繊維ニュース

不織布新書20春(4)/旭化成の不織布・スパンボンド事業/新たな局面に突入

2020年03月19日 (木曜日)

 2020年度までの中期3カ年計画「Cs+for Tomorrow 2021」を推進する旭化成。スパンボンド事業、不織布事業で共に今後の成長をにらんだ増産投資を進めており、ポリプロピレンスパンボンドや人工皮革「ラムース」などでの拡大戦略が今年も加速する。モビリティー関連分野では全社を挙げた取り組みに力を入れており、スパンボンド、不織布では傘下に加えた米国セージ社との連携が新しい局面を切り開きそうだ。中期計画2年目にどう向き合っていくのか、両事業部長に聞いた。

〈スパンボンド事業部長 三枚堂 和彦 氏/AKST軸に拡大/今後も両面作戦を推進〉

  ――最近のスパンボンドの市況は。

 そろそろ底を打つとみていましたが、新型肺炎騒動も重なり、現在も上向いてはいません。自動車や電子材料部品、フィルター関連で今後、影響が顕在化してくるのでしょうが、今のところ先は読めません。今年の7~9月期には収束するとは思いますが、それすらも不透明です。

  ――2019年度は新しい中期3カ年計画の初年度でした。

 タイの旭化成スパンボンド〈タイランド〉(AKST)は順調でした。国内販売は、紙おむつ向けも資材向けも多少、苦戦気味でした。19年度は爆買いの沈静化などで紙おむつ向けポリプロピレン(PP)が踊り場を迎えました。日本や欧米といった先進国では今後、紙おむつの需要増はあまり期待できません。一方で、中国やインドなどで市場拡大が続きます。今後、数年は新興国が紙おむつ需要をけん引することで年率6~7%の成長が期待できるとみています。

  ――AKSTで増設を進めています。

 AKSTは当社にとって短中期の柱です。現在、年産3万5千トンを同5万トンに増やす設備投資を進めています。お客さまへのアナウンスをほぼ終わらせ、いい感触が得られています。21年の夏から新設備をスタートさせます。できれば、即フル稼働を目指したいところですが、状況が状況だけに実需を見据えながらじょじょに稼働率を上げていきます。

  ――柔らかさをアップさせた新タイプがあるそうですが。

 AKSTではこれまでとは異なる製法で作る新しい原反を量産していきます。触っただけで既存品との違いを分かってもらえるはずです。まだ改良の余地がありますが、当初の想定通り高い評価が得られています。AKSTにはもう1台、設備を入れられる余裕があるため、売れ行きによっては次の設備投資があるかも知れません。お客さまとのキャッチボールをしっかりとやりながら、次を見据えた作戦を考えていきます。

  ――スパンボンドにおける当面の方針は。

 世界のスパンボンドメーカーは紙おむつが主力のPPメーカーと自動車関連資材やカーペットなどのポリエステルメーカーとに大別できます。当社は今後も両面作戦に力を入れていきます。

  ――ポリエステル、ナイロンでのかじ取りは。

 当社の強みは均一で薄目付の商品を安定的に量産できるところにあります。この強みを生かすことができる高付加価値用途・分野向けを伸ばしたい。具体的なことは言えませんが、電子材料系や精密機器のゾーンをターゲットとする開発、販促を進めています。

  ――海外市場をどう見ていますか。

 国内市場が伸び悩みに転じており、各社が海外市場の開拓に力を入れています。当社の輸出比率は数量ベースで30%弱です。当社には「プレシゼ」や「スマッシュ」といった高機能品があり、これらを伸ばしていきます。3月1日から営業を開始した旭化成アドバンスアメリカにも一部を任せようとしています。原反輸出にとどまることなく、いずれは現地に在庫を構えての商売にもっていければと考えています。

