不織布新書20春(5)

2020年03月19日 (木曜日)

〈ダイワボウレーヨン/環境保全の需要に応える/生分解と高機能強みに〉

 ダイワボウレーヨンは、環境に配慮した高機能レーヨンわたの拡販に力を入れる。世界的に環境への意識が高まっていることを追い風に、木材パルプ由来のレーヨンの生分解性と得意とするわたでの機能付加を強みに新たな市場を攻める。

 近年、着実に注目を集めている商材の一つが環境配慮型撥水(はっすい)レーヨン「エコリペラス」。レーヨンの性質はそのままに繊維表面に撥水加工を施した。pHコントロール機能や消臭機能もある。世界的な“脱・プラスチック”の流れを受けて、新たな素材として衛材分野で認知度を高めている。

 海水中での生分解性が証明された「エコロナ」の拡販にも力を入れる。欧州の検査機関の試験では28日間で90%以上の生分解度が実証された。食品包装、医療、衛生材料用途でこれから販路を模索する。マイクロプラスチックによる海洋汚染が社会問題として指摘されるようになり今後、ニーズが高まりそうだ。

 今年に入ってから世界的に広まった新型コロナウイルス感染症で、抗ウイルスや抗菌機能繊維の需要が高まる可能性がある。そこで清潔・衛生に焦点を当てた既存の素材の打ち出しを強化する。抗菌剤を練りこんだレーヨン「バクトフリー」、光触媒抗菌レーヨン「パナケイア」、モラクセラ菌の増殖を抑えるレーヨン「ビスクリーン」などのアピールを再び強める。

〈アクシス/植物由来原料のSB展開/20年度から農業用途などへ〉

 アクシス(東京都千代田区)は、環境対応のスパンボンド不織布(SB)の提案を強める。植物由来樹脂を原料とするSBを開発し、2020年度(21年3月期)から本格販売に入る。生分解性を持ち、有機ごみと一緒に廃棄することが可能なほか、耐熱性や柔らかな風合いも特徴で、農業資材用途を中心に拡販を進める。

 土の中で分解されるプラスチックのポリブチレンサクシネート(PBS)を原料としており、今回開発したSBはPBSの約50%が植物由来。タイの石油会社と日本の化学メーカーの合弁会社(タイ)から原料の供給を受け、兄弟会社のアドバンス・ノンウーブン・ベトナム(ベトナム・ダノン)でSBを製造する。

 バイオPBSSBは30℃の土中で分解する。ポリプロピレンSBと比べると価格は高くなるが、ソフトな風合いや耐熱性(120℃以上)、ヒートシール性は遜色がない。有機資源由来物質を所定量以上含むバイオマスプラスチック製品を識別するための「バイオマスプラ」「グリーンプラ」の認証も取得している。

 育苗ポットやマルチシートをはじめとする農業資材用途で訴求するほか、ショッピングバッグやスーツカバー、試着室で使用するフェースカバーなどの用途にも視線を送る。原料が安定確保できる21年度から量的な拡大を志向していくとしている。

〈サンコウ電子研究所/高精度の検針機器そろえ/幅広い製品に対応〉

 サンコウ電子研究所(川崎市)は、電子応用特殊機器、工業計測の研究開発&製造販売を行う。繊維品に混入した微小な折れ針や鉄片を探知する機器も製造している。

 コンベヤー式検針機(鉄片用)「APA―6800W」は、従来機では発見が困難な折れ針の探知を可能にした。二つの探知部を、角度を付けて「ハ」の字形に配置することで、針の方向性による感度差を抑えた。検針部はトンネル状のため、厚さによる検針感度の差が少なく、ミシン針の糸穴から先の折れ針が検出できる。対象は、婦人、紳士、子供服などに加え、パジャマや肌着までカバーする。

 長尺検針器「SK―2200」(オンラインタイプ)は、テキスタイル、フェルト、不織布、原反など広幅繊維品に混入した微小鉄片を探知する。振動や電源ノイズがある条件下でも、安定した連続使用ができる。50年以上にわたる製造の経験、ノウハウから生まれた探知電極は、設置周辺の金属からの影響が及ぶ範囲を縮小した。

