特集 ボディー&レッグファッション/魅力的な商品で購買意欲高める

2020年03月11日 (水曜日)

 比較的安定した需要があるといわれるボディー&レッグファッション分野。しかしながら全体をけん引するキラーアイテムに恵まれず、市場は縮小傾向が続く。20春夏も勢いは乏しいが、メーカー各社は前向きだ。商品力を高めることで消費者の購買意欲を高める。

 婦人ボディーファッション、レッグウエアの19秋冬は、高い気温に悩まされた。防寒品を中心に販売が伸び悩み、レッグウエアメーカーは「この数年間では最も厳しかった」と振り返る。消費増税の影響については「あまりなかった」との声が上がる一方で、「購買意欲の減退を招いた」との指摘もあり、メーカーや商品で意見が分かれた。

 総括すると、ボディーファッションはベーシックアイテムを中心に底堅い動きを示し、レッグウエアはより厳しい戦いを強いられた。一部を除いてヒット商品に恵まれなかったことなどが要因となっている。そのヒット商品も「特定の企業がシェアを伸ばしただけで、需要が拡大したわけではない」とされ、市場全体をけん引するには至らなかった。

 20春夏も盛り上がりを欠いたまま突入したが、新型コロナウイルスの感染拡大が先行きをさらに不透明にしている。

 終息後の反動増を見込むものの、「時期によって売れる商品は違う。機を逃した商品は負の在庫になる」と頭を抱える。

 厳しい状況は続くが、各社は「商品力で勝負する」と異口同音に話す。魅力のある商品の打ち出しに期待がかかる。

〈ワコール「ワコール」/バストケア市場を創る/執行役員卸事業本部 ワコールブランドインナーウェア商品統括部長 岡本 克弘 氏〉

 19秋冬は消費増税前の数カ月で需要が盛り上がったものの、その後の反動減で苦戦を強いられました。こうした中でも就寝時に着ける「ナイトアップブラ」は好調に売り上げを伸ばしました。

 消費税率が8%になった時はその後2カ月で消費が戻りましたが、今回は低迷が長期化するとみています。ネット通販は依然として前年を上回る伸びがありますが、店頭は厳しく、市場は飽和状態にあります。とにかく楽に着られて求めやすい価格の商品が市場にあふれています。

 こうした中で、20春夏はやはりワコールにしかできない造形機能、ボディーメーク力を改めて打ち出していきたい。ノンワイヤーでも造形性のある「スハダワン」やワイヤーで胸をしっかりと支え美しく見せる「リボンブラ」、補整ランジェリーの「リュクスボーテ」といった商品を拡販します。

 そして2月に発売した「バストケアブラ」を市場に定着させることがウイングブランドとも共通の最重要ミッションです。胸にかかる重力の負担をブラによってケアするという新たな発想から生まれた商品で、日常からバストをケアする必要性を訴えていきます。

〈ワコール「ウイング」/消費増税後も昨対上回る/卸売事業本部 ウイングブランドインナーウェア企画商品部長 上野 顕之 氏〉

 ウイングブランドの第3四半期(19年4~12月)までの売上高は前年同期比3%増です。上半期は前年割れの月がほとんどなく、特に消費税率引き上げ前の9月は59%増と駆け込み需要が大きかったですね。

 10月からは駆け込み後の反動減を見越して、3千円代の商品を充実させたのが奏功しました。そうした商品の一つが「シンクロブラ」です。黒がこれまで主体の商品でしたがパステルカラーを加えることで支持を拡大しました。自然なバストメークができる「ナチュラルアップブラ」は求めやすい価格帯にしたことで、売り切ってしまったほどです。吉田沙保里さんをPRキャラクターにしたズレないノンワイヤーブラ「デイト」も好評でした。

 11、12月からやや苦戦気味で20年に入ってからは新型コロナの影響で消費マインドの冷え込みが大きな影を落としています。2月は一層、事態が深刻になっており、悪影響は避けられません。

