、そのタイミングで東洋紡上海が国内販売に着手。初年度で数100トンを投入する。

 中国では代理店契約の切れた17年から独自に販売してきたもののスムーズにいかず、この間、国内シェアを落としてきた。

 このため、今後は中国2社との連携を強化し、「現地一貫生産によるコスト競争力を発揮させ、失ったシェアを回復させる」とともに、異形断面の高性能タイプを早期に市場浸透させたい考えだ。