 ハンディー検針器「TY―30」は、繊維品に混入した鉄製の針、折れ針を探知する。コンベヤー式検針機やテーブル型検針器で針、鉄片を探知した後で、混入の位置を確認するのに適している。スリムで軽いハンディータイプ。ワイド、スポットの2レンジ。高感度仕様の「TY―30K」も品ぞろえに加えた。

〈宇部エクシモ/産業資材用途を強化/高付加価値品積極投入〉

 宇部エクシモは、不織布用原綿の展開で産業資材分野を深耕する。液体フィルターとエアフィルター向けに重点を置き、ポリオレフィンコンジュゲートわたなどの高付加価値品を積極提案する。主力の衛生材料向けの維持にも取り組むことで全体の成長につなげる。

 2019年度(20年3月期)の販売は、紙おむつなどの衛材用途の需要減少が響いている。産業資材用途は、米国との通商問題に揺れた中国向けが減速したものの、全体としては横ばいで推移している。衛材用途の急激な回復は難しいとみて、20年度も産業資材用途での販売拡大に引き続き力を入れる。

 液体フィルターではポリオレフィンコンジュゲートわたの「エアリモ」の提案を強める。鞘部に低融点樹脂、芯部に高融点樹脂を用いた芯鞘複合繊維でありながら、繊度0・2¥文字(G0-AC85)¥文字(G3-1005)を実現した。業界での認知度向上や適用範囲の拡大を図る。

 エアフィルターでは「UCファイバー」が主流。芯部にポリプロピレンを、鞘部にポリエチレンを配した熱融着複合繊維で、不織布加工時の熱で油剤が繊維中に潜り込み脱油する製品や、不織布加工後に超撥水(はっすい)・撥油(はつゆ)性能を発揮する製品などがそろう。

 製品開発は継続強化する方針で、福島県郡山市の先端繊維研究所を基点に進める。

〈倉敷繊維加工/新商品開発に重点/抗菌・抗ウイルスも開発へ〉

 クラボウグループの不織布製造会社、倉敷繊維加工(大阪市中央区)は自動車のキャビンフィルターなどで新商品開発に重点的に取り組む。新規分野である半導体関連への期待も大きい。

 世界的な自動車生産台数減少の影響を受け、2019年度(20年3月期)は同社でも主力のキャビンフィルターの荷動きが鈍化した。ただ、同社の製品はアフターマーケット向けが多いため、生産台数の減少幅よりも落ち込みは小さい。こうした中、20年度に向けて新しいキャビンフィルターの開発に取り組む。青山髙明社長は「高級車向けの高機能品の開発を進める」と話す。

 さらに新規分野として期待がかかるのが電子線グラフト重合加工技術で開発した「クラングラフト」。薬液に溶け込んだごく微少な金属イオンを捕集できる性能を生かし、半導体製造工程などで使用する高純度薬液の精製用途でテスト販売がスタートした。

 新型コロナウイルス感染症の流行を受けて抗菌・抗ウイルスなど機能性製品への引き合いも増加する。このためクラボウとの連携を強化し、抗菌・抗ウイルス成分「イータック」を活用したフィルターなどの開発にも力を入れる。

〈金井重要工業/研磨材に重点化/川下戦略を推進〉

 金井重要工業は2018年度からの中期3カ年計画に取り組んでおり、最終20年度の最大の課題に研磨材による製品ビジネスの早期立ち上げを掲げている。

 研磨材での川下戦略をスタートさせる一環として昨年、東京ビッグサイトで開かれた「JPCAshow2019(電子機器トータルソリューション展)」に初めて出展した。

 プリント基板向け研磨材として開発したホイール状の加工品を紹介。さまざまなニーズを吸い上げて繊維設計からホイール構造設計までを一貫生産できる強みを訴求した。

 その後、中国に進出した日系ユーザーなどへの提案、フォローと取り組んできたものの、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中断を強いられている。

 研磨材では後々発になるものの、「勝算があるから参入を目指している」との手応えを示しており、早期に本格販売を立ち上げるべく、商品開発に磨きをかけるとともに、コロナウイルス感染が収束次第、ユーザーフォローを急ぎたい考えだ。