 今春夏は新たなブラのカテゴリ―として「バストケアブラ」を強く打ち出します。カップ付きブラトップ「くるしゅうない」や「デイト」さらに女子学生向けのショーツ『ノン!PK』のプロモーションも強化します。

〈フジボウアパレル/伸ばす余地はまだまだある/企画部次長 近野 英樹 氏〉

 19秋冬の婦人インナー市場はそれほど大きな落ち込みはなかったと認識していますが、春夏から引き続き盛り上がりを欠いたまま推移したという感があります。ただ、10月の消費増税がなければ昨年を上回ったかもしれないと思っています。「BVDレディース」はベーシック商品が多く、そのことが奏功する形でした。

 定番が強いのですが、20春夏はその幅出しに注力する方針です。充実を図るシニア向けの商品ではスポーツライン「エナジーFit」と大人の綿アイテムである「綿100%ふわりと」を打ち出します。ヒット商品の「涼ブラ」では、プリントとジャカード、スポーツタイプを積極的に展開します。

 婦人インナー市場は中長期的な観点でも、大きな波はなく、徐々に縮小していくと予想しています。ただし、チャネルはますます多様化するのでGMS向け一辺倒では厳しさが増すでしょう。このためインターネットでの販売を強化していきますが、「超ベーシックライン」など、専用の商品をそろえます。

 BVDレディースはまだまだ伸ばす余地があると感じています。そのために何が必要になるのか戦略を練っている段階です。

〈トリンプ・インターナショナル・ジャパン/「フィット感」を前面に/ヘッド オブ ブランドマーチャンダイジング 中谷 亜 氏〉

 ランジェリー・ファンデーションの市場は微減が続いています。19秋冬もその傾向は変わりがなく、「トリンプ」ブランドや直営店「アモスタイル バイ トリンプ」についても勢いを欠いたシーズンでした。市場トレンドのほか、当社の狙いとユーザーニーズとの間に少し隔たりができたことが理由です。

 2019年はさまざまな挑戦を行いましたが、それによってトリンプには「フィット感」が求められていることが分かりました。20春夏はそのことを踏まえた上で再拡大を志向していきますが、アモスタイル バイ トリンプの2月の販売が既存店ベースで前年比1桁%後半の伸びを示すなど順調です。

 新型コロナウイルスの感染拡大などで不透明感は強まっていますが、考え方は変わりません。トリンプを代表するベストセラー商品「天使のブラ」の提案を進めるほか、同じくロングセラーの「恋するブラ」も積極展開します。恋するブラは今年で20周年を迎え、秋冬物でキャンペーンを実施する計画です。

 正しいサイズの下着を着用してもらうための啓発活動として、キャンペーンを行います。

〈アツギ/環境など三つのテーマで/繊維事業本部 マーケティング部長 井上 優哉 氏〉

 19秋冬は厳しさが目立つシーズンでした。台風が多くて小売店頭への客足が伸びず、全体として盛り上がりを欠きました。さらに暖冬の影響で防寒のタイツが苦戦し、消費増税の駆け込み需要も限定的でした。その一方で反動減は11月まで続くなど、かなりの逆風だったと言えます。

 インバウンド需要は少しずつ陰りが見えていたのですが、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちを掛けました。新型コロナウイルスの影響は、インバウンドを含めて、計り知れませんが、20春夏では従来とは違う観点で需要喚起を図っていきたいと考えています。

 大きなテーマは「高機能」「健康」「環境」の三つです。高機能ではボリュームからの脱却が狙いの一つであり、「アツギ」ブランドを立ち上げました。健康では「歩く」に焦点を当て、スニーカーに合わせるストッキングなどを打ち出します。環境ではパッケージなどでサステイナブル(持続可能な)対応を強めます。

 メインは卸ですが、直営店を増やします。2019年度(20年3月期)で直営店は5店舗ですが、将来は繊維事業の売上高の10%を、直営店とネット販売で占められるよう、育成していきます。