〈不織布事業部長 中嶋 康善 氏/成長軌道を進む「ラムース」/応用製品は海外展開加速〉

  ――不織布事業部の中計初年度はどのように推移したのですか。

 新型コロナウイルスの感染拡大で自動車関連をはじめとする産業界全体が打撃を受けていますが、期の途中までは順調に推移し、人工皮革の「ラムース」と応用製品営業部が共に前年を上回る数字で着地できると予想しています。新しいビジネスを獲得したことが奏功しました。

 その新しいビジネスですが、ラムースを採用した自動車が欧州と米国で立ち上がったことが大きかったほか、傘下に収めた米セージ・オートモーティブ・インテリアのネットワーク活用によって増販につながりました。応用製品営業部ではガソリン車のサクションフィルター向けユニットの販売が伸びました。

  ――ラムースは3号機が立ち上がりました。

 当初は2019年度(20年3月期)の下半期からフル稼働を計画していましたが、8月に前倒しすることができました。それまでは逼迫(ひっぱく)感が強く、ようやくバランスが取れた格好です。新型コロナの影響はないとは言えませんが、今後もフル生産を続けていければと思っています。

 今ラムースが評価を得ているのは環境への配慮です。一般的な人工皮革は製造工程でポリウレタンを含浸させるのですが、この時に有機溶剤を使用しています。

 一方の旭化成は有機溶剤ではなく水系です。ケミカルリサイクルポリエステルの使用など、サステイナブル(持続可能な)対応で評価が得られるモノ作りは新たな取り組みを含めて継続していきます。

  ――環境配慮は大きなメリットになる。

 グループのイタリア・ミコ社は「ディナミカ」で米国の動物愛護団体PETAによるビーガン対応の認証を取得しました。欧州ではアニマルフリーの関心が高く、自動車やファッションなどで優位性を発揮できるのではないでしょうか。人工皮革の需要は拡大していますが、環境への優しさをもっとアピールして自らの手でさらなる需要を生み出したいですね。

  ――20年度以降の方針は。

 ラムースでは、エコロジーと機能、デザインで提案力を向上します。エコロジーは先に話した通りです。機能は物性面で顧客のニーズを満たすことに重点を置いています。もともとラムースの製造方法には柔軟性があり、異繊維との組み合わせなどが可能です。これを強みに機能とデザイン性を高めます。

 4号機に関しては現在のところ予定通りの進捗(しんちょく)を示し、中計期間中に操業します。同時に5号機についても検討します。5号機は、需要やサプライチェーンをよく考慮した上での話になりますが、海外での立ち上げも視野に入っています。

  ――応用製品営業部の戦略は。

 ラムース、スパンボンド、メルトブローなどの不織布を生産していますが、これらの組み合わせによって高機能・高性能フィルターを生み出しており、20年度には積層機の量産機を増設します。そのほかアジアを中心に海外展開の加速を志向していきます。

〈21年増設備えプレワーク/旭化成スパンボンド〈タイ〉〉

 旭化成のタイでのスパンボンド不織布(SB)製造子会社、旭化成スパンボンド〈タイ〉(AKST)は2021年に増設を行い、約40%増の年産5万トン体制に拡大する。

 AKSTは12年、2万トンの規模で稼働を開始、16年に2号機を導入し、現在は3万5千トンのポリプロピレンSBを紙おむつなど衛生材料向けに製造販売する。19年はバーツの高止まりで、フル稼働ながら輸出も多いため収益面では低調だった。

 当面は既存設備のフル稼働を維持するとともに、21年の増設に向けて「ソフト性を向上させた新商品のプレワークを急ぐ」(及川恵介スパンボンド衛生材料営業部長兼AKST社長)考え。

 今後も新興国需要は年率6~7%の伸びが見込めることから、立地を生かして周辺のASEAN諸国並びにインドでの需要増に期待する。そのためにも仕向け地に生産拠点を持つ競合他社に負けないコスト、商品力をさらに高める。商品面ではソフト性を向上させたSBに加え、日本のR&Dチームと連携しながら将来を見据えた環境対応SBの開発にも取り組む。