 今年5月下旬に開かれる予定の電子機器展に引き続き出展。同社の研磨材市場に臨む考え方、製品の特徴や優位性を紹介し、早期スペックインを実現したいとしている。

〈アンビック/中国でフィルター生産/自動車用途は海外拡販へ〉

 ニッケグループの短繊維不織布製造販売会社、アンビック(兵庫県姫路市)は中国でのフィルター生産に取り組む。日原邦明社長は「新型コロナウイルス問題など不確定要素があるものの、2020年度(11月期)は新工場建設プロジェクトの成功に向けた取り組みが最大のテーマ」と話す。

 中国に新工場を建設して生産するのはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を使ったフィルターバグ(ろ過布)「アドミレックス」。中国ではゴミ焼却場向けで需要拡大が期待できる。既に日本で生産する商品を持ち込んでのプレマーケティングを実施しており、データ収集などが順調に進む。

 12月には新工場での試運転を開始し、21年度から本格販売を計画する。ただ、新型コロナウイルス問題で予定に遅れが生じていることが懸念材料。今後の対応を検討する。

 一方、主力の不織布「ヒメロン」は自動車用途などで荷動きが鈍化しつつある。このため海外販売の拡大に取り組む。ニッケグループの産業資材商社、エミーとの連携を強め、北米や欧州の自動車関連分野への参入を強化する。自動車以外の用途開拓にも重点的に取り組む。

〈日本フイルコン/繊維領域へ展開広げる/整流フィルターで実績も〉

 日本フイルコンは繊維に展開領域を広げている。製紙用の抄紙網(製紙用ワイヤー)で国内トップシェア(約6割)を誇るが、製紙会社が国内生産を縮小する中で、新市場への進出を成長の原動力に変える。その一つとして狙いを定めるのが繊維産業で、EF市場開発部が主体となって開拓を進める。

 繊維関連では不織布製造設備に用いるベルトの販売を行っている。この製造用ベルトでは国内で70~80%のシェアを持っており、不織布分野のさらなる深耕を図る。既にスパンボンド不織布(SB)製造設備用整流ハニカムフィルター「フウジン」で採用実績が出てきた。

 フウジンはSBの製造工程で重要な役割を果たす冷却風に焦点を当てたフィルター。高精度ハニカムフィルターで冷却風の乱れを整えることで、溶融紡糸の糸切れが減るほか、製品の品質が向上するという。SBだけでなく糸製造にも応用でき、特殊糸製造設備を中心に需要を探る。

 スパンレース不織布(SL)用柄付きロールカバー「スパンアート」の提案も強める。柄による意匠性に加え、ワイピングクロスの拭き取り性能向上といった機能が付けられる。

〈アサヒ繊維工業/新たな需要開拓に前向き/繊維製加工品を自社生産〉

 繊維製特殊加工品を製造するアサヒ繊維工業(愛知県稲沢市)は、オレフィン系といった樹脂繊維製の特殊加工品を自社で生産する。フィルターや吸水材を軸に、新たな分野の需要開拓に前向きに取り組む。

 主力商材は円筒型に成型した「MFフィルター」と、吸水・吸液性に優れた「ファイバーロッド」だ。空圧機器や浄水器、文具、芳香剤といった用途の受注は堅調に推移している。

 MFフィルターの「MF」はマルチファンクションの頭文字を指す。熱融着繊維製不織布を調達し、円柱状に成型加工しフィルターを形成。浄水器や空圧機器、医療機器の各用途に必要な機能を付与したフィルターが小量から生産可能だ。あらゆる内径から全長の規格指定も、自社で加工機を調整して対応する。

 ファイバーロッドは、ポリオレフィン系やエステル系繊維を融着形成した中わただ。吸水性、吸液性に優れ、インクを吸蔵する筆記具や芳香剤のほかに医療機器部品や止血剤まで採用例は多岐にわたる。今後も水耕栽培用培地の販売拡大と、新たな産業と分野の開拓に向け商品開発を進める。

 同社は4月開催の「名古屋 航空・宇宙機器開発展」や7月の「施設園芸・植物工場展」に出展する予定だ。1万1千平方メートルの広大な敷地の自社工場と中国・無錫の工場をフルに生かす。