〈白鳩/新本社竣工で反転攻勢へ/社長 池上 正 氏〉

 インナー市況は国内外ともに厳しい状況です。国内では2018年に消費者の送料負担が増えたことによる買い控えがあり、昨年は消費増税による買い控え、さらに当社は経産省の「キャッシュレス・ポイント還元事業」の対象外であることによる受注の伸び悩みがありました。そこに今、新型コロナウイルスによる消費の冷え込みが追い打ちを掛けています。

 この感染症がいつ終息に向かうのかが見通せず、これからの消費動向は極めて読みづらいです。ただ、外出をしない傾向が強まると、当社のような家で買い物ができるというサービスの需要は高まります。実際に先月から中国、国内ともに発注数量は増えています。

 20年2月期は営業損失となる見込みです。23年に売上高100億円を目指す、5カ年経営計画の最中ですが、環境が想定以上に悪化していることから来月にも現状に合った形に見直します。

 新本社兼物流センターは今年8月末にも稼働する予定です。これを反転攻勢のきっかけにしたい。面積は4倍近くになり、在庫の受け入れキャパシティーが増え、発注から発送までのスピード、効率も飛躍的に上がります。今年はプライベートブランドやコラボレーション商品もさらに増やし利益構造の転換を図ります。

〈白鷺ニット工業/発想でニッチ市場を攻める〉

 白鷺ニット工業(兵庫県姫路市)はひとひねりしたアイデアで消費者の潜在ニーズを掘り起こす商品開発に力を入れる。

 同社が送り出す商品の多くは価格競争の激しい量販店向けだが、価格帯は実はワンランク上のものが多い。三木一正社長は「肌着は文字通り肌に触れる最も身近な衣料品」と強調し「メーカーとして自分たちも着たいと思える、一味違う価値をお客さまに届けたい」と思いを込める。

 近年は二つの着こなしを1着で、2アイテムの機能を1着にといったユニークな商品開発に知恵を絞っている。レディースインナーの「もっと!着こなし上手」はその一つ。前後で襟ぐりのデザインが異なり、日々のコーディネートに合うほうを前に着れば1着で2役を果たす。

 腹巻付きインナー「おなかポンポン」は腹巻とインナー本来、二つのアイテムを一つにした20秋冬への新商品。トップスの腹部分に腹巻のように温かい生地を使ったものとボトムスに腹巻部分を付けた2タイプがある。腹巻による着膨れが気になるという消費者のニーズをヒントに開発した。

〈福助/「満足」軸にシェア伸ばす/マーケティング部部長 斎藤 誠矢 氏〉

 19秋冬のレッグファッション市場は、暖冬の影響で防寒用のタイツが苦戦しました。ストッキングは思ったほど減らなかったという印象を受けましたが、絶対的な数量は減少しています。「良い」とは言えない環境下で比較的健闘したのが靴下で、当社もスポーツ系の動きは堅調でした。

 20春夏は、基幹ブランドの一つ「満足」を刷新したことなどが寄与して、2月の初動は悪くありませんでした。ただ新型コロナウイルスの感染者拡大による悪影響は計り知れません。ストッキングは3、4月が売れる時期ですので、このままの状況が続くとかなり厳しくなります。

 市場自体も微減傾向が続いているので、いかにシェアを伸ばしていくかが課題です。リニューアルした満足を軸にシェアアップを狙いますが、20、30代の需要をもっと取り込んでいく方針で、テレビCMやウェブ、女性誌などを活用して露出を増やします。多くの顧客から好印象を得ており、手応えはあります。

 販売チャネルの拡充も課題で、その一環として直営店を強化しています。12日に開設予定のららぽーと名古屋店を含めて11店舗になりますが、20年度もさらに加速します。

〈ナイガイ/100周年記念で盛り上げる/執行役員 高原 聡 氏〉

 例年以上に厳しかったのが、19秋冬のレッグ市場です。天候不順と消費増税による消費意欲の減退が影響したもので、予想していた以上でした。消費税が5%から8%になったときは駆け込み需要があり、その後の反動減も比較的早く持ち直しました。今回は駆け込み需要がなく、ずっと落ち込んでいます。

