東レ/塗布型RFIDの実用化加速/23年3月期末には形に
2020年03月10日 (火曜日)
東レは、塗布型RFID(無線通信による商品の個別管理システム)の実用化を急ぐ。UHF帯電波での無線通信を達成し、2023年3月期末には「何らかの形で世に出せるよう開発を加速」する。製造コストがシリコーンRFIDの5分の1という塗布型の販売が実現すれば、RFID市場が一気に拡大する可能性がある。
同社は、高性能な半導体カーボンナノチューブ(CNT)複合体を中心とする塗布型素材を活用したRFIDの研究を進めてきた。その中で、20センチという短い距離だが、塗布型半導体として世界で初めてUHF帯電波の無線通信をクリア。これにより、UHF帯RFIDを安価な塗布方法で作製できることを示した。
塗布型RFIDの試作品は、新材料の活用のほか、独自のデバイス技術とプロセス技術で作った。搭載メモリーは24ビットだが、目標の60ビットメモリー(現行のシリコンRFIDと同水準)にもめどを付けた。そのほかの目標スペックは通信距離1メートル、保存安定性1年、複数同時読み取り(アンチコリジョン)対応を掲げる。
製造コストの抑制が塗布型RFIDの最大のメリットとも言え、低コスト化で小売り・物流分野に広く普及することが期待される。ナノテクノロジー関連展示会で紹介したところアパレルメーカーなどから大きな反響があり、3年後には一つの形にしたいと意気込みを見せる。
RFIDは、長距離通信・一括読み取りなどの特徴を持ち、小売や物流における作業の大幅な効率化に寄与する。世界市場は3千億~4千億円といわれ、今後も拡大が見込まれている。ただ、現行のICチップを用いたシリコーンRFIDタグは高コストで、普及促進には低コスト化が不可欠とされている。