〈髙木化学研究所/高品質・付加価値の追求/多極化対応を重点に〉

 髙木化学研究所(愛知県岡崎市)は、高品質かつ付加価値のある再生ポリエステルわたの供給を追求する。今後も用途別ニーズに合わせ、多品種・小ロット・短納期生産といった多極化の対応に重点を置く。

 再生ポリエステル短繊維は1972年に事業化を開始。月産500トンの能力を持つ片寄工場(同)で生産を行う。黒の他に各種カラー原着や、白といった多彩な再生わたの生産を少量から短納期で対応する。用途別の供給実績は自動車内装材、吸音材の他に、断熱材、軍手や一般衣料向けと幅広い。

 高品質で付加価値のある再生わたを供給できる背景には、長年培った高い技術力と研究開発力がある。難燃タイプや中空タイプといった特殊なわたの生産にも対応する。中空タイプは用途別に中空率を変えてカスタマイズ可能。ニーズに合わせ付加価値を付与することで輸入わたとの明確な差別化を実現した。

 高木紀彰上席顧問工場長は再生ポリエステル短繊維事業について「今後も高品質わたの安定供給を継続し、付加価値を高める技術と研究開発力を駆使してニーズの多様化に応える」と話す。

 同社はプレス、板金加工、表面処理、樹脂の成型と加工も主力事業とする。再生ポリエステル短繊維の生産は、原料調達から供給まで他事業にない独自ルートで供給を続ける。

〈タピルス/顧客の要望に応え成長を/海外での認知度も向上〉

 メルトブロー不織布(MB)を製造・販売するタピルス(東京都港区)は、顧客の要望に応える製品の開発に継続して取り組んでいる。高付加価値品では0・3マイクロメートルという極細のポリプロピレン(PP)を使った製品を商品化しており、一層の細繊度化も進めている。これらの積極展開で成長を図る。

 リチウム1次電池用セパレーター、マスク用フィルター、液体フィルター、エアフィルター、日用品関連向けに付加価値の高い製品を打ち出している。2019年12月期の業績はフィルター(液体フィルター、エアフィルター、マスク用フィルター)向けで数量が拡大し、前期比増収。ただコスト増により減益となった。

 今期も成長を目指すが、上半期は厳しさが予想される。そうした状況下で差別化を図るためにも技術力をアピールするとし、高付加価値品を積極提案。極細タイプに加えて、極太繊維径の製品、耐熱性や耐薬品性に優れるポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を使ったMBなどの展開を強める。

 国内顧客を最重要視しているが、海外販売にも力を入れる。アジアのほか、欧州にも視線を注ぎ、ドイツで開催されているフィルトレーション関連見本市に継続出展。タピルスの認知度が少しずつ上がってきており、将来的には海外販売比率をさらに高めるとしている。

〈旭化成アドバンス/自動車関連資材を伸ばす/「ラスタン」で海外戦略〉

 旭化成アドバンスはエアバッグ縫製に参入するために昨年、旭化成アドバンスベトナムを、不織布事業を拡大するため今年、旭化成アドバンスアメリカを設立するなど繊維資材事業を伸ばしていくための布石を相次いで投じている。

 2019年度は暖冬の影響でカイロ向けのスパンボンドの販売が低迷。一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響で「タイベック」使いの防護服への引き合いが急増し在庫が空になったという。

 20年度は昨年、部に昇格させた車両資材部が中心となった取り組みを通じ自動車関連資材で成長戦略に力を入れたいとしており、「繊維資材トータルでは増収増益で予算を組む」との意欲を示している。

 スパッタシート向けの販売が好調な耐炎繊維「ラスタン」。今後は自動車や家電などへも用途を広げる。タイに協力工場を確保し、ニードルパンチなどで現地の顧客に供給するビジネスを20年度中に立ち上げる。