 そこに追い打ちを掛けたのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。不要不急の外出は控え、物は購入しないという流れになっているほか、イベントの休止・中止も相次ぎ、小売店頭に訪れる消費者の絶対数が少なくなっています。5月初めまでは厳しい状況が続くと覚悟しています。

 ただ、ナイガイは今年が100周年です。記念商品を作って、百貨店と一緒に記念キャンペーンを実施していきます。100周年記念商品は伝統と革新をテーマにしています。伝統では、「ハマグリパイルソックス」などのナイガイならでは商品にフォーカスします。革新ではイラストレーターらとのコラボレート企画を展開します。

 100周年記念に加えて、東京五輪・パラリンピックの開催も控えており、チャンスはあると考えています。

〈東洋紡STC/オーガニック打ち出す/存在価値高める素材群〉

 東洋紡STCはサステイナビリティー(持続可能性)に注目が集まる最近の状況を踏まえ、オーガニックコットンを前面に21春夏商戦に臨んでいる。同シーズン向けのグループ総合展では「爽快コット―O」、「デオドラン―O」を重点的にプロモートした。

 同展では前者の吸汗速乾性能、後者の消臭性能を訴求。今後はOCSよりも難易度が高いというGOTS認証も取得し、「もっと前面にエコを打ち出す」販促に力を入れるとともに、綿によるエコ企画を充実させる。

 同社は経編みの産地ニッターにサイジングしたビームで供給する「サイプス」を展開する。いずれはサイプスにもエコ企画を加えるとともに、婦人ボトムやドレスシャツへも用途を広げる。中国内需開拓も重視しており、遮熱素材「トライクール」などで企画提案を強化している。

〈第一紡績/綿の機能素材でサステ対応〉

 第一紡績(熊本県荒尾市)は、糸・生地に綿100%の機能素材を打ち出し、世界的に要求の高まるサステイナブル(持続可能な)社会に貢献する。その一つとして独自の紡績技術による「ミッドエアー」を開発した。

 ミッドエアーはコシがありながらも空気層を多く含む軽量バルキーな特殊紡績糸。これを使ったベア裏毛生地は軽量性とストレッチ性に優れ、リラックスした着用感を実現する。既に同社の自社ブランド製品やアパレルのスエットに採用されるなど実績がある。

 綿100%の機能素材として高級超長綿を使った結束紡績糸「クリアーコット」「コールドコット」も提案する。クリアーコットは毛羽を極限まで抑えることで光沢感があり、コールドコットは吸水速乾性が高い。いずれも生地にした際の接触冷感が高く、抗ピリング性にも優れる。ともに原綿に米綿を使用している。

 同社は国際綿花評議会(CCI)が認証する「コットンUSA」マークの認定サプライヤーであり、環境負荷を抑えた科学的農法で栽培される米綿を使った商品として提案できる。

〈旭化成/「ベンベルグ」のエコ打ち出す〉

 旭化成は「ベンベルグ」を重点的に打ち出し21春夏のインナー・肌着商戦に臨んでいる。いずれもベンベルグならではの吸放湿性能、ソフトタッチを持ち味とするポリエステルとの複合糸「ペアクール」、ナイロンとの複合糸「メープル」「同クール」の販促に力を入れている。

 サステイナビリティー(持続可能性)への関心が高まる中、ベンベルグを改めてエコ素材としてPRし拡販につなげたい考えだ。

 中国を中心とする輸出にも力を入れており、2019年度は米中摩擦などの影響を受けたものの、この間、年率数%で対中輸出を拡大してきた。今後もインターテキスタイル上海などへの継続出展を通じ、中国内需への浸透を目指す。

 ドイツ・ミュンヘンで開かれた世界最大のスポーツ見本市イスポにも出展。スポーツインナーやヨガウエアのような周辺アイテムの開拓に取り組んでおり、エコへの関心がより高い欧米の顧客に「売り込んでいくチャンス」とアピールを強めている。