 同社は昨年、2次製品事業にも参入している。8月中旬からポリエステルスパンボンドで商品化した耐候性に優れる印刷基材「ペクトリー」の販売をスタートさせた。

 この間、ゼネコンや鉄道会社などでサンプリングを実施してきたところ、「評判は上々」としており、20年度後半から本格販売へと移行。A4、A3にA1、B1を加えた。

〈帝人フロンティア/中国バグフィルターで拡販/液体用が拡販ステージに〉

 帝人フロンティアはバグフィルター、液体カートリッジフィルターをターゲットとする取り組みを2017年度から本格化させている。

 ポリエステルナノファイバー「ナノフロント」による開発を先行。中国の大手セメント会社でバグフィルターによる実地テストを行い、その後、販路開拓を強化してきた結果、これまでにセメント会社を中心とする20社近くに供給してきた。中国に加えて日本でもテスト採用が拡大しており、「採用用途は多岐にわたる」と言う。

 耐熱性が要求されるセメントの焼成工程、石炭火力発電所でのスペックインを目指した商品開発にも力を入れており、PPS(ポリフェニレンサルファイド)繊維、メタ系アラミド繊維「コーネックス」極細タイプを導入。両素材による実地テストが20年度からスタートする見通しだ。

 中国で環境規制がさらに強化されるに伴い、火力発電所などからより高性能なバグフィルターを求めるニーズが強まると見通しており、PPSやコーネックスで既存商品からの置き換えを強化する。

 液体用カートリッジフィルターでは、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンのいずれもナノファイバー使いをラインアップ。飲料分野や排水処理施設に展開しており、「ようやく拡販ステージに入った」としている。

〈ヤギ「ナノクセラ」/ナノファイバーメンブレン打ち出す/高性能をグローバルに〉

 ヤギはナノファイバーの韓国ファインテックス社とナノファイバー使いのメンブレン「ナノクセラ」をグローバルに展開する(韓国を除く)販売契約を締結した。

 ファ社は、信州大学繊維学部との共同研究を通じ電界紡糸法による量産型ナノファイバー製品で世界最高水準の技術力を持つトップテックグループに属しており、ポリウレタンやナイロン、ポリアクリロニトリルなどによるメンブレンを展開中。

 ヤギは先に開かれた「第19回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」にナノクセラによるマスクや産業用フィルター、アパレル製品、スポーツシューズなどを初出展。初出展80社以上を対象とする「新規ピックアップ賞」を受賞した。

 同展では「食事に行けないくらい来場者への対応に追われた」としており、現在はフィルターやエレクトロニクス、自動車、美容、衛材関連の顧客と商談を進めている、

 ナノクセラは通気性、防水性、防塵(じん)性、高捕集などを特徴とするナノファイバーによる薄膜。顧客からの要請に応じて原料をチョイスし、太さ、厚みなどを自由に設計できる。

 トップテックのナノファイバー製品は「既に革新的なメンブレンとの評価を得られている」と言い、ヤギは2020年度、顧客との共同開発を急ぎナノクセラの高性能を市場に浸透させていく。

〈髙安/小量・用途別対応に強み/国内の生産体制を再構築〉

 再生ポリエステル短繊維や、ニードルパンチ(NP)、ステッチボンド(SB)製造の髙安(岐阜県各務原市)は用途別に細かく対応した小ロットからの対応が強みだ。今後も用途の細分化に備え、主に国内生産体制を見直して再構築を図る。

 NPの受注は順調でフル稼働での生産を続ける。特に自動車内装や産業資材向けは、使用部位や用途が増加して好調。雑貨向けの受注も増加傾向にある。SBは防縮テープの需要が大半を占める。

 NPは自動車や産業機械の使用部位により、必要な機能が異なる。吸音や遮音、防熱といった機能を持つNPを、小量から供給可能にするために、顧客との強い関係性を生かす。顧客とこまめに意思疎通を行い、適時に供給量を細かく調整する。

 再生ポリエステル短繊維の多種多様に広がる需要にも、国内の生産背景を生かし、供給体制を強化する。新型コロナウイルスの感染拡大の余波もあり、中国子会社の髙安工業〈江陰〉は、春節明けから30%の稼働率で操業を再開。中国生産の不透明感もあるだけに、国内の原料調達から生産工程を見直す。生産性向上と長繊維の要望にも応えるのが主な狙いだ。

 外販はタイ・インドネシアや、メキシコ・アメリカへの拡販を目指す。環境認証のGRS(グローバル・リサイクルド・スタンダード)の取得に向け準備を進める。

〈岐阜化繊工業/NP独自製法で積層不織布提案/衣料、雑貨向けに訴求〉

 ニードルパンチ(NP)不織布製造の岐阜化繊工業(岐阜県各務原市)は主力の衣料用副資材に加え、独自製法(特許出願中)によるNPとの積層不織布でアパレル向け新素材や小物・雑貨用の布地として新たな用途提案に注力する。

 NP不織布はドレープ感こそないものの、バルキ―性、軽量、防シワ性、通気性、保温性など多くの特徴を持つ。用途は肩パッドや芯地の衣料用副資材のほか、ろ過布、土木資材、吸音材、クッション材。いずれも織物に比べて短納期・低コストの生産が可能だ。

 同社ではその利点を生かし、不織布と別生地を張り合わせて複合化した意匠性の高い積層不織布に加工。ファッション性のある表生地として多様な用途の拡大を狙う。

 既にその独自製法を活用したオリジナル不織布(クリサンセマム・エフバイエフ)で衣料、小物雑貨などを一部商品化。さらに今後、アパレル、生地商で不要となった残反や在庫生地の再生・再利用の提案も図る。

 具体的には不織布とレースや和紙を一体化させたアパレル向け素材や別色の不織布を一体化させたプロダクト向け素材など。受注は試作品では、6メートルから請け負う。

 年内には、文化服装学院の先生作品として同社の再生ポリエステルNPと美濃和紙を一体化させた生地によるドレスも発表予定だ。

〈ツジトミ/4年かけてS&B/新鋭のNP設備導入〉

 短繊維不織布製造のツジトミ(滋賀県東近江市)は本社工場に新工場を建設する。新工場の面積は1300平方メートルで、機械幅5メートルのニードルパンチ不織布(NP)新鋭設備を導入し、10月稼働を目指す。

 新工場建設は4年間をかけて進めるスクラップ&ビルド(S&B)の一環。導入する新NP設備は熱処理の一貫加工仕様となる。S&Bではその他、既存工場の一つを倉庫に、現在の倉庫は工場へ変換し、その工場に5メートル幅で2層構造が可能なNP設備を導入。樹脂加工機も入れ替える。

 同社はNPのほか、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布を生産。さまざまな2次加工品も手掛ける。1995年には中国子会社、嘉興華麗非織布制品を設立。今年はベトナム子会社、ツジトミ・ベトナムを立ち上げる。

 2020年8月期は単体売上高で30億円が目標。19年9月~20年1月は前年同期比10数%増収だった。「全般的な商況は良くないが、土木資材の案件を取れたことが寄与した」(辻高幸社長)と言う。ただ、新型肺炎の影響が「どの程度出るのか読めない」と先行きについては慎重な見通し。一方、中国内販は苦戦中。子会社は通常操業し、輸出には問題ないが、中国内販は一部需要家の生産が戻っていない。ベトナム子会社も新型肺炎の影響で立ち上げが6月にずれ込む。

〈江洲産業/本社工場を拡張へ/22年の100周年合わせ〉

 産業資材用織物の織布・加工や不織布の加工を行う、江洲産業(滋賀県長浜市)は本社工場を拡張する。隣接する土地を取得し新工場を建設するもので、創業100周年に当たる2022年に完成させ、新工場に織機を移設する。空いた工場は倉庫または新たな設備導入などに活用を検討する。

 同社の20年8月期業績は苦戦した前期からは改善。織布、加工とも回復基調にある。不織布の加工についても自動車資材向けの試作が増えており、農業資材でも新たな開発が進む。「この2~3年、不織布加工の問い合わせが増えているのは明るい兆し」と井上昌洋社長は次につながる開発に手応えを示す。

 後加工の品質向上を図るため、マングルロールの入れ替えも検討中。「不織布は他素材からの置き換えも進み、これからは大ロットではなく、ニッチな特殊加工を増やしていきたい。不織布メーカーも加工度を上げて、付加価値を高める動きが出ている」と今後に期待する。

 同社は不織布だけでなく、織物の織布・加工ができる強みもある。織物も開発依頼が増えている。18年末にイテマウィービング製レピア織機「R9500」(2・6メートル)4台を導入したことも奏功する。品質向上に向けて、同年12月には品質管理の国際マネジメント規格「ISO9001:2015」認証も取得した。